サウンドパックを個性的に使うには? ビートメイカー・xngb2インタビュー【サウンドパックとヒップホップ 第4回】
私が「サウンドパックとヒップホップ」と「極上ビートのレシピ」の連載を行っていたメディア「Soundmain Blog」のサービス終了に伴い、過去記事を転載します。こちらは2022年2月1日掲載の「サウンドパックとヒップホップ」の第4回です。
気鋭のビートメイカー・xngb2が鳴らすサウンドの秘密を求めて
サウンドパックについてそう語るのは、奄美大島出身で現在は東京を拠点に活動するxngb2(ザンギビーツ)。人気プロデューサーのKMが審査員を務めるオンラインビートコンテスト「Roland presents KM BEAT CYPHER 2021 supported by OTAIRECORD」でも決勝の16人に名を残した気鋭のビートメイカーだ。
xngb2の音楽性は、ノイズやワブルベースといったヒップホップではあまり聞かないような音をJ Dilla系譜のよれたブーンバップの形に落とし込んだもの。福岡を拠点に活動するプロデューサーのOLIVE OILが率いるOIL WORKSから昨年末にリリースしたアルバム『One Sonido Apuesta』では、他ビートメイカーとの共作やラッパーの客演で他者のフレイバーも取り入れつつ、その情報量の多いユニークなスタイルを強烈に提示していた。その刺激的なビートはどうやって作られているのか。どのようにサウンドパックを使ったら人と被らない個性的な音を鳴らせるのか。「ヒップホップとサウンドパック」第4回では、そのビートのルーツとサウンドパックの活用方法についてxngb2にインタビューを行った。
「エグい音」使いはヒップホップ外のジャンルから
xngb2のヒップホップとの出会いは、意外にもフリースタイルバトルだったという。
と当時を振り返る。そして、そのラッパーとしての活動はビートメイクにも繋がっていった。
こうしてビートメイクを始めたxngb2だが、最初は現在とは異なる方向性だったという。
と語る。現在作っているビートにも、よれたグルーヴなどローファイ・ヒップホップ的なテクニックは使われている。だが、ローファイ・ヒップホップのリラックスした音像は現在鳴らしている音とは正反対のように思える。一体、何がきっかけで現在の作風に変化したのかを聞いた。
こうして現在の作風に転換していったxngb2。しかし、サウンドは大きく変化したが手法的にはローファイ・ヒップホップを作る時と同じくサンプリングがメインだという。
とその手法を話す。音の加工について聞くと、
と答えてくれた。ローファイ・ヒップホップをルーツに、THE MAD CAPSULE MARKETSのような「エグい音」を目指す。xngb2のユニークな作風は、そんな経歴が生み出したものだった。
日本のビートメイカーからの学び、島出身ならではの環境音のサンプリングも
xngb2に「史上最高のビートメイカー」を5人挙げてもらった。
xngb2の出身地である奄美大島の隣、徳之島出身のOLIVE OILからの影響は特に大きいという。
と影響を受けたポイントを話してくれた。また、サンプリングするネタの幅広さはCRAMから学んだそうだ。
また、ビートメイカー個人ではないが、かつて東京で行われていたビートメイクイベント「EN TOKYO」からの影響も大きかったという。 EN TOKYOは集まったビートメイカーたちが半日かけて中古レコードを買い漁り、その後すぐにビートメイクを行うというもの。先述したCRAMのほか、昨年CRAMとスプリットでビートテープ『LOOPERS』をリリースしていたmatatabi(同作で使用されたドラムを使ったドラムキットも販売中)、現在MimeやPEARL CENTERといったバンドでも活躍するTiMTらが参加していた。xngb2は
と、その存在の大きさを強調していた。現在は独自の方向性を突き進むxngb2だが、そのビートメイクの基礎となったのは日本のビートメイカーたちから影響だったのだ。
サウンドパックを使うと他人と被るかも? は「杞憂」
サンプリングによるビートメイクから出発したxngb2だが、一年ほど前からサウンドパックの使用を始めたという。人と同じ音になってしまうことを恐れてずっと使っていなかったそうだが、いざ使い始めてみたらそれは杞憂だったと話す。
中でも「Digital Murder」はサンプリングを一切使わず、サウンドパックの音とFL Studio標準のシンセを少し弾いて作ったという。xngb2は
と話す。人と被らない音を探し、それを加工して個性的なビートを生み出す。xngb2のサウンドパックの使い方からは、既存の楽曲からのサンプリングで名曲を生み出してきたビートメイカーたちと重なる部分が見えてくる。
普段使うことが多いサウンドパックについて聞くと、
との答えが。また、xngb2は制作だけではなくSP-555を使ったビートライブも行っており、
とその制作に留まらないサウンドパック活用方法を明かしてくれた。
サンプリングで得た経験を活かしてサウンドパックを使い、ほかのビートメイカーとは異なるアプローチでユニークなビートを生み出すxngb2。最後に、自身のサウンドパック制作など今後の予定を聞いた。
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