2022年年間ベストアルバム
2022年の年間ベストアルバムを25枚選びました。アルバムとしましたがミックステープも入れています。全ての作品の個別レビューを書いてあるので、そちらもご覧ください。それぞれの作品から一曲ずつ収録したプレイリストも制作したので、あわせて是非。
25. Ella Mai「Heart On My Sleeve」
西海岸のシンガー。
1990~2000年代のR&Bを思わせる、メロウでロマンティックな作品です。ラッパーの客演も少し迎えてヒップホップ要素を導入しつつも、軸はあくまでもスウィートな歌なのでR&Bファンの方にはたまらないと思います。
Mustard印のメロウで軽快なビートにRoddy Ricchを迎えた「How」がハイライト。Ella Maiの堂々とした歌いっぷりと、Roddy Ricchのオフビート気味の歌フロウの絡みが素晴らしいです。
24. Wizkid「More Love, Less Ego」
ナイジェリアのシンガー。
メロウで落ち着いたムードに統一された、スウィートでスムースなアフロビーツ作品です。優しい歌心が沁みます。随所でログドラムも聴けるので、アマピアノ好きの方も是非。
プレイリストにはクリアなエレピやログドラムを使った「Bad To Me」を。コール&レスポンスも楽しいメロウでダンサブルな良曲です。
23. Megan Thee Stallion「Traumazine」
テキサスのラッパー。
メンフィスものっぽいハードなトラップと、テキサスマナーのメロウでファンキーな路線の二つを軸にしたような作品です。Pimp Cの影響を感じさせるスキルフルで柔軟なラップに唸らされます。
プレイリストに収録した「Her」は、ミニマルなベースと四つ打ちキックが印象的なハウス系の曲。キレのあるラップが堪能できます。
22. YoungBoy Never Broke Again「3800 Degrees」
ルイジアナのラッパー。
オフビート気味の詰め込みフロウや歌うようなフロウを、鬼渋ファンキー路線やバウンシーなビートで聴かせる作品です。アートワーク通りのルイジアナG色強めな仕上がり。
例の高音シンセや動くベースが効いたGセンス溢れる「Thug Nigga Story」がお気に入り。客演のE-40のトリッキーなラップも見事に噛み合っています。
21. dvsn「Working On My Karma」
カナダのR&Bデュオ。
Jermaine DupriとBryan-Michael Coxを多くの曲で共同プロデューサーに迎えた、ロマンティックなR&B作品です。モダンなヒップホップ要素とのバランスも絶妙。シルキーな歌声に終始ノックアウトされます。
美しいピアノと808が効いた「What's Up」がベストトラック。いかにもJagged Edgeが出てきそうなビートで本当に出てくるので、ファンの方は悶絶必至です。
20. Saba「Few Good Things」
シカゴのラッパー。
涼しげなギターの音を多用したオーガニックな路線が中心のサウンドで、落ち着いた声質で高速ラップやゆるい歌も織り交ぜるスキルフルなラップが楽しめる作品です。
艶やかなベースが目立つ「2012」をプレイリストには入れました。ヴァースでは一言一言噛み締めるようなラップ、フックでは力を入れて歌い上げるSabaのヴォーカル表現が圧巻。
19. Ari Lennox「age/sex/location」
DCのシンガー。
落ち着いたネオソウルを軸にしたサウンドで、巧みに力をコントロールするソウルフルな歌の魅力が味わえる作品です。時折2000年代のJermaine Dupri関連作を思わせるような南部ヒップホップ風味も感じられます。
生演奏と思しきベースやエレピが沁みるネオソウルの「Mean Mug」がハイライト。後半にはTheo Crokerによるトランペットソロも登場します。
18. DJ Killa K & Ice Billion Berg「Forever Live」
フロリダのDJとラッパーのタッグ作。
エモーショナルなトラップもありますが、フロリダのジューク(Jook)にカリブ海の要素をミックスしたような爽やかでダンサブルなスタイルが衝撃的な作品です。高めの声質の力強いサグなラップも強力。
ふうわりとしたシンセと跳ねるドラムが心地良い新型ジュークの「Sun Shinin」がお気に入り。女声シンガーが歌うフックも心地良い爽やかな曲です。
17. Drake「Honestly, Nevermind」
カナダのラッパー。
ほぼ全曲をハウスとジャージークラブに絞ったサウンドで、スムースな歌をメインに聴かせる作品です。全体的にDrakeらしいクールなムードが通っており、統一感のある良作に仕上がっています。
プレイリストにはジャージークラブの「Sticky」を収録。メロディアスではないラップらしいラップで挑んだ佳曲です。
16. Sabrina Claudio「Based On A Feeling」
フロリダのシンガー。
ネオソウルにベッドルームポップ的な密室感を加えたような雰囲気で、Mariah Careyから過剰さを抜いて繊細にしたようなシルキーな歌声の魅力が堪能できる快作です。
一曲選ぶとしたら、とろけるようなネオソウルの「Don't Make Me Wait」を。優しいピアノや美しいハープ、ストリングスと歌が最高に甘美に響く良曲です。
15. Sean Ardoin & Kreole Rock and Soul「Full Circle Feat. LSU Golden Band from Tigerland」
ルイジアナのザディコ系プロジェクト。
ルイジアナ州立大学のマーチングバンドとタッグを組み、ヒップホップ以降のザディコをさらに新しい形で聴かせるユニークな作品です。大人数のパワフルでエネルギー溢れる演奏が堪能できます。
Cupidをフィーチャーした「LSU CHANT SONG」がベストトラック。ザディコ成分はそこまで強くないマーチングバンド寄りのサウンドで、キレのある二人の歌が楽しめる好曲です。
14. Bushy B「Planet Blue」
フロリダのラッパー。
YoungBoy Never Broke Againあたりとの同時代性を備えつつ、それとは異なるカリブ海の匂いもするサウンドが印象的な良作です。レゲエ風味が入ったメロディアスなラップもビート選びと同様の魅力。
コリコリとしたギターが効いたトラップの「She Doesn't Want Me Around」がお気に入り。メロディや歌い方にアメリカのヒップホップの分脈から少し逸脱するような良さがあります。
13. Theo Croker「LOVE QUANTUM」
西海岸のトランペット奏者。
J DillaやThe Neptunesなどの影響を感じさせる、ヒップホップ色の強いジャズ作品です。多くの曲でラッパーやシンガーを迎えており、プロデューサーっぽいセンスが強く出た好作に仕上がっています。
プレイリストにはTeedra Moses客演の「LOVE THYSELF」を入れました。ループ感のあるベースや細かく刻むドラムを使ったビートメイカー的な作りで、ソウルフルな歌が映えた見事な曲です。
12. Vince Staples「RAMONA PARK BROKE MY HEART」
西海岸のラッパー。
Gファンクの要素もあるメロウで穏やかな質感のサウンドで、高めの声質でヌルリとしたクールなラップを聴かせる作品です。Dom Kennedyあたりの現行ウェッサイ好きの方も是非。
Ty Dolla $ignを迎えた「LEMONADE」がハイライト。「Boyz-N-The-Hood」ドラムやSuga Freeのネームドロップなど、ウェッサイ要素が次々と飛び出すスムースな曲です。
11. Lucky Daye「Candydrip」
ルイジアナのシンガー。
トラップ系のドラムなど現代的なセンスもありますが、あくまでもメロウ&ファンキーなR&Bとして作られたような作品です。スウィートでいてエグみもあるソウルフルな歌が堪能できます。
プレイリストには徐々に盛り上がっていくゴスペルっぽい匂いのする「Fuckin’ Sound」を。生演奏と思しきピアノやオルガンと歌の絡みが極上です。
10. EBK Jaaybo「Rrari 4Eva」
ベイのラッパー。
Keak Da Sneakタイプのダミ声でオフビート気味のラップを、哀愁メロウも奇怪なバンギンで聴かせる怪作です。オヤGの方にも少し変わったヒップホップが聴きたい方にもおすすめできます。
切ないギターや早回しされた歌のサンプリングが効いた哀愁系の「Thinking of Someone Else」がベストトラック。悲しげにフックを歌うBankroll Raedoeも素晴らしいです。
9. Metro Boomin「HEROES & VILLAINS」
アトランタのプロデューサー。
ダークな路線やソウルフルなものなど、充実したビートの数々に狙いを絞った客演を迎えた良作です。ビートスイッチや短いインタールード的なものが入っていることも多く、そのビートの魅力が曲数以上に味わえます。
プレイリストに入れたのは、The Weekndと21 Savageを招いた「Creepin'」。Mario Winans「I Don't Wanna Know」を下敷きにした、ダークで未来感のあるR&B路線の佳曲です。
8. The Harlem Gospel Travelers「Look Up!」
NYのゴスペルグループ。
50~60年代のゴスペルを現代のセンスで蘇らせたような、ヴィンテージ感のあるオーガニックな作品です。熱気溢れるソウルフルな集団ヴォーカルの旨味が詰まっています。
ギターやオルガンが跳ねるように突き進む「I'm Grateful」がお気に入り。特に終盤の熱気が圧巻の曲です。
7. Johan Lenox「WDYWTBWYGU」
マサチューセッツのプロデューサー兼シンガー。
クラシックの素養を感じさせる丁寧で重厚なストリングスに、トラップの要素がマッドに調和した作品です。エモーショナルでラップっぽいニュアンスも備えた歌も強力。
重厚なストリングスと遠くで鳴っているようなドラムが効いた「No One Gets Me」がハイライト。ピアノと共に入る客演のRMRのヴァースが凄まじいです。
6. P-Lo「STUNNA」
ベイのラッパー兼プロデューサー。
ラチェットやハイフィをベースにしつつも、声ネタのループやスクラッチを多用して新たな境地を開拓したようなユニークな作品です。高めの声質でToo $hortタイプの軽妙なラップも楽しく聴けます。
プレイリストにはKamaiyahをフィーチャーした「My Bitch」を入れました。歌声をフリーキーにチョップして軽快な808を合わせ、さらにメロウなシンセも使って味付けした良曲です。
5. Babyface Ray「FACE」
デトロイトのラッパー。
現行ミシガンらしいバンギンや哀愁メロウといったGなものが中心のサウンドで、The Jackaを思わせるフラフラとした泣きのラップが堪能できる作品です。トラップ路線も巧みにこなしています。
例の高音シンセやブヨブヨのシンセベースを使った哀愁系の「Mob」がベストトラック。オヤGの方はソファに泣き崩れると思います。
4. Big K.R.I.T.「Digital Roses Don’t Die」
ミシシッピのラッパー兼プロデューサー。
UGKやOutkastなどの南部の先人から継承したオーガニックな路線を継続しつつ、さらにもう一歩ジャズやソウルに接近したような快作です。キレのあるラップとソウルフルな歌も円熟の域。
歌心とラッパーらしさのバランスが見事な「Wet Lashes & Shot Glasses」がお気に入り。生演奏らしきストリングスやベースが活きたソウルフル路線から、2ndヴァースで一気にトラップ化する展開が素晴らしいです。
3. Ralfy the Plug「Pastor Ralfy 2」
西海岸のラッパー。
低めの声質で囁くようなオフビート気味のラップを、冷たい質感のシリアスなサウンドで聴かせる作品です。バンギンもありますが、哀愁系の曲が充実しています。
プレイリストには美しいループにダーティなドラムを合わせた哀愁曲の「The Truth Hurts」を収録。現行ウェッサイ印の良曲です。
2. CMG The Label「Gangsta Art」
メンフィスのレーベル。
メンフィスらしいトラップをメインに据え、メロウ路線も少し交えた現代のG作品です。Gのコンピレーション特有のアクの強さとごった煮感を、現行メインストリームのスタイルでアップデートしたような感触があります。
ストリングスが印象的なメンフィス印のハードなトラップの「Steppers」がハイライト。Yo GottiやMozzyなど全員が強力なラップを披露していますが、特に42 Duggの高音で鬼気迫るラップが圧巻です。
1. EDF「Port of Houston」
テキサスのラッパー。
Screwed Up Click周辺っぽいイナタいメロウネスに満ちたテキサスGの傑作です。リラックスした柔らかなラップもサウンドに完璧に溶け込んでおり、濃厚なGセンスが味わえます。
スムースメロウの「Westheimer Superstar」がベストトラック。浮遊感のあるシンセや泣きのピアノ、例の高音シンセが効いた極上曲です。
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