中国単身駐在上司の奥さん⑤
私が食べに行ったカニとは所謂「上海蟹」。でも実は上海が産地ではないのです。有名な産地は上海近郊の江蘇省の昆山市巴城鎮にある陽澄湖です。中国では「大閘蟹(タージャーシエ)」と呼ばれており「上海蟹」と言っても通じないのでご注意を・・。
私は江蘇に勤務していたので、毎年秋になると色々なお呼ばれで上海蟹を頂き、その内、1回か2回は、陽澄湖まで食しに行く事が恒例になっていました。でも、あれって小さいので脚の身はあんまり食べる所ないんですよね。ミソ以外は食べにくい。なので私にとっては、初鰹とかマツタケみたいな感じで季節を味わう食べ物、であったと言えるでしょうか。(今思えば、いい時代だったような気がする)
さて本題。
国慶節休み2日目、お昼の12:30頃
私は、台湾人数人と日本人オジサン友達とで、陽澄湖のほとりにあるレストランにいました。
外のテーブルで湖を眺めながらの食事でしたが、ちょっと寒かった…沢山のお料理の後で、いよいよてんこ盛りのカニ登場!!
これこれ~♪ノルマは一人4匹。
「まだ早いから小振りだけどね」とホスト側の台湾人。
いやいや、十分です(汗)既に、お料理沢山出た後でカニ4匹。ミソ食べるので精一杯かも。それに、上海蟹の脚食べるの難しいんだヨ!
「~~~う~~~!!!」
カニ脚と格闘し始めたその時、携帯電話が鳴った。「ちょっと失礼」と目配せして席を立ち、湖を前に電話を取る。
「もしもし?」
「もしもし?蟹美味しい?(笑)」
運転手の金さんだった。
「お~いし~よ!」「そりゃ~良かった♪」などのやり取りの後
「・・・何?」と聞くと・・・
「竹山が…」
またかい…(ーー;;
「竹山さんが、何?(不機嫌)」
「まだケンカしてる。朝からず~っと、御飯も食べずに…」
「ふ~ん(--)」
「竹山はまだパジャマのままで、奥さんは目を真っ赤にしてずっと何か言ってる…」
「ふ~ん(--)」
「アンズさん、来てくれないかな~(懇願)」
「…あのさ~、朝も言ったんだけどぉ、竹山さんは私が誘ったの断ったんだよ?両親にも会おうとしなかったしさ~…何で私が行かなならんの?」
「私で出来るなら何とかしたいけど、でも言葉が分からないから…」
「あの奥さん、すごい嫉妬深からさ、怖いよ。私、一度、竹山さんの愛人と疑われたんだから。」
「ええ~!?本当?」
「そう、夜中に電話かかってきて色々怒鳴られてさ~。」
「そうなんだ…そう言えば私も睨まれた、すごい目つきで。だから今、旦那を彼らの所に行かせてるんだけど」
「王さんが?そんなのほっときーよ!あんた達もタクシーの仕事あるでしょう?しょ~もない。夫婦ケンカなんか他人がどうこう出来ないんだから!」
「でも私、竹山が気の毒でさ~折角奥さん来てるのに何でこんな事に…」
ああ~もう!
運転手夫婦もお人よしと言うか何と言うか…
「…奥さん、紙持ってた。白い紙に緑の字の用紙。ペン持って竹山にサインしろ、みたいな?」
緑の字…?(考)
「離婚…とか漢字で書いてあったけど」
え…!?
「あれ、離婚届けかな…?」
ええ~~~!!??(汗)
「…金さん。そこまできてたらさ、もう私たちにどうこう出来る問題じゃないと思うよ。もう放っておこうよ。竹山さんも私が行っても却って困るよ…」
「でも・・・私が『アンズさん呼ぼうか?』って聞いたら、竹山、うなづいたよ。だから竹山も来て欲しいと思ってると思うんだけど…」
「・・・・・・じゃあさ。
竹山さんが自分で私に『来て下さい』って電話するように言っといてよ。私、まだカニ食べないといけないから。ごめんね、じゃあね!」
畳み掛けて、電話を切った。
頭に来た。困った時だけ、私ってか?人の事なんだと思ってるんだろ。
ほんとアッタマ来るオヤジだな~!!!
気分を落ち着けようと、目の前の湖の風景を眺めた。
のどかだな…
周りにはカニを楽しむ人々。
平和だな…
そして竹山さんは
修羅場の真っ最中だな。
気の毒な…
でも、
天罰じゃ(--)
人の気持ちを考えないから、こんな事になる(--)
・・・さぁ!
カニに、も~どろ♪ ^▽^
席に戻った私に、オジサン友達が「大丈夫なの?」
「大丈夫です!^^こちらこそ、すみません。通訳ほっぽって」
再びカニ脚と格闘しながら…
でも、
段々気になってきた。
やっぱり行った方がいいのかな…(考)…
つづく。