中国人に誘われる②
前回は20年も前の大昔の話を書いたが、今回はつい最近の話だ。
え~日付は2016年2月29日、寧波と言う街で。
その日、郊外の会社を訪問する為に車を呼んでおいた。
メータータクシーではない、いわゆる白タクだ。
メータータクシーは中国では手っ取り早く稼ぐ手段だ。
故に運転手も特にマナー教育を受けていない人が多い。
愛想は悪いし、運転は乱暴だし、車は汚いし
乗車拒否する事もあるし、ロクな事がない。
この街のメータータクシーも今回、短距離で何度か乗ったが
サスペンションが効いておらず、タイヤの振動がモロにお尻に来る。
今回訪問する会社は片道1時間はかかりそうだし
そんな乗馬みたいな思いはしたくないと
多少、高くなっても白タクを呼んでおいたのだ。
さてさて朝の8時に、その車は来た。
事前にもらった車の画像と照合して助手席の窓をノックしドアを開けた。
運転席にいたのは。50歳前くらいの中年男性だ、中背で少しやせ形。
「さてと…どこに行くんだ?」
「***ってとこ。これが住所」
行き先は白タク手配時に勿論伝えてあるのだが、
何も聞いていなかったかのように
再度聞かれるのはいつもの事だ。
「ちょっと待ってよ・・・ナビをセットするからな」
そう言って運転手はスマホにセットし始めた。
中国人のナビは大体スマホだ。
ナビシステムが普及する前にスマホのナビが
使えるようになってしまったからだと思う。
運転手は、かなりのマイペースでナビの設定に
10分くらいかかっていた。
のんびりしているのかドンくさいのか・・・
「取り敢えず近くまで行って道聞こうよ。方向が合ってるならいいよ」
そう提案すると「そうだな」と出発した。
道中「今まだ通勤ラッシュなの?」「寧波は車多いよね?」等
適当に質問を挟み、世間話をする。
その内に、またお決まりの質問が出る。
「あんた、どこの人だ?」※出身地確認。
「う~~ん(考)外国人よ」
「外国人?韓国か?」
※最近、在中の韓国人が多いからか、先ず韓国か、と来る事が多い。
「ううん・・・日本」
「お、日本人か!(驚)」
「うん・・・ふふ(愛想笑)」
「日本人か・・・」
一瞬、微妙な空気が流れる。
ここ数年、中国では毎日、抗日ドラマが放映されている。
従い日本人に対するイメージも以前より悪い。
しかし私はそんな事は気にしない。相手の出方に合わせるだけである。
運転手が続ける。
「日本の空気は綺麗らしいな!」
「う~ん・・・そうね。晴れなら大体青空が見えるよ^^」
「日本の街も清潔らしいな!中国人は旅行に行って驚いている」
「う~ん・・・そうね。ほこりは少ないね^^」
「中国は空気は汚いし、街は汚いし、ダメだ!」
「ああ・・・急に工業が発展しすぎたからかな、開発も多いもんね。
でもさ日本も昔そんな時があったよ。
1970年代かな、大気汚染や海水汚染とかさ。
庶民が原因不明の喘息や病気になって原因を調べたら
工場の排煙や排水で・・・裁判したりさ。
だからさ、きっと今は過渡期よ。徐々に改善されていくと思う。」
・・・など、先ずは自国を下げて他国を上げる、
双方の気遣いの見える会話が行われる。
私の経験上、大体がそうだ。
お互い謙遜しながら会話を進めていく感じだ。
中国人はその辺り、社交はうまいと思う。
当たり障りのない会話が一通り済むと、
踏み込んだ話題も出してくる。
「なあ、あんた達の安倍は、なんであんななんだ?」
出た(笑)
う~ん・・・面倒くさいんだよな、この手の話。
「それは分かんない。私は政治家じゃないし。
彼には彼の立場があるんじゃないのかな?
少なくとも日本人の庶民は皆、平和を希望しているよ。」
「そうか~?彼は歴史問題を認めないな~」
「・・・過去の事も重要かもしれないけれど、
私は現在と未来の方がもっと大事だと思うよ。
あなた達は歴史問題と言うけれども、もう70年も前の話よ。
戦後、日本の教育も完全に変わって我々は戦前の人とは
全く違った平和教育を受けている。
誰一人として戦争なんて望んでいない。
あなた達は、ずっと70年前の事を言うけれども
私たちは、あなた達がまるで幽霊に抗議しているように思える。
あの時代の事を正確にわかる人はいない。
私も見たことがない。
あなたも見たことがない。
実は誰も正確に分からないかもしれない。
過去に起こった事に、いつまでも拘る事はそんなに重要な事かな?
もう70年も前よ?
・・・私は別にごまかしているわけではない。
ただ、今、この時代をどう生きるか考える方が
私はもっと重要だと思うんだ。
・・・あなたは、どう思う?」
上記のような話を、ゆっくりと考えながら伝えた。
たたみかけると反感を持たれる可能性があるからだ。
押しつけではない、伝える事が大事だ。
はっきり言って、その場しのぎの言い方で、これが正しいのかどうかは
分からない。けれども、中国人には私の個人の考え方を正直に言うようにしている。中国人は現実的で素朴な考えの人が多いので経験上、受け入れてもらえる事が多い。(表面上だとしても)
幸い、この運転手も物わかりのいいタイプだったようで
同感してくれたようだ。
「実は俺は、初めてちゃんと日本人と話をした。
今まで会った日本人は中国語をそんなに話せなかったからな。(ニコ)」
そんな、ややこしい話も含めて1時間のドライブ会話の後、
運転手が名刺を出してくる。
「私はウェイと言う。普段はこの会社にいる」
じゃあ、なんで今、運転手なんだ??
という細かい疑問は飛ばしておいて、私もウェイ氏に名刺を渡した。
「私はアンズ、アンズって呼んでくれればいいよ。」
そして往復3時間のドライブを終えたら、
We Chat(中国版LINEのようなもの)でつながり、
ウェイ氏がリーダーの300人規模のグループチャットに参加し、
「明日、晩御飯を御馳走させてくれないか~?」
と有り難いお誘いが入り―のと。
今回はスケジュールが合わず、お誘いには乗れなかったのですが。
また次回、寧波に来る時には事前に連絡をくれ、と・・・
う~ん、また誘われてしまった。
何だろうか、スキだらけなんだろうか(汗)
嬉しいような、怖いような、中国人との付き合いなのである。