おすすめ旧譜アルバムVol. 59: Paul Wall「The Peoples Champ」
旧譜紹介Vol. 59です。
今回紹介するのは、テキサスのラッパーのPaul Wallによる05年のアルバム「The Peoples Champ」です。
Paul Wallはテキサス出身のラッパーです。
90年代後半に登場。初期はChamillionaireとのデュオで活動し、02年にはデュオでアルバム「Get Ya Mind Correct」をリリースします。04年には初ソロアルバム「Chick Magnet」をリリース。その後Mike Jonesが04年にリリースしたヒット曲「Stilli Tippin'」に客演して注目を集め、05年にデュオでの最終作「Controversy Sells」に加えてソロで本作をリリース。本作はセールス的にも成功を収め、続く07年の2ndアルバム「Get Money, Stay True」もヒットし人気を獲得していきます。その後は09年に「Fast Life」、10年に「Heart of a Champion」をリリース。以降はメインストリームからは若干遠ざかりましたが、安定してアルバムやミックステープの発表を続けています。客演人気も非常に高いラッパーで、これまでに地元勢のほかにもKanye WestやDJ Khaledなどの作品に参加。近年では19年にStatik Selektahとのタッグ作「Give Thanks」をリリースするなど、さらに活動の幅を広げています。
太く低い声質でコクと安定感のあるフロウを繰り出す、非常にテキサスらしいラッパーです。サウンド的にはその時々のトレンドも汲んだり近年はブーンバップもやっていますが、南部色の強いメロウや重心の低いバウンスを得意としています。
本作は05年にリリースされたPaul Wallの代表作の一つです。「Chick Magnet」と被る曲やKanye Westへの客演曲も収録されていたりとラフな部分もありますが、テキサス流儀のヘヴィなバウンスやソウルフル路線などでそのラップが堪能できる快作に仕上がっています。
1. I'm a Playa Feat. Three 6 Mafia
DJ Paul & Juicy Jが制作&客演したメンフィスバウンス。
重厚なストリングスのループに手数の多いドラムを合わせたビートで、Three 6 Mafiaなりにテキサス流儀を解釈したような趣のある曲です。フックでのスクリュー声ネタループもキャッチー。
2. They Don't Know Feat. Mike Jones
勇壮なホーンとミニマルなシンセのループが効いた曲。
この時期のテキサスGらしい、Dr. Dre「2001」系ファンクの亜種のような曲です。Mike Jonesの軽快な高音ラップとも抜群の相性。
3. Ridin' Dirty Feat. Trey Songz
UGKがやりそうなテキサスメロウ。
オルガンとパシャパシャとしたドラムを使ったイナタいビートで、Trey SongzがPimp Cを意識したかのような粘っこい歌フックを添える好曲です。主役の安定感も流石。
4. State to State Feat. Freeway
Sanchez Holmesプロデュース。
高音でパワフルなラップを聴かせるFreewayとの対照的な絡みが楽しめる良曲です。重厚なホーンが目立つビートもラップとよく合っています。
5. So Many Diamonds Feat. T.I.
Khao制作のGrand Hustle人脈の曲。
ワウギターにビリビリとしたシンセを合わせたビートで、アトランタのトラップというよりMr. Leeのような味わいがあります。フックも担当するT.I.のしなやかなラップもばっちり。
7. Sittin' Sidewayz Feat. Big Pokey
Salih Williamsが手掛けた名曲。
癖の強いゴワゴワしたベースと幻想的なウワモノ、乾いたドラム・・・とビートの音使い全てが凄いです。Lil Kekeの声ネタをループしたフック、Big Pokey先生のドスの効いた低音ラップにもノックアウト必至。
9. Trill Feat. B.G. & Bun B
テキサス流儀のヘヴィなファンク。
ホーンやエレキギターが唸る鬼気迫るビートで、Bun Bの燻し銀ラップとB.G.のヌルリとしたラップとのマイクリレーを繰り広げる佳曲です。ラストに登場するB.G.の異物感に持って行かれます。
10. Sippin' Tha Barre
Mr. Leeプロデュース。
ファンキーなギターとビリビリした低音シンセが効いた、典型的なMr. Leeサウンドです。スクリュー声フックも安心の良さ。
11. Drive Slow (Kanye West Feat. Paul Wall & GLC)
Kanye Westの05年作「Late Registration」にも収録されている曲。
ピアノやサックスの響きが哀愁を醸し出し、乾いたドラムが引き締めた名曲です。GLCのコクのあるラップ、Kanye Westの軽いラップもばっちり。後半には低速化する展開も。
12. March N' Step Feat. Grit Boys & Lil Wayne
Grit BoysとありますがUniqueのみの登場。
No Limit作品に入っていそうな重厚なバウンス曲です。フックを担当したUniqueのズルズルした怪フロウも、Lil Wayneの妙にねっとりとしたヴァースも癖が強くて楽しく聴けます。
14. Girl
早回しサンプリングした歌フックが最高にキュートな曲。
キラキラしたウワモノが甘酸っぱい空気を出したビートで、Paul Wallの安定感のあるラップが光る好曲です。G好きの方にはもちろん、幅広い方におすすめできます。
17. Just Paul Wall
ソウルフルなポジティブ系哀愁路線。
煌びやかなギターが光る80年代ソウルっぽい雰囲気の良曲です。フックで絡む女性シンガーのCrystal Andersonの歌もばっちり。
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