OEDO[1-6]民衆はヒーロー
東北の皆さんの復興費を、防衛費増強にあてるんじゃねぇ! 逆だろっ、逆! 防衛費(年間5兆円強)をまるまる復興費にあてるんだよっ!! ──などという暴論が「地球防衛隊」構想の精神です。大げさに言うならば。
確かにそれだけを聞いていれば、暴論にしか聞こえません。しかし、この硬直し煮詰まった、動かし難い現状を俯瞰すれば仕方ありません。日本の国防体制。こうでもしなければ打開できないシステムが組み上がっています。発想を逆転させて、新たな未来を切り開くのです。
この転換を喩えるなら、半導体工場を野菜工場に転用するようなもの。箱モノ行政、土建国家と揶揄されて久しい日本政府は、防衛費に関してもとにかく財政出動あるのみ。年を追うごとに増額に増額を重ね、もう後戻りも出来ないほどに膨れ上がらせてしまいました。
しかしそういった勢力を批判したい訳でもありません。ここまでお読みの読者ならご理解の通り、悪者を吊るし上げて糾弾するようなマネはしません。これは政治家、官僚、企業がまっとうに働いた結果だとも言えます。「支出は収入額に達するまで膨張する」の法則が発動した成れの果てなのです。皆さん「良かれ」と思ってやっているのです。
それは前回で「ラスボス」に仕立てあげた僕たち庶民も同じこと。あまりにも巨大な機構の歯車のひとつ。日々、爪に火をともす思いで懸命に働いた結果、システムが膨張し、肥大化する。比して自分は社会の歯車としてますます矮小な存在となり、その無力さに打ちひしがれるようになるのです。
日本の防衛予算と関連産業の全てもその一環にあります。一度膨らんだシステムを戻すことは容易ではありません。岸田内閣は今まさに43〜8兆円への倍増に腐心している最中ですが、達成されてしまったら最期。この先何年にも渡って残り続ける、負の遺産となってしまいます。
有権者は、今ある収入を手放せません。物が売れない時代、国が買ったり、補助してくれるとなれば、なおさらです。自衛隊とお付き合いがあるのは、「死の商人」と呼ばれる軍需産業だけではありません。町の縫製工場やお惣菜屋のおじちゃん、おばちゃんも、隊員の制服や食事を納入しているのです。
既にその収入レベルで生活し、家族を養っていれば、時給の100円も、月収の1万円も減らす訳にはいきません。ハイエクが「死の接吻」に喩えたような状況にあったとしても、彼らから生活を奪う訳には行きません。だから民衆は手強いのです。こう書いている僕自身も含めて。
個人的なことを打ち明ければ、現に僕が勤めている組織も政府から多額の補助金を支給されています。自分の給与の一部にはその補助金が流れてきているはずです。しかし前回「いくら還元されるのか?」と書いた通り、その正確な額は不明です。
消費税増税にサラリーマン増税。年々多額の税金をむしり取られるようになり、わずかな分け前をありがたく頂戴する──まるで、自分の肉を喰らいながら瘦せ衰えていく餓鬼になったような想いです。給与明細が目減りすればすぐに気付きますが、いつの間に徴収される税金は実に分かりにくい。
分かりにくいから、多く取られようが、少ない取り分を死守したくなるのです。皆ギリギリで働き、いっぱいいっぱいで生活しています。全体を考える暇もありませんし、その複雑に絡み合ったシステムを解体する余力もありません。投票先も変えられず、同じ政権が与党に居座り続けることになるのです。
そんなシステムの一つ、日本の防衛体制も今さら解体して無に帰することなどできません。これが護憲派、9条信者の愚かなところ。武力放棄を謳う平和国憲法を、文字通りに受け取るにはもう時が遅すぎます。でもそれを、「ドラゴンクエスト」に喩えてみたらどうでしょう?
シリーズ1作目のラストでは、長き冒険の果てに辿り着いたラスボス「竜王」から、悪の道への誘いを受けます。「はい」を選べばそこで画面はフリーズ、ゲームオーバーです。しかし逆に問いかけてみるのです。「わしとともに、せかいじゅうのひとをすくい、せいぎのヒーローにならぬか?」と。
確かに一番手強いラスボスは民衆です。でもそれは国民主権──我が国では国民こそが主役、ヒーローだからです。ならば自衛隊の「そうび」や「レベル」はそのままに、冒険の目的だけをすげ変えれば、僕たち民衆は新たに旅立てるはずなのです。国内だけでなく世界の主役、ヒーローになれる冒険に。
※最後までお読み頂きありがとうございます。この「地球防衛隊」全体の構想は最初の投稿「OEDO[0-0]地球防衛隊法案──概論」にまとめています。それ以降の章は、この章も含めて、その詳細を小分けして説明する内容になっております。
第一部[1-1]〜[1-9]では「戦争観のアップデート」について。第二部[2-1]〜[2-9]では「地球防衛隊の活動と効用」について。第三部[3-1]〜[3-9]では「予想される反論への返答」について。第四部[4-1]〜[4-9]では「地球防衛隊に至る思想的背景」についてを綴って行く予定です。
敢えて辛辣に、挑発的に書いている箇所もありますが、真剣に日本の未来を危惧し、明るいものに変えて行きたいとの願いで執筆に励んでいます。「スキ♡」「フォロー」や拡散のほど、お願いいたします。