ビートメイカーによるコミュニティ運営の可能性:CRAMインタビュー【サウンドパックとヒップホップ 第8回】
私が「サウンドパックとヒップホップ」と「極上ビートのレシピ」の連載を行っていたメディア「Soundmain Blog」のサービス終了に伴い、過去記事を転載します。こちらは2022年5月10日掲載の「サウンドパックとヒップホップ」の第8回です。
Bandcampのサブスクライブ機能を活用してコミュニティを運営するCRAM
前回はサウンドパックを使ったセッションについて紹介した。一人で行う孤独な作業としての側面が強いビートメイクだが、インターネットを上手く使えば世界中とつながることができる。The Kountなどの活動は、一人だけど一人じゃない、コミュニケーションを取りながら制作する新しいビートメイクのあり方を感じさせるものだった。
(ここに前回リンク)
そして日本でも、コミュニケーションを取りながらユニークな試みを行うビートメイカーがいた。今回はドラムキットの提供のほか、Bandcampのサブスクライブ機能を活用したビートメイカーのコミュニティ運営も行うCRAMにインタビューを行った。
有益な情報だけではなくビートメイカー同士の交流も促進
福岡出身でカナダを経由し、現在は東京を拠点に活動するCRAM。これまでにCDやストリーミングサービスなどでのリリースも行っているが、現在注力しているのはBandcampだ。
膨大な数の作品をリリースしているだけではなくドラムキットも配布・販売し、そしてサブスクライブ機能を使ってビートメイクにまつわる知識やテクニックを話すポッドキャストも配信。サブスクライブ会員限定のDiscordサーバーでの情報共有も行っている。
現在は約70人の会員がいるとのこと。初心者から10年以上ビートを作ってきたベテランまで、幅広いビートメイカーが集まっているという。作風も様々なスタイルの人がいるそうだ。
Discordでは、アカペラやドラムキットなどの情報を共有するチャンネルのほか、コミュニケーションを目的としたチャンネルも作っている。「有益な情報ばかりじゃなくて楽しめるように」という思いからこういったチャンネルを運営しているそうだ。このビートメイクの知識・技術の共有は好評で、情報を受け取ったビートメイカーからメッセージが届くこともあるという。
情報やテクニックの共有でレベルアップを
今年の1月に始めたばかりだというDiscord運営だが、先日さらに新しい試みとしてコミュニティ内でのビートバトルも行った。
ビートバトルに参加したビートメイカーが、Discordでそのエントリーしたビートの制作手順やテクニックを共有することもあったそうだ。Bandcampのサブスクライブ機能を軸にこのように様々な取り組みを行うCRAMだが、そのほかにも匿名で質問を送るサービスの「質問箱」も活用して、ビートメイクに関する悩みに真摯に答えている。そして、その質問箱からポッドキャストの着想を得ることもあるという。
とその苦労を話しつつも、
とその取り組みに対する熱意を覗かせていた。
そしてその共有の精神はドラムキットにもつながっている。CRAMはBandcampで「Evil Cram Drum Kit」と題した3つのドラムキットを配布・販売しており、現在高知で活動するビートメイカーのmatatabiとのタッグでリリースした最新アルバム『LOOPER』で使ったドラムのドラムキットもmatatabiのサイト「痛快!またたび商店」で販売している(※2024年現在では停止)。
ドラムキット用に音を作るのではなく、『LOOPER』のドラムキットのように作品で使ったドラムをそのまま入れているそうだ。
Twitterでメンションをもらって、自分のドラムキットを使って作ったビートを聴いたこともあるという。
と、ドラムキットをリリースすることの面白さを語ってくれた。
ドラムキットの魅力とバーンアウト対策
CRAMは自身でドラムキットをリリースするだけではなく、他のビートメイカーが作ったものを使うこともあるという。ドラムキット導入の魅力についても聞いた。
お気に入りのドラムキットについて聞くと、
・Tuamieのドラムキットは、下記Linktreeページから購入することができる。
との答えが。TuamieはCRAMにとっての「史上最高のビートメイカー」の一人で、CRAMはそういった好きなビートメイカーの名前からドラムキットを探すそうだ。
ディグの新たな形を思わせるエピソードだ。そうして集めた素材やサンプリングソースを使って、Bandcampに並んでいる膨大なカタログを生み出しているCRAM。「一個のドラムキットでアルバムを3つ作れる」という言葉もあったが、そのペースはある程度抑えているという。
ペースを抑制してモチベーションを一定に保ちつつ、コミュニティの運営などで他者との交流で刺激を受けながらビートを作り続けるCRAM。今回のインタビューでは、そのほかにもビートメイクへの姿勢やテクニックなど様々なことを話してくれた(筆者のnoteにて公開中)。
そのビートへの熱が支えるコミュニティは、ビートメイカーなら誰しも得るものがあるだろう。
CRAM プロフィール
福岡県出身のトラックメイカー/プロデューサー。
10代より地元・福岡をベースにDJとして活動。メリーランドのラッパー、Dexter Fizzとの ジョイントでのアルバム・リリースや、移住したカナダ・トロントでの活動を経て、帰国後はILLSUGIとのコラボ作のリリースやISSUGI作品への参加も話題に。新世代ビート・シーンを代表するアーティストのひとり。
Twitter:@cram_moevius
Soundcloud:https://soundcloud.com/cram-2
Bandcamp: https://cramscram.bandcamp.com/
Spotify:https://open.spotify.com/artist/2kuzzESZpVYXEbJPF1o82D
Apple Music:https://music.apple.com/jp/artist/cram/
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