「CQをポケットに地球一周の船旅」第1回:「未知なる世界へ、いざ船出!」—私が期待するクルーズとは?
「船で世界一周」と聞いて、リッチなシニアがデッキでくつろぎながらシャンパンを楽しむ姿を思い浮かべ、「自分には無縁」だと感じていませんか?
かつて私もそう思っていましたが、ピースボート第117回クルーズに行き、その思い込みが一変しました。
2024年4月から105日間、世界18ヶ国を巡った船旅での経験を連載。CQ(異文化適応力)の視点から分析し、知られざる船旅の世界や、出会ったユニークな人々、日本と各地の文化、社会課題についてお届けします。
さあ、一緒に船旅を楽しみましょう。いよいよ出航です!
母から娘へ、そして私へと繋がる航路
私が船旅に参加した理由は「必然」としか言いようがありません。
私の母(85歳)は縁あってピースボートで世界を4周し、中学時代に不登校だった娘もその足跡をたどりました(その経緯については、連載の中で改めて述べます)。そんな2人の姿を見て、私もまた、この船に乗ることが自然な選択に感じました。何といっても「地球一周」という言葉はロマンに満ちていますから…。
そうした思いから、夫の会社員卒業に合わせて夫婦で第117回航海に申し込みました。とはいえ、申し込み当時(2022年)はコロナ禍で世界的にクルーズ船が運休していた最中。クルーズ再開が決まるまでは、祈るような気持ちで過ごしていました。(ピースボートも2023年4月まで3年間運休)
高まる期待と、少しの不安
第117回の航路は、105日間かけてアジア、アフリカ、ヨーロッパ、中南米、北米を巡ります。旅の目玉は、ノルウェーのフィヨルド遊覧、パナマ運河通航、そしてアラスカのフィヨルド遊覧です。アクセスが難しいアフリカ(南アフリカ・ナミビア)やラテンアメリカ(コロンビア、パナマ、コスタリカ、メキシコ)への寄港も大きな魅力のひとつです。期待が一気に高まりました。しかし、同時に不安もありました。
船旅は寄港日以外は長い船上生活です。退屈しないだろうか…食事は口に合うだろうか…どんな人が乗っているのだろう…病気や安全面は大丈夫だろうか…と様々な思いが巡りました。
今思えばほとんどが杞憂だったのですが。
「世界一周の船旅」の話をすると、「高いでしょう」「100日間も退屈しないの?」とよく聞かれます。また、「子どもが小さいうちは無理」「(仕事などで)時間が取れない」「身体に不調があるから難しい」と諦めている人もいるかもしれません。
以下、私の経験からお答えしたいと思います(ただし個人の見解ですので、参考の一つとしてご覧ください)。
価格は?—様々な航路や内容から自分に合ったものを選択
世界のクルーズには様々な航路や内容、価格帯があります。 もし、毎晩行われる豪華なショーや最新の遊戯施設、カジノ、ブランド店、有名シェフの料理など、いわゆる豪華客船の「いたれりつくせり」の旅を期待しているのであれば、ピースボートの航海は物足りなく感じるかもしれません。
これらの「豪華客船」と比較すると、ピースボートの場合は同じ航路・同じ船室クラスでもかなり手頃な価格で世界一周ができます(およそ半分~3分の1程度の価格といわれています。詳しくは公式サイトなどで確認してみてください)。ただし、当然ながら豪華な要素はかなりそぎ落とされています。
とはいえ、現在ピースボートがチャーターしているパシフィックワールド号は、1995年当時に世界最大級の客船として建造された船です。やや古いとはいえ、豪華な雰囲気を楽しみつつ、カジュアルでアクティブな旅を手頃な価格で楽しみたい人にはうってつけです。
船旅を選ぶ際は、説明会や体験乗船会を利用して、自分の期待を明確にするのが良いでしょう。
船の旅はハードか?—「勝手に移動する」ホテルで楽々移動
船旅は一度乗り込んでしまえば、「勝手に移動する」ホテルのようなものです。煩雑な荷物の扱いや移動のストレスも少なく、時差も1時間ずつしか発生しません。飛行機の旅と比べて断然楽だと感じました。
船旅はシニアが多数を占めるため、杖ユーザーや持病を持つ方が多く、車椅子で移動する方もいます。それぞれが自分の体調に合わせて、マイペースに船上生活を楽しんでいました。
心配していた「揺れ」についても、私はほとんど気になりませんでしたし、「酔い止め」を服用することもありませんでした。個人差はあるとは思いますが、船酔いが酷くて楽しめなかったという話は耳にしていません。海域や天候によって揺れることはありますが、現在の大きな船にはフィン・スタビライザーという横揺れを抑える装置がついているそうです。 ただし、ドアに指を挟んだり、階段でバランスを崩して骨折する人もいるので、その点は注意が必要です。
「船旅は退屈では?」—成功の鍵は、いかに船上生活を楽しむか
初めての船旅をする人が旅程を見て驚くのは、船上生活の長さです。それに比べて、陸上で過ごす時間は1寄港地につき平均1日、長くて2日。つまり、100日間の7割くらいを船上で過ごすことになります。船の旅に満足できるかどうかは、この特徴を理解し、船上生活を楽しめるかどうかにかかっていると思います。
「船旅は退屈では?」という質問をよくされますが、私自身は100日間忙しく充実していました。船では分刻みで様々なプログラムが実施され、公共の施設も豊富です。
毎日ジムや各種プログラムで身体を鍛えるもよし、洋上カルチャースクールで社交ダンスやヨガ、水彩画を始め、人前で披露できるレベルに上達するもよし(もちろん発表の場も提供されています)。
寄港地から次々に乗船してくる「水先案内人」と呼ばれる専門家やアーティストの講義を受け、ひたすら学ぶこともできます。自分で企画を立ち上げることも可能です。これらはすべて無料で提供されています。
もちろん、朝から晩までぼんやりと海を眺めたり、潮を吹く鯨の姿を探すのも素敵な時間の過ごし方です。
船上での環境でいろいろなことに挑戦したい人、マイペースでのんびりしたい人にとって、船の旅は幅広いニーズに応えてくれると思います。
リピーターの多さ—自分の期待を明確に
ピースボートのリピート率は3〜4割と非常に高いと聞きます。船上では、20回以上(!)リピートしている方や、連続して次のクルーズも予約している方にも出会いました。なぜこれだけの人がリピートするのか、乗船してみてその理由がわかった気がします。
私は今回が初めてのクルーズ経験なので、他のクルーズと比較することはできません。しかし、今回の連載を通して「自分には無縁」と思いがちなクルーズを少しでも身近に感じていただければ幸いです。
自分の期待を明確にしたうえで、提供されている様々なクルーズを十分に比較することが、乗船後の満足感につながると思います。
次回は、私が船上で出会ったユニークな乗客について、CQの視点を交えてご紹介したいと思います。
CQラボ フェロー
田代礼子
※トップの写真はピースボート公式サイトより
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