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CQを学ぶ意味~33ヶ国の若者と対話して教えてもらったこと

単に海外に住んでるだけではCQは上がらない

私がトレーナーとして研修に関わる世界的な教育NGOでも本格的に留学生の大移動が始まり、多忙さに嬉しい悲鳴(苦笑)をあげています。
さて、このNGOでは80年代より積極的に異文化理解教育を取り入れており、留学という「経験」だけではなく、その「経験」を役立てるための包括的なCQ知識、CQ戦略、CQアクションを促進するプログラムに力を入れています。(CQという名称は使っていませんが)

またこのNGOでは、プログラム参加者に対して約40年間にわたりIDIなどのアセスメントを使って継続的に効果を計測、プログラムの改善に活かしています。その報告によると、単に「留学しただけ」のグループと「異文化理解教育を受けて留学した」グループの間には顕著な差が見られ、異文化理解教育が留学の成果に高い相乗効果を与えることがわかっています。
つまり「留学しただけ」ではCQの上昇は限定的なのです。

ちなみにアメリカではこの結果を踏まえて大学の留学プログラムなどに異文化理解教育を取り入れ、高い効果を上げています。※
これは海外で働くこと、居住することについてもまったく同じことが言えます。

単に海外に住んでるだけではCQは上がりません。意図的に学ぶことが必要なのです。

33ヶ国の生徒との対話

さて私にとってトレーナーとしての研修は、CQナレッジ(知識)を再確認する旅でもあります。
その中で最近、来日したばかりの33ヶ国の若者達と文化について対話をしながら「面白い」と感じたことをご紹介します。

ホフステードの6次元モデルの中の1つに「権力格差」があります。これは「社会の権力の弱いメンバーが(例えば、生徒が教師に対して)、権力が不平等に分布している状況を受け入れている程度」と定義されます。
ざっくり言うと、世界の7割以上の国は権力格差が高く(階層主義的)、欧米に代表される世界の一部の文化は低く(つまり平等主義的)、日本はほぼその中間に位置しています。日本以外のアジアの国はすべて階層主義に分類されます。
研修の中で私は次のような2枚の写真を見せて「AとBの写真のどちらがあなたの文化の先生と生徒の関係に近いですか?」と質問します。結果は6次元モデルに表されているスコアに相関しており、とても興味深いものでした。

●ほとんどが欧米諸国から成る22か国の生徒のグループ→9割以上がBと回答(Aと回答した3名はタイと中国出身)
●アジア11か国からの生徒のグループ→結果はほぼ全員がAと回答

権力格差に代表される文化が自分の価値観に与える影響に気付くと、生徒の中で「違い」を良い悪いで判断するのではなく、むしろそれを味わって活用しようという気持ちが生まれます。
研修では日本と自分の国の文化次元の違いを知ってもらい、アドバイスを与えながら、生徒に様々なアクションプランを考えてもらいます。異なる価値観を持つ相手に対するレディネスや関心が生まれる瞬間でもあります。

南米パラグアイのトレーナーとの対話

この話を研修パートナーである南米パラグアイ出身のトレーナーにすると、面白い経験談を話してくれました。

彼女曰く、異文化理解(CQ)教育を受ける前は彼女自身も文化の違いについて、パラグアイの価値観に基づいて「良い悪い」を判断していたとのこと。
彼女は昔、自宅で預かっていた欧米出身の生徒に対して、「自分が外出するしばらくの間、娘(幼児)を見ていて」と頼んだそうです。するとその生徒は即座に「私は今から外出するからダメです」と断ってきたそうです。

パラグアイは権力格差がとても高い文化(70)。親や先生などパワーホルダーが言うことは「絶対」であり、Noをいう事は許されないそうです。それに対して生徒の文化は平等主義で、相手がたとえ国王であろうと不平等は最小化されるべきと強く信じる文化。生徒にとっては悪気のない自然な発言であったと考えられます。
彼女は生徒をこっぴどく叱り「ついには生徒を泣かしてしまったわ。文化の違いを学んでいないと、お互いを不必要に傷つけ合うことになる。みんなが異文化理解を学ばなくてはならないわ」と反省を込めて言います。

「文化の違いは正しい・正しくないではない。ただ違うだけ」
そのことに気付き、違いを効果的に活かすことが出来るための意識的に学習する。
それこそがCQの力の真髄であり、世界中の人がより高いCQ力を持てればきっと世界はより平和でインクルーシブな場所になる。
今日も若者たちと対話をしながらそう確信しています。

https://afs.org/2019/05/21/purdue-shares-intercultural-learning-gains-for-short-term-programs/?fbclid=IwAR3gjveGLdkvX1hTO40vwrgNkmWIoRm2dAKbqcAj_qG4Y8zS6ByDZHquAlc


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一般社団法人CQラボは、ホフステードCWQの日本オフィシャルパートナーとして、カルチャーに関してトータルな学びを提供しています。CQ®(Cultural Intelligence)とは…「様々な文化的背景の中で、効果的に協働し成果を出す力」のこと。CQは21世紀を生き抜く本質的なスキルです。Googleやスターバックス、コカコーラ、米軍、ハーバード大学、英国のNHS(​​​​国民保険サービス)など、世界のトップ企業や政府/教育機関がCQ研修を取り入れ、活用されています。

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