【タカマ二次小説】取り残された世界で君と見たものは#17 見えない光
その翌日。
泰造はいつものように、
圭麻が用意した朝食を無言で平らげると、
ほとんど身一つの状態で外へ出て、
街をぶらつく。
脳裏には、
昨夜颯太から告げられた言葉がくすぶっていた。
(今さら天珠宮に行ったところで……)
彼女はいない。
だから、行っても意味がない。
そう思う一方で、
行ってみたい衝動がむくむくと沸き上がり、
やがて、行き場を失って疼き出す。
(ちくしょうっ……)
泰造は地面に唾を吐き、
視線を己の足元に移す。
この2本の足が踏み入れられなかった天空の城は、
いったいどんなところなのだろう。
彼女はそこで、
いったいどんな日々を過ごしていたのだろう。
もしも今、
自分がその場所に足を踏み入れることができたなら、
彼女の面影を見つけることもできるだろうか。
(……見つけたからって、何だって言うんだよっ……)
泰造は地団駄を踏む。
きっと、余計に辛くなるだけなのだ。
どんなに彼女がいた痕跡や面影を見つけられても、
肝心の彼女自身がいないのだから。
――泰造っ……!――
ふいに、結姫の声が脳裏に蘇る。
――これ、泰造が持っててっ!!――
そう言って、大事な神獣鏡を泰造に手渡してくれた、
あの日の笑顔が浮かぶ。
――いつでも会えるようにっ!ねっ!――
神獣鏡は、思兼神(オモイカネノカミ)である鳴女さんと
伝説の少女である結姫をつなぐ、
大切な道具だ。
それを自分に託そうとする彼女の柔らかな笑みが
胸に広がる。
(結姫っ……!!
オレはいったい、どうすればいいんだよっ……!!)
記憶の中に住まう小さな少女に縋るように、
泰造はその場にしゃがみこんだ――。