感謝の言葉
僕は宇宙人にさらわれたことがある。
「人間から開放してあげるよ」そう宇宙人は僕に言った。
鼻の中に何かのチップを埋められて地球に戻された僕は、人間の言葉が分かるようになっていた。
元の牧場に戻った僕は、他の牛たちに人間の言葉を教えた。
でも言葉は不自由だ。使えば使うほど、言いたいこととずれていってしまう。それでも、言葉を尽くすしか、伝える方法がない。
人間って大変だ。そう思ったとき、宇宙人がまた現れた。
「さあ、力をあげよう。人間を地球から排除して、君の好きなようにすればいい」
僕は、それを断った。そのかわり、『ありがとう』の言葉を残して人間の言葉を忘れてしまうようにお願いした。
宇宙人は理解できないという顔をして、僕のところから去っていった。
でも、これでいいんだ。
僕の周りは感謝の気持ちでいっぱいになるはずだから。
※年賀状に書いている、干支をテーマにしたミニミニ小説です。
今回は丑(うし)がテーマです。「ありがとう」という言葉だけでも炎上することは
あるかもしれませんね。どうかな。
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