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【タカマ二次小説】夢で逢えたら(初版)#12 黄昏の告白

一通りアトラクションを回り終える頃には、
日もだいぶ暮れかけていた。

少しずつパーク内のイルミネーションが灯り始める。
ふたりはお土産袋を掲げ、帰路に就く。

「今日は楽しかったな~。また来れたらいいのに」

那智が何気なく口にした一言。
それが颯太には痛い。

明日になれば、那智は帰ってしまう。
そしてもう二度と、会えないかもしれないのだ。

(後悔したくない……)

ふと、そんな思いに駆られた。
たとえ那智が誰を好きだとしても。

後悔したくない。だから。

「那智。あのさ……」

「うん?」

大きな瞳が見つめ返す。
心臓がバクバク音を立てている。

「いや、だからその……」

「なんだよ?早く言えよ」

颯太は軽く息をつくと、
覚悟を決めて口を開く。

「好きだ……」

「え?」

「好きなんだ……。那智のことが……」

那智の目が大きく見開かれ、
頬が紅く染まる。

「颯太……」
「ずっと好きだった。……おまえが誰を好きでも構わない。
でもオレは……」

颯太が言い終わらないうちに、
那智が颯太の胸に飛び込む。

颯太は驚いて、
身動きが取れなくなる。

「な、那智……!?」

「オレも好きだよ……」

「え……?」

「颯太のことが好き……。
どこにいても……。どんな姿でも……」

颯太は半ば混乱する。

(那智はオレを拒絶したんじゃないのか…・・・?)

図書室で、床に倒れこんだとき。

那智の髪に触れた瞬間、
那智は体をこわばらせた。

「嫌なんじゃないのか……?」
同じ問いをしたとき、那智は答えなかった。
それは肯定の意ではなかったのか。

「そんなわけないだろっ……。逢いたかったんだからっ……。
ずっとずっと逢いたかったんだからっ・・・」

泣いているのだろうか。
那智の声は震えている。

「……怖かったんだ……。
あんなの、初めてだったから……」

「え……?」

誰かを本気で好きになったことがなかったから、
わからなかった。

自分が何を望んでいるのかなど。

でもやっとわかった。

そばにいたかったのだ。
ただ寄り添っていたかった。

「好きだよ……っ。大好き……っ」

その言葉に、颯太は動揺を隠せない。

手が届かないと思っていた。
決して叶わないと。

(でも、そうじゃなかった……)

こんなにも近くにいたのだ。

そしてこんなにも、
颯太のことを想ってくれていた。

「那智……」

颯太はゆっくりと、那智の体に腕を回す。
そして、優しく、だがしっかりと抱きしめた。


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