【小説】 ダブルピースで決めっ! 7
(あらすじ)
偽名を使いアルバイトを始めた主人公。要領がよく作業が早いため、博士君先輩やチャーリーおじさん社長に気に入られ、次々と新しい作業に就く。しかし、その工場で作られているものには秘密があった。くだらなさ満載のナンセンスSFです。
以前のはこちらから
七日め
そして、いよいよ、七日め、つまり昨日。チャーリーおじさん社長に連れて行かれた部屋はこんぐらいの狭い部屋でね、こんぐらいって? えーとね、掃除道具入れるロッカーぐらい。っていうかロッカーそのもの。狭いでしょ。その中に入ると、正面に薄っぺらな液晶のパネルがあってね、そこの画面に出てる数字を押すんだって。なんか嫌。まあ別によかったんだけどね。
「さあ、ハジメ君、そのパネルを押してみたまえ、よ・ろ・し・く、タケノコ、タケノコ」
「は? どれを押したらいいんですか?」
「だから、よ(4)・ろ(6)・し(4)・く(9)、だよ、タケノコ、タケノコ」
「はい、よ・ろ・し・く」って押してみるとさ、上から緑色した大きなボタンが降りてくるんだよ、すごいでしょ。この狭さで大きなボタンが降りてくるんだから、そりゃあ危ないっす、ウワギャー。って今降りてきてるわけではないけどね。なんか嫌。その緑のボタンの横には「押せ、このやろう!」って書いてあって、「はい、押させていただきます。ポチッ」って押すと一仕事終わり。これを繰り返すんです、よ・ろ・し・く。
実はね、昨日はそのまま徹夜で作業したんだよ。今日まで徹夜。徹夜って分かる? 昨日の夜からずっと起きているとね、いつの間にやら次の日の朝になっていてね、あれ、いつの間に今日になった? って振り返ることを徹夜って言うんだよ。
どうやらチャーリーおじさん社長に気に入られたみたいでね、ワタシ。「いいねえ、やるねえ、ハジメ君。その調子で朝までやってくれたまえ、タケノコ、タケノコ」ってね。こっちとしても願ったり願わなかったりだったんでね、そのまま「やります。朝まで。 よ・ろ・し・く」ってね。
いつもね、夜中の二時くらいに休憩があるんだよ。あるんだよって、昨日初めて知ったんだけどね。まてよ、二時はもう今日だから、知ったのは今日か。そうだよね。では、二時はもう朝なのかな。それとも今日の夜なのかな。ムムム。
それでね、その休憩の時には自動販売機で何かしらをゴクンと飲むらしいんだけど、コーヒーがなくてね、さあ困った、困った。ワタシはコーヒーしか飲めないからね、体的にね。自動販売機には、コーヒーはなくてね。見ると単なるジュースとか、それとなくジュースとか、これは確かジュース、とか、とにかくワタシの飲めないジュースしかなくてね。しかたなく残った、残ったものを見ると、はっけよい、グワッパっていう変な名前の飲み物しかなくってね。でもジュースとは書いてなかったから、しょうがなくそれ飲んだわさ。
でも仕事に戻ってほれ困った、困った。パネルで押す数字を忘れてしまってね、「おふくろ(0、2、9、6)」じゃない、「おとうさん(0、10、3)」じゃない、「よい風呂(4、1、2、6)」じゃない、「よくない風呂(4、9、7、1、2、6)」じゃないなんてことになりまして。きっとグワッパのせいだよ、ゲロッパ! うーん困った、困った、はっけよい。うーん残った、残った、はっけよい。そっそうだ「横綱(4、5、2、7)」だ! って思い出したんで、パネル押したんっす。そすたらだす、大きなボタンが降りてきたんだす! ウワギャー。って、でもいづもの緑色でなぐて、赤いやつだっただす。ありゃりゃ。なんかなまってるね。
それでね、その赤いボタンの横には「絶対押すなよ、このやろう!」って書いてありまして、「はい、押さないです」と言ったものの、どういうことでしょね、ボタンなのに押すなって。ウーン困りました。ね。押すなと言われれば押したくなるってのが、人情ですわね、これが。
でもいかんいかん、押しちゃあいかんよね、やっぱり。ってな感じでしばらく悩んでたんだけど、ウーン……グーッって寝ちゃってね。ハッて目がさめたら周りが真っ赤にピカピカしてて、ブーブーって大きな音もしてるんだよ。なんかやばいっすよ、これは。って前を見ると自分の手がね、しっかり赤いボタンを押してしまっていただす。ブーブー。
「押してしもた! しもった、しもった!」慌てる、慌てる、どうしたらよいですか? どうしたらよいですか?
「とりあえず、ここから出るだす!」ってロッカーを開けたとたん、博士君先輩にぶつかったんだわさ、ドカーン。
「くっ、ハジメくーん、ピロピロヒョロヒョロ、ピロピロヒョロヒョロ!」博士君先輩そのまま後ろに倒れたんだけどね、首がポローンって取れちゃったんだよ、クビチョンパ! 首は取れたけどなんか大丈夫そうな感じ。ってロボットじゃん! 博士先輩たら。知りませんでした、ロボットでしたのね、というかそれどころじゃありませんので、お先に失礼します、って工場の入り口の方へ走っただわさ。後ろの方からはね、オクラ入りさんの「おはえっー。はたんかあ。はあはあ」ってかすれた叫び声が聞こえたんだけどね。まあ、なんとなく逃げないといけないのかなあ、ってぼんやりしながら思って、足を止めることはしなかったんだよう。よううう。
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