2021年に紹介しきれなかった作品
2021年に紹介しきれなかった作品をまとめて紹介します。
All Hail Y.T.「Player Made」
デラウェアのラッパー。
東京のプロデューサーのCedar Law$が全曲を制作した実質的なタッグ作です。少しイナタい柔軟なラップが、80年代R&B的な煌びやかなネタをブーンバップの文脈で用いたビートで楽しめる好作に仕上がっています。
ヴェイパーウェイヴっぽい匂いもするレイドバックしたビートにJay Worthyを迎えた「St. Ides On Sunday」がハイライト。
Autumn Fruit & Genef「Mahabaubi」
UK出身のシンガー、Autumnを中心とするプロジェクトと愛知出身のビートメイカーのタッグ作。
エレクトロニカやトラップなど多彩な要素を感じさせるドロッとしたビートと、東洋的な匂いも漂うスピリチュアルな雰囲気の歌が絡むユニークな作品です。東京エスムジカに現代の感覚を注入したような味わい。
三連フロウやスネアの連打といった現行トラップ的な要素を巧みに取り入れた「Abuku」がベストトラック。
Babymaru「In my brain」
大阪のシンガー兼ビートメイカー。
トラップ系のドラムやラップのような歌い方など、ヒップホップ要素を自然に吸収したキュートなポップ作品です。一曲を除く全てを自作したビートも充実しています。
ボサノヴァとトラップを足したような「Princess」がお気に入り。
Bruno Mars, Anderson .Paak & Silk Sonic「An Evening With Silk Sonic」
ハワイのシンガーと西海岸のラッパーのユニット。
美しいストリングスが光るスウィートソウルやタイトなファンクといったオーガニックなサウンドで、ヒップホップを通過した歌やラップが絡む怪作です。一聴するとレトロ志向のようですが異質。
日本人ヴィオラ奏者のYoshihiko Nakanoも参加。
BIGYUKI「Neon Chapter」
兵庫出身でNY在住のキーボード奏者。
Hudson Mohawkeなどのビートミュージックを思わせる、ハイファイでエッジーなジャズが楽しめる良作です。ラッパーの客演があるだけではなく、グルーヴ面でもヒップホップ要素があるのでヒップホップ好きの方も是非。
声ネタの連打が印象的なジューク風味の「LTWRK」がハイライト。
Cheque「Bravo」
ナイジェリアのシンガー。
ラップやレゲエのような匂いもするエモーショナルな歌を、アフロビーツやトラップなどで聴かせる作品です。Juice WRLDあたりのアメリカのヒップホップが好きな方にもおすすめ。
Olamideをフィーチャーしたリラックスしたアフロビーツの「LOML」がベストトラック。
CHIYORI × YAMAAN「Mystic High」
東京のシンガーとビートメイカーのタッグ作。
90年代メンフィスGの声ネタやドラムにアンビエントのシンセを合わせた、スピリチュアルな雰囲気のユニークな歌モノ作品です。時折ラップも織り交ぜるリラックスした歌もビートに見事に溶け込んでいます。
穏やかなシンセと不穏な声ネタのミスマッチが楽しい「水風呂」がお気に入り。
CRAM & matatabi「LOOPER」
東京のビートメイカーと高知のビートメイカーのスプリット作。
1~9曲目をCRAM、10~19曲目をmatatabiが制作した作品です。基本はブーンバップ系譜で統一感されていますが、硬派でシリアスなものも作るCRAMと、優しくメロウな作風が得意なmatatabiとそれぞれの違いも楽しめます。
インストがメインですが、CRAMサイドの「Messi」ではラッパーのDexter Fizzが参加。
Cuffboi「Replica1.0」
兵庫のラッパー。
高めの声質でエモーショナルに歌うようなラップを、エディットでガンガン切り刻んでいく強烈な作品です。ハイパーポップ的なエレクトロニックで圧の強いものが中心のビート選びも楽しく聴けます。
シーパンクのような味わいのシンセが効いた「VVV」がハイライト。
Disry「F'st DRIP」
愛媛のラッパー。
トラップや(UK)ドリル、Timbalandが作りそうなバウンシーなものなどで聴かせる全体的にNYっぽい空気の作品です。キレのある鋭角的なラップもビートと合っています。
T-STONEをフィーチャーしたダークなドリルの「No Cap」がベストトラック。
Don Toliver「Life of a DON」
テキサスのラッパー。
Big MoeやChalie Boyなどを思わせるテキサス印のソウルフルな歌フロウを、ダークで幻想的なトラップ系が中心のビートで聴かせる好作です。アウトロがやたら凝っていたり、生演奏を巧みに取り入れていたりと奥深い魅力も。
後半のシンセの動きが凄い「Double Standards」がお気に入り。いかにもテキサスっぽい声ネタの使い方にもニヤリとさせられます。
Gerardparman「No Going To EVOL」
福岡のビートメイカー。
穏やかでR&B風味の効いたメロウなヒップホップビートが楽しめる作品です。ジュークや(UK)ドリルの要素、トラップ系のドラムなども積極的に取り入れておりブーンバップ系譜のビートテープとは異なる魅力があります。
ラップの声ネタを巧みにサンプリングした「F R E A K」がハイライト。
hikaru yamada and metal casting jazz emsemble「moon」
千葉出身のサックス奏者兼ビートメイカー、hikaru yamadaを中心とするプロジェクト。
ジャジーヒップホップのインスト曲「moon (beat)」をもとにミュージシャンが他者の演奏を聴かずにセッションし、hikaru yamadaが編集してまとめ上げたユニークなジャズ作品です。どの曲にもどこか異物感があります。
セルフ全曲解説もあわせて是非。
Holy Hive「Holy Hive」
NYのソウルバンド。
フォーキー・ソウルにヒップホップ要素を取り入れたような、暖かくローファイな質感の作品です。程好い力の抜け方が心地良く、初期Mayer Hawthorneなどが好きな方におすすめ。
ゴツゴツしたドラムがゆるい空気を引き締めた「I Don't Envy Yesterday」がベストトラック。
Lil' Leise But Gold, KM「Sleepless 364」
東京のシンガーとプロデューサーのタッグ作。
メロウでトラップ要素も含んだ現行R&Bサウンドで、凛としたクールな歌を聴かせる佳作です。クリアでいてダーティな音像や意表を突く声ネタ使い、ビートスイッチなども絶妙。
ビートの展開の多さに反して妙にすっきりした印象の「Citrus」がお気に入り。
ninomiya tatsuki「4 million」
新潟のビートメイカー。
優しくメロウなブーンバップ系譜のインストヒップホップをベースに、エレクトロニカ風味も取り入れて捻りを加えた作品です。透き通るような美しい音像が沁みます。
とろけるようなエレピと例の高音シンセが印象的な「go blank」がハイライト。
OGGYWEST & soakubeats「永遠」
東京のラップデュオとビートメイカーのタッグ作。
soakubeats制作の寂しげでいてワイルドさも備えたトラップ/クラウドラップ系のビートに、メロディアスな88Lexuzと引っ掛かりのあるヤング・キュンのラップが映えた良作です。パンチラインも多く飛び出します。
なお、ストリーミング版とCD版で曲順が違います。私はCD版の方が好みなので、興味のある方は是非。
Rick Hyde「Plates II」
NYのラッパー。
Benny the ButcherとStyles Pを足したようなゴリっとした無骨なラップを、ハードボイルドなブーンバップで聴かせる良作です。随所でG-Unit的な香りも漂っています。
静岡のプロデューサー、Bohemia Lynchも一曲参加。
TERUSPRA「be strong」
兵庫のラッパー。
しなやかで人懐っこい魅力のあるラップを、硬質なトラップや暖かいブーンバップなどで聴かせる好作です。時折聴かせるメロディアスでゆるいアプローチも心地良いです。
EndyとTRASHを迎えたエモーショナルな「MAINTAIN」がベストトラック。
Toni Valli「Lead Water Baby」
ミシガンのラッパー。
名古屋のプロデューサー、Cloudy Beatzが半数となる5曲を手掛けた作品です。ピアノやブリブリのベースが効いたシリアスなビートで、抑えた迫力とゆるい魅力を持ったラップが楽しめます。
Cloudy Beatz制作の「Let You Eat」にはLil Yachtyをフィーチャーしています。
toulavi「プロセス」
新潟出身のビートメイカー。
ノイジーな音をふんだんに盛り込みつつも、美しくエモーショナルな魅力も備えたエレクトロニカ作品です。細かく刻むシンセや声ネタなどの使い方が印象的。
朗読(ラップ?)を刻んでリズミカルに配置した「自由律」がお気に入り。
YOSHIMARL & SKINNEE TAH「BREED TRUE」
大阪のビートメイカー二人のスプリット作。
不穏なものやメロウなものなど、適度な幅を持ったブーンバップが楽しめるインスト集です。全曲ドラムはしっかりと鳴っていますが、現行NYブーンバップ的なハードボイルドな魅力があります。
シリアスなギターとピアノを用いたSKINNEE TAHによる「IBUKI」がハイライト。
熊井吾郎「Diner」
東京のビートメイカー。
ヒップホップを軸にしつつ、ブギーやフューチャーベースなど多彩な音楽を吸収したインスト作品です。短いビートが次々と切り替わっていく構成はJ Dilla系譜の魅力。
ブギーっぽいシンセにヴォコーダーも使った「Hi」がベストトラック。
焦清水「焦清水」
東京のラップデュオ。
聞き取りやすくゆったりとしたHARD MOOD A KIDと、詰め込みフロウも巧みに使うD-SETOのラップが絡むダークで妖しいクラウドラップ系の作品です。全く異なるラップスタイルですが自然と馴染んでいます。
全曲をArigato Maneがプロデュース。
さとうもか「WOOLLY」
岡山のシンガー。
生演奏のバンドっぽい曲やヒップホップ要素を含む打ち込みを取り入れた曲など、多彩な路線で歌詞をしっかりと聴かせる歌モノ作品です。ラスト5曲の畳み掛けが非常に強力。
ヒップホップ好きの方にはR&B風味の「Love Buds」がおすすめです。
湯煙bee「KMSR-SADE」
熊本のビートメイカー。
タイトル通り全曲で某UKのバンドの曲をネタに使った作品です。メロウなブーンバップ系の曲が中心ですが、時折トラップ的な手数の多いドラムも巧みに取り入れています。
インストが中心ですが、ラップ曲のリミックスも収録。
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