【タカマ二次小説】廻り舞台と紡ぎ歌#44 夢の中へ
それから数週間後。
圭麻はついに、那智から頼まれていたものを
完成させた。
丹精込めて作り上げたそれを、
那智に手渡す。
ちょうど那智の両手に
すっぽり収まったそれは、
綺麗なライラック色をした
オカリナだった。
「本当にこれで、中ツ国に行けるのか?」
興味津々にオカリナを眺めまわす那智に、
圭麻は笑みを浮かべる。
「幻珊瑚で作ったオカリナに、
時の石(ツァイト・ストーン)の欠片を
埋め込みました。きっと、那智の願いを
叶えてくれると思いますよ」
那智はよっしゃと声を上げ、
さっそくオカリナを吹こうと口元に運ぶ。
「あ、でも今はまだ中ツ国(むこう)は
夜中でしょうから……。高天原(こっち)が
夜になってから吹いた方がよいかと」
それもそうか、と那智が呟き、
そういえば、と自分の身なりを見回す。
そして慌てたように洗面所に駆け込んで、
鏡とにらめっこを始める。
「どうしました?」
「え、あ、いや……。
着替えなきゃ、と思って……」
何を着ていこうかな、
髪型はどうしよう、と呟く那智を見て、
圭麻は肩をすくめる。
(手がかりを探しに行く、というよりはもはや、
デートに行くみたいですね……)
まあ、それも無理はないのかもしれない。
「夢」の中にいる、
大好きな「彼」に会いに行くのだから――。