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【タカマ二次小説】陽光の届かぬ塔の雲雀#20 切り札

結姫さんが走り去った先を、私はただ呆然と見つめる。

(私は、なんて無力なのかしら……)

何もできない、できそこないの巫女姫。

欲望のままに、世界を汚し続けるお父様を諌めることも知らず、
ただその恩恵を享受していた。

叔母様の覚悟など、気づきもせずに、
ただ安穏と日々を過ごしていた。

事ここに至っても、
なかなか事実を受け入れられずにいた。

現実から目をそらそうとした。
耳を塞ごうとした。

なんとかようやく理解が追いついて来ても、
ようやく何かをしたいと思っても、

私にできることなんて、何一つない。

(何一つ……)

何一つ。何、一つ……?

(待って。あるわ。私にもできること。
たった一つ、できること……)

私はそっと、懐に忍ばせた鏡を握る。

(そうよ……。私には、これがあるじゃない……っ)

私のたった一つの切り札。

私は深く息を吐くと、ゆっくりと天ツ神たちに歩み寄る。

そして告げた。
私にできる、ただ一つのことを――。


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