【タカマ二次小説】取り残された世界で君と見たものは#8 濁流
焼身自殺。
その言葉を聞いた途端。
那智には意味の分からない符号のようだった
伽耶の言葉が、
突如として意味を為し、
荒波のように押し寄せ、那智を呑み込んでいった。
意味を理解してもなお、
ただ、呆然とするしかなかった。
それしか、できなかった。
だけど。
「私、ただ、見ていることしかできなくてっ……。
何も、できなくてっ……。
ごめんなさいっ……。本当にごめんなさいっ……」
その言葉を聞いた途端、
那智の中で、何かがはちきれた。
自分の中で何が起きたのかを理解するよりも先に、
体が動いていた。
気づけば立ち上がり、
伽耶の胸倉を掴んでいた。
「謝って済むことじゃないだろ!?
最後までそばにいたんなら、
なんで止めなかったんだよっ!!
なんでっ!なんでっ……!!」
甘やかされて育った無力な姫君。
彼女だけが、最後まで、
結姫と隆臣のそばにいることができた。
ずっと一緒にいることができた。
そのくせ、
何もできなかったと泣いて謝るその姿が、
ものすごくムカついて、
どうしようもなくムカついて、
たまらなかった。
さらに食ってかかろうとしたその時、
いきなり体を床に叩きつけられる。
驚いて見上げると、
圭麻が伽耶を庇うように立っていた。
「やめてくださいっ!!
伽耶さんを責めても仕方ないでしょうっ!?
むしろ、責められるべきはオレたちの方じゃないですかっ!?
ずっとそばにいながら、結姫の嘘に気づけずに、
隆臣の力にもなれずに、何もできなかったオレたちの方こそ、
無力な、オレたちの方こそっ……!!」
「そんなのっ……!!」
(そんなの、わかってるよっ!!!)
わかっているけれどなお、
伽耶を責めずにはいられなかったのだ。
そうでもしないと、
どうにかなってしまいそうで。
那智は床に突っ伏したまま、
泣き崩れる。
激しい慟哭が、
部屋中に響き渡った――。