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【タカマ二次小説】取り残された世界で君と見たものは#23 和解

その翌日。

那智はいつものように、
仕事の合間に圭麻の家を訪れる。

いつもなら、

玄関から入ってすぐの居間には家主である圭麻が、
奥の部屋には居候の颯太がいて、

もうひとりの居候である泰造は、
どこをほっつき歩いているのかわからないのだが、

今日はなぜか、
3人とも揃って居間で那智を出迎えてくれた。

それも、まるで那智が来るのを
待ち構えていたと言わんばかりの雰囲気に、

那智は妙に
気後れを感じてしまう。

「なんだよ、みんな揃って……。
何かあったのか……?」

問いかけると、
圭麻が何やら意味ありげな笑みを浮かべる。

「泰造が話したいことがあるそうですよ」

そう言って、
泰造に目配せをする。

泰造はその視線を受けて、
決まり悪そうな顔をしながらも、

意を決したように口を開く。

「オレも、行きたいな、と思ってさ……。
天珠宮に……」

その言葉に、
那智は目を丸くする。

「その……、オレも、天珠宮に行って、
結姫に、会いたいなって思ってさ……」

「ほんとかっ!?」

テーブルに身を乗り出して
泰造の顔を覗き込んだ那智に、

泰造が静かに頷く。

「ああ……。それに、もしかしたら、
結姫だけじゃなくて、
隆臣や、鳴女さんにも会えるかもしれない……。
そんな気がしてきてさ……」

その言葉に、
思わず那智も目頭が熱くなる。

そうだ。もしかしたら、
彼らにも会えるかもしれないのだ。

会えないのはわかっているけれど、

それでも、会いたいと、
会えるのではないかと、そんな風に思える。

「そうだよな……。そうだよな……」

そう言って涙ぐむ那智を見て、
泰造は何を思ったのか、

いきなり立ち上がる。

そして、
那智に向かって思い切り頭を下げた。

「この前は悪かった!オレ、
おまえにすっげーひどいこと言った」

きょとんとする那智に向かって、
泰造が言葉を続ける。

「隆臣のことなんて、どうでもよくなったんだろ、とか、
そんなわけねーのに、オレ、おまえにそんなこと言って、
正直八つ当たりだった。本当にすまなかった!」

潔く頭を下げる泰造に、
那智はなんだよそれ、と言って笑う。

「オレは、隆臣に振られた身だからさ……。
隆臣を、諦めざるをえなかったから……、
だから、鳴女さんをずっと想い続けてたおまえとは、
立場が違うけど……」

でも、それでも、隆臣のことは、
本気で好きだったんだからな、

アイツがいないのは、
ものすごく悲しいんだからな、と言って、

泰造に拳を突き出す。

何の抵抗もしようとしない彼の目の前で拳を開いて、
那智は泰造の手を握る。

「おまえはひとりじゃないんだからさ。
一緒に、会いに行こうぜ」

泰造がようやく、
ものすごく久しぶりに、

はにかみながらも、
笑顔を見せた――。


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