【タカマ二次小説】月と星のセレナーデ#2 片想いのふたり
「頼むから付き合ってよ」
そんな言葉にほだされて、
紗良は予想外の「デート」に臨む。
「なんでよりによって今日なの?」
そう尋ねてみれば、
ちょうど塾が休みだったから、
と言葉が返る。
(まあ、別に良いけどさ。どーせ暇だし)
つい昨日彼氏と別れたばかりで、
友達と約束を入れる暇もなかった。
どうやってこの賑やかで憂鬱な一日を
潰そうかと考えていた紗良にとっては、
渡りに船と言えなくもない。
けれど、頼まれたその内容は、
自分よりもはるかにふさわしい相手が
いるだろうにと思ってしまう。
実際、彼にもそう言ったのだが、
彼は頑として首を縦には振らなかった。
代わりに、妙に心許ない言葉を
漏らすものだから、
ほっとけなくなってしまって。
懸命に「何か」を探している彼に
付き添って、
デパート巡りをしている。
「ねえ、これなんかどう?
めっちゃ可愛くない?」
紗良の言葉に、
彼はう~んと首をひねる。
「たぶん、もっとシンプルというか、
男女兼用みたいなのが良いと思う・・・・・・」
「――もしかしてあんた、
ペアルックでもする気・・・・・・!?」
まさかおそろいを
身につけようとしてるんじゃないかと、
そう勘ぐってみれば、
彼は慌てて首を振る。
「そうじゃなくて、アイツ、
男か女かよくわかんないようなヤツだから・・・・・・」
ガーリッシュじゃなくて
ボーイッシュなのかと、そう理解して、
「じゃあ違うかもね」と
手に取った商品を棚に戻す。
アイドルみたいで手が届かないと、
そう聞いていたものだから、
可愛い子を想像していたけれど、
どうやら路線が違うようだ。
「じゃあ、これは?」
いかにもボーイッシュで
イカツいデザインのを指させば、
「尖りすぎだ」と却下され、
シンプルで当たり障りのない
デザインを指させば、
「無難すぎる」と却下される。
どうやら、落ち着きすぎず、
派手すぎず、
程よくボーイッシュで
程よくガーリッシュで、
特別感のあるものが良いらしい。
(やっぱ本人連れてきた方が早いって・・・・・・)
喉まで出かかった言葉を
必死で飲み込む。
それができないからこそ、
彼は紗良に助けを求めてきたのだ。
紗良は気を取り直して、
彼に尋ねる。
「相手はどんな子なのか、詳しく教えて」
相変わらず曖昧な言葉で
誤魔化そうとする彼に、
「いい加減にしないと帰るよ」と脅す。
手に入れたいものがあるのなら、
怯んじゃいけない。
自分の気持ちを誤魔化しちゃいけない。
「正直にならないと、
手に入るものも、入らなくなるよ」
自分の痛すぎる後悔を乗せて、
彼に伝える。
彼の不安定に揺れる瞳が、
ようやく一点に定まった――。