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賢い日本語入力方式 拡張AZIKを布教する回【AZIK-Jank】


AZIKとは

拡張AZIKの前にまずAZIKの説明から。
公式のAZIK総合解説書を見れば大体分かりますが、AZIKは日本語入力方式の一つです。親指シフトとか、かな入力とか、そういうもののうちの一つ。

AZIKの思想は、ざっくり言って「漢語の入力を日本語に最適化して打鍵数を減らそう!」です。発想が賢い。

例えば、「商売繁盛」という語があります。
ローマ字入力では「shoubaihanjou」と13打鍵です。
AZIKでは、「xpbqhzjp」と8打鍵です。
AZIKの方が5打鍵少ないですね!

このように、熟語によく出てくる音のパターン(-ou, -ai, -aN)を効率良く打てるようになっていて、普通のローマ字入力より楽にタイピング出来るのがAZIKの素晴らしい所。

加えて、AZIKは学習にかかるコストも少ないです。なぜならAZIKはqwerty配列の延長線上にあるからです。かな入力や親指シフトは確かに打鍵数が少ないかもしれません。しかし、ローマ字入力に慣れていると入力方法に慣れるまでかなり時間がかかりますし、挫折しがちです。AZIKならローマ字入力を元にしているので、割合簡単に修得できます。私も知ってから1週間くらいでほぼ打てるようになりました。

ただし、AZIK入力は既にローマ字入力ができる人向けの入力方法です。ブラインドタッチが出来るようになってからの方が移行しやすいでしょう。ローマ字入力も覚束ない人はいきなりAZIKを学習しようとしても多分あまり上手くいかないと思います。

「まずは拡張AZIKじゃなくてノーマルのAZIKからやろうかな」という人は、役立つ情報の備忘録 AZIKという大変ありがたい記事があり、こちらにファイルもありますし導入方法も書いてあるので、ここからダウンロードして始めましょう。(というか公式サイトの方にローマ字テーブルのtxtファイルが見当たらないのが不思議です。一つの環境に偏らないための配慮でしょうか?)

AZIK、もっと拡張できる。

ここまでAZIKの概要と良いところをお伝えしましたが、実はAZIKはまだ拡張の余地があります。例えば、「拡大」「観察」「目的」など、-aku, -atsu, -eki 系には対応していません。そこで、もう少し漢語最適化を測ろうというのが今回の拡張AZIKの魂胆です。

……といっても、私はTwitterで拡張AZIKを作っている方たちの配列に毛が生えた程度のことしかやってません。配列をちょこちょこいじりはしましたが大したものではなく、独自要素になり得るのは隠れ打鍵くらいでしょうか。
名前をお出して良いのか分かりませんが、かそろさん、さっちさんのツイートツリーを大いに参考にしています。素敵な配列アイデアをネットに残して下さりありがとうございます。

ただ、googleで検索しても拡張AZIKのダウンロードファイルらしきものはまだネットに上がってないようなので、「拡張AZIKみたいなの作りたい/入れたいけど無印AZIKのローマ字テーブルを1から編集してくのはだるいな……」という人に向けて、私のものを上げておきます。というか、AZIKの開発は凝りだすとマジで一生終わらない雰囲気があるので、それなら途中のものでもネットにあった方が興味ある人の開発ハードルも下がって良い気がします。

拡張AZIKの中身

ここからは拡張AZIKの中身をざっくり説明していきます。
説明ファイルを見ればだいたい分かるっちゃ分かるんですが、図とかで説明したほうが手早く把握できると思うので、中身がどうなっているかの外観を図でも説明しておきます。以下はazik-jank A(後述)のキー配列です。

入声打鍵

上図の中で語末が-ku,-tsu,-kiのものが入声打鍵です。漢字の音読みでよく出てくる形です。

「再生復唱 発言追求軍 尋問爆弾室 仏滅突撃式竹木!!!」

おぼろげながら浮かんできました。こんな文字列が。
ともあれ、上記は偶然にも拡張ローマ字フルセットのようです。左上の -ai -ei から右下の -iku -oku まで全部使われていますね。二重母音、撥音、入声とAZIKの核をよく表していると思います。-ore、-okoは「それ/これ」「ここ/そこ」等、和語っぽいやつの入力を楽にするためのものなので、仏滅突撃式竹木で漢語最適化が説明できます。

一つ注意すべきことは、図にもあるように sxcvb は各々 altu, iltu, ultu, eltu, oltu に当てられているので、例えばksは カッ になります。では-ツはどう出すかというと、-s; -x; -c; -v; -b;と三打鍵で出します。
例えば、
羽詰まって弐撃決殺失活ちゃった」は
svpa tumste nign kvss; ga xxks; sicsta」と打ちます。(スペースは無視)
正直、二打鍵で-ッにするか-ツにするかはどちらが良いかわからないので、各人で実装して好みの方を採用してください。

アブジャド打鍵

できるなら和語っぽいやつも楽に打ちたい。アブジャド打鍵はそんな欲求を満たしてくれます。(満たしてほしい)
簡単に言えば、「このため」「できる」等を「kntm」「dkr」と子音だけで打てるようにしたものです。入声打鍵との兼ね合いもあり、全てがアブジャドで打てる訳ではありませんが、結構使えるくらいのものにはなっています。

都合の良い例を出せば、
「どれくらいのものからならそれができますでしょうか」は
「d@ kri no mn kr nra s@ ga dk m, dx ka」と打てば良く、だいぶ楽です。

隠れ打鍵

これは打鍵というよりもアブジャド打鍵に付随する考え方みたいなものですが、あまり他にやっている人がいなさそうなので立項しました。
アブジャド打鍵では、しばしば使いたいアルファベットが被るものが出てきます。例えば、「から」と「くる」はどちらも「kr」です。そしてどちらもよく使うので、krはどちらに当てようかな~、と悩んだりするわけです。
そういうとき、krを隠れ打鍵にすると、ちょっと良いことがあります。
まず実例をお見せします。kr系の実装の一部を以下に示します。
kr→から
kra→から
kre→かれ
kri→くらい
kru→くる
このようにすると、「から」を「kr」にしたまま、「かれ」「くらい」「くる」がkrの延長線上の打鍵で打つことができます。
「かれ」「くる」はkare,kuruに比べて1打鍵しか減っていませんが、この方式は見た目以上の快適さをもたらします。

アブジャド打鍵を打つとき、脳はアブジャドモードになっています。「から」も「くる」も「kr」で打ちたくなります。
こういうときに、krに冗長性を持たせてあると、最後の母音が打ち分けのマーカーの役割を果たしてくれて打ち間違わずに済むのです。もし「kr」に「から」しか当てられていなかったら、「くる」と打つつもりで「kr」と打った瞬間に「から」が確定されてタイポになります。悲しい。

隠れ打鍵は「kr」と打っただけでは「kr」と表示されたままですが、ちゃんと「kr→から」が登録されているので、krのあとに子音等を打てば「から」に変換されます。隠れているだけです。頻出なのですぐに覚えられます。ローマ字入力で「今回」と入力するときの「n」みたいなものです。

畳語打鍵

メイン機能とは言い難いですが、一応畳語打鍵というものがあります。ローマ字テーブル上で@ami → あみあみ、@kuta → くたくた 等と羅列してあるのがそれであり、@を語頭マーカーとして同じ語基を繰り返すタイプのフレーズを畳語打鍵として登録していたのですが、使用頻度がかなり低いためあまり使われない悲しい存在です。中途半端にカ行まで作ってしまい、勿体ないので残してあるのですが、開発の際は消しても構いません。というか、一旦全部消して頻出のものを自分で登録する方が使いやすいと思います。

拡張AZIKの実装と導入方法

実装

下の AZIK-Jank.zip というzipファイルに、諸々のファイルを詰めました。

フォルダ構成は以下のようになっています。

AZIK-Jank
 └ 各タイプ(A, B, …)
   └ 版番号(1.0, 1.1, …)
     ├ 説明ファイル(azik-jank A 基本説明.txt …)
     └ ローマ字テーブル(azik-jank A 1.0.txt …)

・各タイプの違い
タイプの違いはメイン機能である二重母音・入声打鍵などのキー割当の違いです。現在、AZIK-JankのタイプにはAとBの2タイプあります。それぞれの設計思想を以下に示します。
 タイプA:無印AZIKとの互換性がある。
 タイプB:互換性はないが打ちやすい。
ただしタイプAも多少は無印AZIKとの違いがあります。
Aのver1.0では、長音(ー)の位置が0の右隣、シャ行にsy-は使えない、あたりが無印と異なる点です。とは言え、ほぼ無印の延長に近い感覚で打てると思います。
タイプBはとにかく手の負担が少ないので、個人的にはBに手を出したらAにはもう戻れません。私個人としてはBを激推します。
具体的に言うと、無印AZIKではz→-aN、q→-ai だったところを Bではs→-aN、g→-ai にしました。これで指の負担が体感5割減しました。無印AZIKは小指を働かせ過ぎなのです……

・版番号の違い
版番号はバージョン番号で、基本的にはその1.0から細かいところを改良していっているので、番号の大きい(新しい)ものを導入することをおすすめします。ただ、前バージョンから仕様が変わることもあります。例えばタイプA 1.1では、ty→たい の実現のためにチャ行がtya等では打てなくなりました。ty→たい は無印AZIKでいうところの互換キーであり、tq→たい も変わらず使えますが、互換性は少し下がります。このような、タイプを変える程ではないけれど影響はあるものは今のところバージョン違いとして扱っています。

・説明ファイル
中身の細かな違いは説明ファイルを御覧ください。
説明ファイルは版番号フォルダ内の「azik-jank … 説明.txt」のような名前のファイルです。説明ファイルには2種類あり、基本説明と差分説明に分かれています。ver1.0の説明ファイルが基本説明。任意のバージョンとver1.0との間の違いを記述してあるのが差分説明です。
基本説明と差分説明の双方を統合参照すれば任意のバージョンの全容を知ることができます。

・ローマ字テーブル
導入のときにgoogle日本語入力に読み込ませるファイルです。
azik-jank "タイプ名" "バージョン".txt という名前のファイルがそれです。
自分でAZIKをいじりたいときはこのファイルを編集します。

導入方法

azik-jankを導入する方法は簡単で、最初の方に紹介したサイト「役立つ情報の備忘録 AZIK」に書いてあるのとほぼ同じやり方です。

以下、私の環境であるWindows10でのやり方です。
詳しく知りませんが、備忘録の記事の方が恐らくMacなのでMacでも似たような感じでできるはずです。

  1. Google日本語入力をインストール。

  2. Google日本語入力用のローマ字テーブルファイルをダウンロード。
    azik-jank A 1.0.txt や azik-jank B 1.1.txt などがローマ字テーブルです。

  3. タスクバーの右の方にある「A」のアイコンを右クリックして「プロパティ」を選択。

4. Google日本語入力プロパティが出てくるので、ローマ字テーブルの「編集」を選択.。

5. 下のようなウィンドウが出てくるので、左下の「編集」を選択し、更に「インポート」を選択します。

6. 「現在のローマ字テーブルを上書きしますか?」という確認メッセージが表示されるので「OK」をクリック。
7. ダウンロードしたローマ字テーブルを選択。

以上の流れで拡張AZIKが導入できるはずです。

余談

ファイル名を「拡張AZIK.txt」等にしなかったのは、自己流で拡張AZIKを作っている方たちが使う言葉と被ってしまうためです。今回は拡張AZIKの中のazik-jank式、みたいな意味合いで固有の名前をつけました。azik-jankという名前の由来は、もともとさっちさんがazik-najと仮称していたのを私がちょっと変えたものです。入声のn、アブジャドのa、畳語のjでazik-najだった所に、隠れ打鍵のkを加えて語順を変えたという具合。一度ハマったら病みつき(ジャンク)になるとかなんとか。(後付け)

あとこれはAZIKの話ではないのですが、近い話題で便利だったものを紹介して終わります。
矢印キーに一々手を伸ばすの、面倒くさくありませんか?
そうです。アルファベットキーで矢印キーを代用すると便利だという話です。caps lockにctrlの役割を充てた上で ctrl+hjkl を矢印キーの変わりにする方法がこのサイトに書かれていました。私はctrl+ ijkl の方が便利そうだったので少し変えていますが、方法は同じです。windows power toysでやる方法もあるみたいなのですが、煩雑そうだったので私は先の方法を取りました。以上です。

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