スモーク退団にみる巨人の外国人野手補強の転換期
今月17日、巨人の新外国人、ジャスティン・スモークの電撃退団が報じられました。
退団の理由は、報道によるところ端的に言えば、「新型コロナウイルスの影響により、希望していた家族との来日が叶わず、精神的に大きなストレスを抱えていたから」とのこと。
これに対する一般的な見解としては、概ね以下の2つに大分されると思います。
①コロナの影響は来日前から想定し得る範囲内であり、異国の地とはいえせめて今季オフまで家族と会えないことは堪えて欲しかった。事前にというわけではなく、退団までの動きが突発的でスマートではなく、首位猛追を図るチームに大きな負の影響を与えている。
②初めての異国の地での生活。家族との離れ離れに加え、コロナ禍で行動も制限されるストレスは、文化の違いを含め、当人の立場でしか判り得ない部分があるはず。この精神的な影響かは分からないが、交流戦で状態を落とした(交流戦最終ロッテとのカードでやや復調気配ではあったが)ので、今のメンタルコンディションまま後半戦を迎えることは、チームにとってもプラスにはならなかったのでは。
ファンという第三者の立場からでは、スモークのメンタルコンディションの程度(うつ病状態だったのかも?)を計り知れないため、どちらが正解かを完全に白黒つけることは難しいと思っています。が、個人的には、①寄りの感情を持っています。
ここでは今回の問題を私の視点から捉え、巨人の外国人スカウティングの見直しの希望を改めて提言したいと思います。
まず、私の主張は一言で言って
「実績のあるベテラン依存からの脱却→NPBで適応できる中堅選手の目利きの向上」です。
この主張については、昨シーズンから再三ツイートしており、ベテラン大リーガーの獲得依存には否定的な意見を示していました。
理由としては、彼らに見られる、「アスリートとしてのキレの悪さ・ハイリスク」がどうにも目に付くからです。
この「アスリートとしてのキレの悪さ・ハイリスク」とは、以下の通りです。
1. 加齢によるフィジカルの劣化が避けられない
・フルシーズン戦うことは難しい稼働率の悪さ
・故障のリスクの高さ
・事前に予期せぬツールの劣化
2. ハングリー精神の弱さ
3. 必然的にコストが高い
この私が気になる3つの視点(リスク)で、ここ2年間の新外国人選手を振り返ってみました。
2020年 ヘラルド・パーラ
バッティングについて。右膝痛が悪化して離脱する8月の中日戦までは、アベレージと勝負強さを武器に、彼に期待できる範囲内では最大限の働きをしました。この右膝痛の影響があったのかもしれませんが、データ上は大きな異変が見られなかったディフェンスの劣化には、ガッカリと言わざるを得ませんでした。特に捕球の動きの悪さが不味く、自慢の強肩は披露しましたが、肝心の送球精度は悪かったため、送球のスピードコンテストというだけの状態でした。
2021年 エリク・テームズ
来日が遅れたものの、二軍で即適応→無双。その隆々たる屈強な肉体から放たれる威圧感を纏い、満を持して一軍デビューを果たしますが、左翼において数分で悶絶し出し今季絶望。
2021年 ジャスティン・スモーク
当てただけで外野の頭を越すようなパワーは、パーラにはなかった格を感じられたものの、特に走塁はYouTubeでもお話しした通り、プロのレベルにはあらず。守備も想定より動きが悪く、中島との差を如実に感じる場面が多々ありました。重量級タイプの選手といえばそれまでですが、プレイヤーとして見たときに、走攻守でモッサリしていてキレが感じられませんでした。打撃については十分に貢献していましたが、今巨人が必要とするタイプのバットマンではなかったと思っています。
また、家族を最優先し退団。彼自身、MLBでは加齢とともに下降線の一途を辿り、MLBで貰えないような高額オファーをもらえた日本でキャリアのラストを家族と過ごすことを決断。どうしてもNPBで成功をおさめたい年代の外国人選手とは、ハングリーさの面で差が出てしまった感は否めないように感じました。(ハングリーさについては完全に私感です。)
そもそも事の始まりは、由伸→原政権の1年目に、若返りを理由に入れ替えを試みたケーシー・マギー⇔クリスチャン・ビヤヌエバが大失敗に終わったこと。これが一つは尾を引いているのかもしれません。
一方で昨年の初夏頃から、今年の巨人の新外国人にはこの男しかいないと紹介し、多くの方から賛同を集め続けたヤクルトのホセ・オスーナ。そのパンチのあるシャープな打撃と勝負強さを武器に、従前の予想通りOPSこそ見栄えはしないものの、SBのグラシアルのような役割を十分に担っています。タイプ的にはこの選手が今の巨人が必要とするプレイヤーであり、その役割をやっぱり果たせる選手であったことがここまでは十分に証明されています。
第二第三の候補として名前をあげていた、ドミンゴ・サンタナも見栄えの良い数字は残しており、もう一人、先日オリックスへの新加入が決定し、今季3Aでさらなる進化を遂げたランヘル・ラベロのパフォーマンスにも注目したいところです。
今季はウィーラーが想定し得ないような大活躍を見せたおかげで、結果オーライで打線を象っていますが、外国人野手が3人とも34歳ベテランという編成そのものに方向性として大きな疑問を感じます。
オスーナやオースティンのようなMLBに定着しきれないながらも、NPBではアジャスト出来そうな、無駄のない滑らかでシャープなバッティングの型を持つ、健康体で動けるプレイヤーをどう発掘していくか。彼らのようなプレイヤーをベースに、経験値の豊富なベテランの大リーガーや、NPB経験者らを組み合わせて編成するバランス感覚。
このあたりが来季以降の外国人選手スカウティングの課題ではないでしょうか。
ps.
優勝に向け首位阪神を猛追するジャイアンツですが、私の今シーズンははやくも9割方は終了しました。最近の楽しみとしては、スライダーの制度・強度が覚醒したビエイラが、ドラミングをかましながら咆哮する最終回。残念ながら、ここまでの2〜3時間は手持ち無沙汰なわけで、非常に不憫な思いをしています。
来季こそはと期待しております。(追加補強を微かに期待)