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【タカマ二次小説】取り残された世界で君と見たものは#19 長いトンネル

その夜。

皆が寝静まった頃を見計らって帰ってきた泰造を出迎えたのは、
この家の家主だった。

「……圭麻。おまえ、起きてたのかよ」

寝てるだろうと思って帰って来たのに、
と呟く泰造に対し、圭麻が微笑む。

「きっとそうだろうと思って、
日中、寝だめしちゃいました」

茶目っ気たっぷりに返す圭麻に、
ほんとかよ、と内心突っ込みを入れつつも、

泰造はあくまで淡々と接する。

「オレに説教でもするつもりかよ。
昼間も言ったけど、オレはおまえらのようにはなれねぇ」

「わかってます。でも、オレたちだって、
ひとりでここまで来れたわけじゃない。
泰造だって、ひとりじゃないんです。
それだけは、忘れないでください」

圭麻の声を聞き流し、
寝床へ向かおうとする泰造を、

圭麻が呼び止める。

「来週の今日、オレたちは天珠宮に行きます。
泰造を無理に連れて行くつもりはありません。
でもこの1週間、じっくり考えてみてもらえませんか。
行くも行かないも、その上で決めてほしいんです」

圭麻の声を背に、
泰造は寝床へ向かう。

一週間という期限が、
長いのか短いのかはわからない。

ただ、「彼女」に会えないことだけが、
ただひたすらにしんどくて、

永遠に続く長いトンネルに押し込められたような気がして、
ただただ、ひたすらに苦しかった――。


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