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CQと師弟関係~子どもが習い事を辞めたいと言ったら?

従順=良いという前提

毎朝我が家に隣接する幼稚園から、先生の声に従って唱和する園児たちの元気な声が聞こえてくる。その中で私のCQアンテナが「ピン!」と反応する瞬間がある。
「せんせいの~ いうことを~ よくきいて~ りっぱなひとに なりましょう!!」

CQを知る前は全く気にもならなかった。
いや、むしろ「良い心がけだわ。さすが伝統ある幼稚園…」と感心すらしていたかも知れない。でもいったんCQを知ってしまうと、見慣れた景色が180度違って見えてくる。

「パワーホルダー(先生・大人・制度)に従順=立派な人」という前提は、一体どこから来るのだろうか?
権力への盲信を早期に刷り込むことに繋がらないか?
それが将来、子どもの自主性やクリティカルに考える能力に影響しないのか?

そんな考えが渦巻き、CQナレッジを使って状況を俯瞰してみたくなる。

不確実性回避と達成志向が高い日本の文化「道を極める」

「文化の物差し」である6次元モデルで見ると、日本は少し高めの権力格差と集団主義の文化。そこに高い不確実性回避と達成志向が加わる。
こういう文化では、「道を極める」ことが大切になってくる。

たとえそれが学校であろうが、水泳や習字、英語の様な放課後の習い事であろうが、塾であろうが、先生から「道」を教わる以上は、そこにドライな「契約」を超えた感情的な「師弟関係」が形成される。

一方で先生の側も単に契約にある「スキル」を教えるだけでなく、生徒の人格形成やその他様々な悩み事に関わる「生涯を通じた恩師」というメンタルモデルが形成される。

娘の中学時代の担任が言っていた言葉が蘇る。
「私がこの仕事を選んだ理由は、教師は聖職だからです」

ミッシェル・オバマ(元米大統領夫人)の自伝に見る 異なる師弟関係のかたち

ミッシェル夫人は2018年に出版した自伝「Becoming(邦題 マイ・ストーリー)」の中で、シカゴのサウス・サイドの労働者階級の家庭で育った子ども時代を詳しく記述している。その中で夫人が4歳の時、音楽家の叔母からピアノを習い始めるくだりがある。

叔母は非常に厳しい完璧主義者。生徒達にとっては「権威の象徴」だった。ミッシェルは持ち前の負けん気でピアノの腕を上げる内に、練習の進め方をめぐって叔母と対立するようになる。

幼い娘が、専門家である叔母に対して自己主張し、毎回言い合いをしながらピアノのレッスンを受ける様子を聞いて、ミッシェルの両親は「大人に対して生意気な態度をとること」をとがめるどころか、娘の気骨を大いに歓迎したという。

まさに、ここに個人主義と権力格差の違いを見ることはできないだろうか。

習い事が辞められない!


Googleで日本語で「習い事 辞める 伝え方」で検索すると、195万件ヒットする。更に検索すると「子供の習い事を辞める時の例文6つ」「使いやすい辞める口実」「習い事を辞める時の切り出し方や理由の言い方」などなど…

ベネッセ※1によると習い事をやめる場合は
1.少なくとも1か月前までに(規約による)
2.対面または電話、メール、ラインで(それぞれのパターンの例文あり)
3.対面で伝えられなかった場合は、後日お礼状と菓子折り持参(特に茶道や書道など師弟関係が想定される場合)ということ。

私自身も、2人の子どもが習い事や塾を「辞めたい」という度に、毎回重苦しい気持ちに襲われながら「どうやったら失礼なく、悪く思われず、すんなりと(時には我が子の根性のなさに責任転嫁しながら)辞める方法を画策したものだった。

そこには、いったん「師弟関係」を結んだ相手を「裏切ること」。そして本来「『極めるべき道』から脱落すること」への後ろめたさがあったのだと思う。

今朝も聞こえてくる元気な園児達の唱和を聞きながら、自分が気づかず娘たちに刷り込んだ文化の影響に思いを馳せている。

※1ベネッセ教育情報サイト


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▶ホフステードの6次元モデルと6つのメンタルイメージについて詳しく知りたい方は、『経営戦略としての異文化適応力 ホフステードの6次元モデル実践的活用法』宮森千嘉子/宮林隆吉 著をご覧ください

一般社団法人CQラボは、ホフステードCWQの日本オフィシャルパートナーとして、カルチャーに関してトータルな学びを提供しています。CQ®(Cultural Intelligence)とは…「様々な文化的背景の中で、効果的に協働し成果を出す力」のこと。CQは21世紀を生き抜く本質的なスキルです。Googleやスターバックス、コカコーラ、米軍、ハーバード大学、英国のNHS(​​​​国民保険サービス)など、世界のトップ企業や政府/教育機関がCQ研修を取り入れ、活用されています。

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