2023年年間ベストアルバム
2023年の年間ベストアルバムを25枚選びました。アルバムとしましたがミックステープも入れています。全ての作品の個別レビューを書いてあるので、そちらもご覧ください。それぞれの作品から一曲ずつ収録したプレイリストも制作したので、あわせて是非。
25. Brandee Younger「Brand New Life」
NYのハープ奏者。
ヒップホップ的ニュアンスもたびたび導入したグルーヴで、スピリチュアルなハープが堪能できるジャズ作品です。プロデュースはMakaya McCravenが担当しています。
プレイリストにはブーンバップマナーのガツンとしたタイトなドラムが効いた「Livin' And Lovin' In My Own Way」を収録。Pete Rockのスクラッチも聴けます。
24. Zubin「Hospital Garden」
フィリーのラッパー。
美しい声で繊細かつエモーショナルに歌い上げるラップを、ギターやピアノの音を多用したエモラップ系のものが中心のサウンドで聴かせる作品です。オルタナティヴR&B好きの方も是非。
切ない響きのギターにトラップマナーの808を合わせたエモラップの「I.C.U」がハイライト。客演のDrippin So Prettyのルーズな歌フロウもZubinとは違った良さがあります。
23. SSRICHH33「Richie Richh」
ベイのラッパー。
跳ねるようなリズムとダーティな低音が効いた奇怪成分強めなビートを、ダミ声でオフビート気味のラップで乗りこなしていく作品です。メロウな曲でもかなり癖が強い強烈な仕上がり。
切ないシンセや早回しの歌声サンプリングを使ったビートで、荒々しいラップを聴かせるエモーショナルな「Trisha Patterson」がベストトラック。Wopdellのずっこけそうなほど暑苦しいラップもインパクト大です。
22. Oddisee「To What End」
DCのラッパー兼プロデューサー。
ヒップホップ経由のファンクやソウルにラップを乗せたような曲が目立つ、オーガニックでソウルフルな作品です。堅実なスタイルのラップもしっかりとした実力があります。
ジャジーなベースやドラムが印象的な非ヒップホップ寄りのサウンドに、Freewayのパワフルなラップを迎えた「Ghetto to Meadow」がお気に入り。声を加工したラップのフックも楽しく聴けます。
21. Key Glock「Glockoma 2」
メンフィスのラッパー。
ギターやヴォーカルのサンプリングなどを多用した、メンフィスのダークではない部分が目立つ重厚なトラップ作品です。ノーフィーチャーでメンフィス印のイナタいラップの魅力が堪能できます。
プレイリストには、Jeezyなど2000年代トラップに近いムードの勇壮なホーンが効いた「Fuck A Feature」を収録。クールでいて時折熱を覗かせるラップが素晴らしい曲です。
20. Trippie Redd「A Love Letter To You 5」
オハイオのラッパー。
R&B要素の強い柔らかでメロウなものを中心に据えたサウンドで、歌心のあるエモーショナルなラップが堪能できる作品です。ブーンバップ的な路線やメロディアスではないアプローチも見事。
煌びやかなシンセと太めのドラムが目立つ、1990年代の西海岸Gに入っていそうなメロウな「Took My Breath Away」がハイライト。後半での2Pac化にG好きの方はニヤリとするはず。
19. Fingazz「Classics IV」
西海岸のトークボクサー兼プロデューサー。
Gファンクを経由した、メロウで爽やかなブギー仕様の名曲カヴァー集です。極上のサウンドとねっとりとしたトークボックスのコンビネーションに、オヤGの方は悶絶必至。
Michael McDonaldの名曲を縁のある別曲のフレーズも入れてカヴァーした「I Keep Forgettin'」がベストトラック。メロウなエレピや小気味良いクラビネットが効いた、Gファンク色の強い仕上がりです。
18. Young Nudy「Gumbo」
アトランタのラッパー。
ゆるさと緊張感のある太い声質のラップを、プラグ系のメロウな路線やファンキーなベースを用いたものが目立つトラップ系譜のビートで聴かせる作品です。どことなく西海岸Gっぽい要素も感じられます。
COUPEが手掛けたメロウ路線の「Passion Fruit」がお気に入り。とろけるようなエレピや例の高音シンセを用いた、Gとプラグの中間のような曲です。
17. Naomi Sharon「Obsidian」
オランダのシンガー。
オルタナティヴR&B系の浮遊感のあるものやハウス風味、飾らないソウル路線などを聴かせるR&B作品です。Sadeを思わせる低めでディープ、ソウルフルで包容力のある歌声の魅力が堪能できます。
プレイリストにはNineteen85も関わった「Push」を入れました。フックではログドラムも聞こえてくる、アフロビーツ影響下にあるクールな曲です。
16. TisaKorean「Let Me Update My Status」
テキサスのラッパー兼プロデューサー。
2000年代ダンスヒット系を2010年代トラップ以降の感覚で再構築したようなサウンドで、ルーズでイナタいラップを聴かせる作品です。怪曲のオンパレードなので、少し変わったヒップホップを聴きたい方は是非。
「ユー!」とどこかで聴いたアドリブを繰り返す「hOw yOu gOnE Do dAt.mP3」がハイライト。ビートもかなりそれっぽく、スティールパンやミニマルなシンセが目立つダンサブルな曲です。わかる方にはわかるはず。
15. DJ Green Lantern「Jazz Dream」
NYのDJ兼プロデューサー。
ジャズ色がかなり強いインスト中心の洗練された作品です。しかし根っこはヒップホップなので、ジャズミュージシャンの作品とはまた違った魅力があります。
ヒップホップクラシックのカヴァー的な「Step Into A World Pt. 1」がベストトラック。ジャジーで緻密なサウンドに乗り、MoonchildのAmber Navranが例のフレーズを歌い上げる良曲です。
14. DJ.Fresh「The Tonite Show」
ベイのプロデューサー。
メロウネスを全開にしたGなサウンドに、ベイ勢を中心としたラッパーやシンガーを迎えたプロデューサーアルバムです。ラチェット風味や少しブーンバップ的な要素もある曲も自然に楽しめます。
「Boyz-N-The-Hood」ドラムも聞こえるスムースなビートに、Paul Wallらテキサス勢を迎えた「Boss Talk」がお気に入り。フックのトークボックスに悶絶必至です。
13. Chip Tha Ripper「The Charles Worth LP」
オハイオのラッパー。
太く低めの声質でゆるさも備えた柔らかいラップが、メロウで落ち着いたものが中心のサウンドで楽しめる作品です。ゴスペル的な要素やThree 6 Mafia系の変化球も良いスパイスになっています。
プレイリストにはDeJ Loafを招いた「Gotta Believe」を。繊細なドラムが光る哀愁漂うメロウなビートで、フックではゆるい歌も交えてラップした佳曲です。
12. Doughboy Sauce & Fred On Em「Holdin」
テキサスのラッパーとプロデューサーのタッグ作。
トラップ要素もありますが、かなりScrewed Up Click的なテキサスG色の強いメロウ&ソウルフルな作品です。J-Dawgのようなダイナミックなラップやゆるい歌を聴かせるDoughboy Sauceのスタイルもテキサス印。
メロウなエレピを使った哀愁路線の「Come Thru」がハイライト。ドラムの手数は多いですが低音の圧はそこまで強くなく、Gセンスの方が目立っています。
11. Kassa Overall「ANIMALS」
NYのプロデューサー兼ラッパー、ドラマー。
一聴するとかなりヒップホップ寄りのようですが同時にしっかりとジャズで、聴いているうちにそのバランスが逆転し続けるようなユニークな作品です。妙にクラウドラップ周りの客演陣が多いことも印象的。
Francis and the Lightsの優しい歌を挟み、Lil BとShabazz Palacesがマイクリレーを聴かせる「Going Up」がベストトラック。暖かいサックスやストリングスが沁みます。
10. Lil Yachty「Let's Start Here.」
アトランタのラッパー。
ドリーミーで甘いインディロックに的を絞ったようで、ヒップホップやファンクの要素も感じられる意欲作です。ゆるい歌寄りのアプローチも多いですが、ラップらしいラップをした曲もあり。やはり「ラッパー」の作品です。
Mac DeMarcoがプロデュースやベース等で参加した「drive ME crazy!」がお気に入り。エレガントなストリングスの使い方も巧みで、少しソウルの匂いもします。
9. October London「The Rebirth of Marvin」
西海岸のシンガー。
タイトル通りのMarvin Gaye愛が詰まった、徹底的に1970年代っぽい空気に染まったソウル作品です。主役の歌声もソウルフルでシルキー、情熱的な極上モノ。ソウル好きの方にはたまらないと思います。
プレイリストにはちょっとヒップホップっぽいドラムを使った「Rollercoaster」を収録。フックでの歌の譜割りも三連フロウで、1970年代マナーながらモダンな要素もあります。
8. Don Toliver「Love Sick」
テキサスのラッパー。
スペイシーなムードや穏やかでR&B要素のあるものを取り入れたサウンドで、ソウルフルに歌うラップが堪能できる作品です。随所でテキサスらしい味も覗かせます。
サイバーな響きのシンセが効いたビートに、Lil DurkとGloRillaを招いた「Leave The Club」がハイライト。三人のラップに旬の煌めきが詰まっています。
7. Jamma-Dee「Perceptions」
西海岸のプロデューサー。
1990年代のメインストリームR&Bのような、ロマンティックでメロウな質感の作品です。基本はインストヒップホップですが、ハウス風味やシンガーやラッパーが客演した曲もあり。
ちょっとレゲトンっぽくもあるドラムパターンの「Silly」がベストトラック。甘酸っぱいシンセやコーラスを用いたメロウな音使いが、ダンサブルなグルーヴで運ばれてくる心地良い曲です。
6. Asake「Work of Art」
ナイジェリアのシンガー。
穏やかでオーガニックな質感のものに、ログドラムをガンガン突っ込んだようなビートが目立つ強烈な作品です。高めの声質でフラフラとした歌い方や、コーラスを多用した作りも印象的。
シェイカーやログドラムを用いた、タイトル通りアマピアノ寄りの「Amapiano」がお気に入り。50 Centを思わせるOlamideのヴァースも素晴らしいです。
5. Le$「Bigger in Texas」
テキサスのラッパー。
イナタくブルージーなテキサスマナーのラップを、ソウルフル&メロウな路線が中心のサウンドで聴かせる作品です。テキサスGマナーがたっぷりと堪能できるので、オヤGの方は是非。
プレイリストにはKilla Kyleonをフィーチャーした「Candy Blue」を入れました。例の高音シンセやブヨブヨのベースが心地良いテキサス流Gファンクです。フックはテキサスGクラシックの声ネタまんま使い。
4. Killer Mike「MICHAEL」
アトランタのラッパー。
ソウルやゴスペルのフレイバーが充満する、濃厚な南部ヒップホップアルバムです。生演奏も多く導入したサウンドはまさに2023年のDungeon Family作品。主役の力強く柔軟でスキルフルなラップにも凄味があります。
エレクトロニックで刺激的ながらソウルフルな「SCIENTISTS & ENGENEERS」がハイライト。客演のAndré 3000もフルートではなくキレキレのラップを披露しています。
3. McKinley Dixon「Beloved! Paradise! Jazz!?」
ヴァージニアのラッパー兼プロデューサー。
全体的にかなりバンド的なグルーヴが目立つ、暖かく洗練されたジャジー&ソウルフルな作品です。少し高めの声質で濁らせたような発声をするラップの切れ味も抜群。
フルートやパワフルなドラムを用いた1970年代ソウル的な質感の「Run, Run, Run」がベストトラック。ソウルフルな歌フックも完璧です。
2. Jesse Boykins III「New Growth」
NYのシンガー。
繊細で漂うような美しくソウルフルな歌声が、エッジーでいて伝統的な匂いもするサウンドで楽しめる作品です。エレクトロニックで先鋭的な音と、オーガニックで普遍的な音が自然に共存しています。
浮遊感のあるオルタナティヴR&Bの「Honestly, I’m a Threat」がお気に入り。声ネタ(?)のループやふうわりとしたシンセが印象的な美しい曲です。
1. Larry June & Cardo「The Night Shift」
ベイのラッパーとミネソタのプロデューサーのタッグ作。
Cardoらしいメロウでスムースなものを中心にしつつ、Three 6 Mafiaを思わせるソウルフル路線も交えた作品です。Larry Juneの飄々とした低音で歌心のあるラップとも抜群の相性。G好きの方は必聴です。
プレイリストには極上メロウの「The Good Kind」を。浮遊感のあるウワモノやファンキーなベース、例の高音シンセに完全にノックアウトされます。
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