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2021年おすすめ新譜アルバムVol. 3: Kiddo Marv「Zoe Boy」

新譜アルバム紹介Vol. 3です。

今回紹介するのは、フロリダのラッパーのKiddo Marvがリリースした「Zoe Boy」です。

ジャケ

Kiddo Marvはフロリダを拠点に活動するラッパーです。

2010年代半ば頃に登場。15年には初のミックステープ「Dying 2 Live」、16年にはその続編「Dying 2 Live 2」を発表します。17年には「Kingz In Denial Don’t Overcome」、19年にはその続編「Kingz In Denial Don’t Overcome II」とその後も順調にリリース。20年には「Dirty Laundry」、「Unappreciated Blessing」と2枚の作品をリリースしています。また、Denzel CurryやIce Billion Bergなどの作品にも客演で参加しているほか、プロデューサーとしてCity Girlsなどの作品に参加。近年のフロリダ勢の作品を聴いていると名前を見ることの多いアーティストです。

野太い低めの声質で繰り出すメロディアスなフロウやド迫力のフロウを、ピアノやギターの音を好んで取り入れたトラップ系のサウンドで聴かせるKevin Gates系譜のアーティスト・・・のように一聴すると思えますが、歌い方にもギターの音色にもルーツであるハイチの音楽、ラシーンやコンパの影響が感じられるユニークな音楽性の持ち主です。ドラムパターンもいわゆるトラップ系のものだけではなく、カリブ海のリズムを取り入れている曲が多くあります。ヒップホップ好きの方はWyclef Jeanに現行フロリダのエッセンスを足したようなものをイメージすると良いと思います。

今作はエモーショナルでメロディアスな路線が中心で、ハイチの匂いがしっかりと感じられる傑作に仕上がっています。YoungBoy Never Broke Againなどの流れでも聴けるので、現行のソウルフルに歌うトラップ作品が好きな方も是非。


1. Zoe Boy

カリブ海のリズムを使った哀愁路線。

寂しげなピアノとストリングスが効いたサウンドで、穏やかに歌い上げる良曲です。いきなりハイライト。


2. Suicide

ピアノと歌のサンプリングを用いたシリアスな曲。

トラップ的なパターンながら乾いた鳴りのドラムも良いです。優しい歌い方のフックも印象に残ります。


4. All Em Feat. Major Nine & FCG Heem

ピアノやギターが美しく響くエモーショナルな曲。

歌の掛け合いにハイチの匂いが漂っています。客演二人もメロディアスなヴァースで好演。


5. Drilla Feat. Major Nine, Sam Sneak & FOB Pook

Sam Sneakの煽りを全編に渡ってフィーチャーしたバンガー。

凶悪な低音がボコボコと鳴る、ハイハット不使用のビートがユニークです。ここでのKiddo Marvはメロディアスではない武骨なラップを披露。


8. Toxicity Feat. FTH Mari

YoungBoy Never Broke Againがやりそうなエモーショナル路線。

美しいピアノと艶やかなベース、パシャパシャとした808が効いた好曲です。ハイチの香りがする歌フロウも抜群の冴え。


9. Rock Witchu

女性シンガーの歌をサンプリングした穏やかな曲。

カリブ海のリズムで鳴る808とラシンっぽいギターを使ったハイチ色の強いビートで、スムースで時に荒く歌フロウを聴かせる良曲です。エモーショナルな2ndヴァースがお気に入り。


12. My Blooda

優しい歌心が沁みる哀愁路線。

ラシーン的なギターがトラップのドラムと自然に溶け合ったビートに、力をコントロールして歌い上げるラップが絡む好曲です。サックスの音も完璧。

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