【タカマ二次小説】廻り舞台と紡ぎ歌#65 辻褄合わせの間違い探し
「ったく、起きたらふたりともいないと思ったら、
そんなことになってたのかよっ?」
朝食の席で、事の次第を聞かされた泰造が
驚いて声を上げる。
「欠片を泰造に預けていて正解でした。
あのまま那智に持たせていたら、
どうなっていたことか……」
咎めるような視線を受けて、
那智が決まり悪そうに呟く。
「悪かったよ……。
なんか、綺麗な音が聞こえて、
それで、つい……」
音色に誘われるように、
あの部屋に行ってしまったのだと、
那智が答える。
「にしても、橋姫の言ってたことが気になるな。
颯太がここに来た理由。
たまたま立ち寄ったわけじゃないって……」
泰造の言葉に、圭麻が頷く。
「実は、オレもそれは気になっていたんです。
昨夜、颯太から聞いたときから、ずっと……」
橋姫に言われる前から、
気になっていたと、そう語る圭麻に、
那智が噛みつく。
「颯太が嘘ついてるって言うのかよ……?」
「嘘、というよりは、
何かを隠している、というか……。
伽耶さんが言っていたでしょう?
颯太が手紙を受け取ったのは、
チトラの村付近だろうって」
それがなんだよ、と聞き返す那智に、
圭麻は話して聞かせる。
チトラの村から都(リューシャ―)に向かう途中で、
たまたまこの村に立ち寄ることの、難しさを。
「チトラの村からこの村へは、
山を越えないと来れないんです。
それも、その道は決して、
都(リューシャ―)への近道じゃない。
にも関わらず、徒歩で山越えをして、
この村に立ち寄るなんて、考えづらいんですよ」
「徒歩じゃないかもしれないだろ?」
オレたちみたいに、空路かもしれないじゃないかと、
そう返す那智に、
だったらなおのことおかしいと、
圭麻が異を唱える。
「だとしたら、どうしてわざわざ、
この村に降り立つんです?
そのまま都(リューシャ―)に行った方が
早いでしょう?」
「それは……、何か、途中で
買わなきゃいけないものがあったとか……」
那智の言葉に、こんな小さな村で、
何を買うって言うんだよと、
泰造が突っ込む。
「泰造の言う通り、途中で降り立つにしても、
もっと大きな街に行くのが自然なんです。
なのになぜか、颯太はこの村に立ち寄った。
不思議だと思いませんか……?」
「――急に、体調が悪くなったとか……」
急にお腹が痛くなって、
トイレに行きたくなったとか、と
口にする那智に、
だとしても、と圭麻は言葉を返す。
「透視人(シーヤー)で幽霊嫌いの颯太が、
この村の異様さに、気づかないわけはないと思うんです。
橋姫なんてのがいるのなら、なおさら、
早く遠ざかりたいと思うのではないですか……?」
そう言われれば、そうかもしれないけど、
と那智が呟く。
「けど、なんでそれを颯太が隠すんだよ……?」
那智の問いに、
圭麻はわからない、と首を振る。
「今夜、颯太に聞いてみましょう。
橋姫の口から聞くよりも、
颯太から直接聞いた方がいい」
全ては、颯太が意識を取り戻す夜に
確認するしかない。
圭麻の言葉に、泰造と那智も頷いた――。