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50歳のノート「大御所シェフに心満たされる 「バックパッカー ~ペク・ジョンウォンの出張料理団~」」


またも韓国バラエティどハマりコンテンツを見つけてしまった。U-NEXTで公開されている、
「バックパッカー ~ペク・ジョンウォンの出張料理団~」である。 
ペク・ジョンウォンは韓国の国民的なシェフ。韓国の街並みのあちこちに彼の顔写真の看板がある。新大久保や原宿にも店舗があるほどだ。

そのペク・ジョンウォンと俳優アン・ボヒョン、オ・デファン、ラッパーのDinDinの4人が韓国全国から依頼を受けて料理をふるまいに現地に繰り出す。
軍隊の数百人の大量の食事や数十人でも凝ったテーマの依頼だったりして、4人の奮闘ぶりが手に汗握る。
面白いのは、ドラマやバラエティに滅多に出てこない暮らしが紹介されることだ。
軍隊の施設、山頂にあるお寺、気象観測船、看護師学校、警察官の子供たちが通う保育園とさまざま。

その場所の人々の奮闘や暮らしをコンパクトに紹介しつつ、頑張っている人たちをペク・ジョンウォンチームの料理が笑顔にさせる。

毎回テーマが決まっている。
「目の前で出来立てを食べたい」(ただし軍隊の400人分)「韓国料理をアレンジした多国籍料理が食べたい」(ただし船の上で材料が限られる)など難易度が高い。 
しかも配膳時間が決められている。デッドラインを目掛けて4人は汗だくで走り回る。ペク・ジョンウォンを除けば俳優やラッパーなのにもはやプロの料理人だ。

テーマも難易度が高いのに毎回トラブルが発生。
数百人分の料理なのに電熱調理器の火力が足りず、このままでは間に合わない、大量料理なのに塩を入れすぎて台無しなっている…など。

そんなとき、ペク・ジョンウォンが瞬時に繰り出す解決策がすごい。
本当は鉄板で焼く調理法だが時間がないし火力が足りないので「オーブンで焼く」。
煮詰める時間が無くなったので片栗粉をいれて余熱で味が整う形にした、など。
「え、どうする?」となって「なるほど!」というプロ技を見せてくれる。

私が一番手に汗握るのは「足りなくなる」場面だ。毎回、依頼のあった施設担当の栄養士や調理師に聞いて人数分の量を用意しているにも関わらず、配膳の途中で足りなくなる。
「ペク・ジョンウォンの料理が食べられる」と楽しみにしてきた人たちが多めに盛ったりおかわりをしたりと、1人の増量は少しでも、数百人分が増量するとあっという間に足りなくなる。
すると笑顔で配膳しながら会話していたペク・ジョンウォンが足りなくなる気配に気づき、すっと調理場に入る。
手持ちの材料であっという間に追加の一品をつくりあげ、配膳に穴を開けない。

とはいえ、山の上のお寺のときは緊張が高まった。
「毎年お釈迦様の誕生日に訪れる、20から30人分の参拝客のおもてなし精進料理を作って欲しい」というご住職からの依頼だった。
玉ねぎ、にんにくが使えないという制約がありつつ、3品30人分を用意できたものの、気づくと境内には50人以上の人がひしめいている。
「ペク・ジョンウォンの料理が食べられるんだって」と聞きつけ、楽しみに待っていた。
会食場所に先着の30人に配膳し終えたものの、明らかに足りない。
追加で何か作ろうにも山の上で材料が無い。持参した食材は使い切ってしまった。買い出しに行こうにも往復4時間かかってしまう。
手元にあるのはすでに作った料理の余りが少し。そこでペク・ジョンウォンはジャージャー麺のほんの少しの余りを揚げ物にしておつまみふうにして出した。
明らかに足りないのだけど、そこはファンサービスで補う。待っていた人たちのところに出て行って笑顔で会話して心をほぐす。
「ペク・ジョンウォンと話せた」「(ちょっとでも)ペク・ジョンウォンの料理を食べることができた」という喜びで心が少し満たされるように感じた。

ペク・ジョンウォンの対応力ときたら神がかっている。どんな状況変化もどんと来いだ。
20話の話数があるがあっという間に見終わってしまった。
ロスを感じて他の韓国バラエティに手を出すも満たされない。
ペク・ジョンウォン(とアン・ボヒョンのビジュアル)のロスは満たされなかった。

ペク・ジョンウォンの無双ぶりを見ていると「自分はこんなことできるだろうか…」とふと思ってしまう。
年齢は50を超えているがその場をなんとかする力ってあるのだろうか?
何でもいいけど人に何かしてあげられる力ってついてるのだろうか、と思ってしまう。

ペク・ジョンウォンが料理学校の生徒たちに食事を振る舞った回があった。
生徒たちからしたら彼は憧れの成功モデルである。
スペシャルサービスで生徒たちの教室を訪れ質疑応答を受けた。
「メニュー開発にあたり大切にしていることは?」という質問にこう答えた。
気になるお店を見つけてもペク・ジョンウォンはそこにすぐ食べに行かないという。
ブロガーの料理レビューやそのお店を紹介した動画配信者のレビュー動画を読み込んで研究し、まずは自分で作ってみる。
レシピは無いが、その味と見た目を再現しようと想像しながら何度も作る。
似た感じに作ることができたらはじめてその店に行ってみる。
食べてみると意外と大したことがないそう。ブロガーや動画配信者の美味しそうな説明や写真や動画に比べて実物は少し見劣りする。
「なぜあの味が出せるのか」「なぜあの色になるのか」を考え続け研究することで自分の腕が上がっていく。そこに自分の色を足していくそう。
大御所になった今でも一日3時間は料理を検索して研究しているという。
お金もかからず努力するだけ、と締めくくった。

「○○をやりたい」とか夢想しながらもそこにどれだけ時間をかけているだろうか?と考えると身が引き締まる。

学びがあり、韓国の知られざる暮らしを知り、何より食べている人の笑顔に心満たされる番組だった。
シーズン2 を是非是非見たい。

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