2021年年間ベストアルバム
2021年の年間ベストアルバムを25枚選びました。アルバムとしましたがEPも入れています。全ての作品の個別レビューを書いてあるので、そちらもご覧ください。それぞれの作品から一曲ずつ収録したプレイリストも制作したので、あわせて是非。
25. Benji. & Spillage Village「Smile, You're Alive!」
ピッツバーグのラッパー兼プロデューサー。
トラップやゴスペル、ロックなど多彩な要素を柔軟に取り入れた明るい雰囲気の快作です。随所で聴ける生演奏と思しきベースがポイント。ラップだけではなくソウルフルな歌を聴かせるスタイルにはAndre 3000の姿も重なります。
プレイリストに収録した「Black Satin」は、生演奏と思しき粘っこいファンク路線の曲です。ソウルフルで多幸感のあるフックが強力。ベースも最高に気持ち良いです。
24. Trippie Redd「Trip At Knight (Complete Edition)」
オハイオのラッパー。
エモーショナルで力強く歌心のあるラップを、ほぼ全曲レイジビートで聴かせる振り切った作品です。Playboi Cartiをフィーチャーした「Miss The Rage」は今年を代表する曲の一つと言えるでしょう。
プレイリストにはその「Miss The Rage」を収録。逆再生されたシンセが印象的なビートで、細かく千切るような怪フロウのPlayboi Cartiと絡む名曲です。
23. Dumpstaphunk「Where Do We Go From Here」
ルイジアナのファンクバンド。
唸りを上げるエレキギターやアーシーなオルガンも効いた、粘っこくもカラっとしたところのあるファンクを聴かせる作品です。ヘヴィな路線もタイトな路線もバランス良く楽しめます。
Pファンク的な歌い方とメロディが楽しい「Let's Get At It」がハイライト。ブヨブヨのベースやアーシーなオルガンにはG好きの方もニヤリとすると思います。
22. Tion Wayne「Green With Envy」
UKのラッパー。
太く低い声質でメロディアスなフロウも歯切れ良いフロウも使うラップを、アフロスウィングやドリルなどのUKマナーのビートで聴かせる好作です。ハードな路線もありますがメロウが充実しています。
このアルバムからは、シリアスな雰囲気のドリルビートに大勢のラッパーを迎えた「Body (Remix)」をピックアップ。アンセム感のある名曲です。
21. Jordan Hawkins「Heart Won't Stop」
ノースカロライナのシンガー。
ソウルフルでワクワクさせられるような歌声が、ヒップホップ要素を踏まえつつギターなどの生演奏を活かしたサウンドで楽しめる良作です。D'angeloなどが好きな方は是非。
歌とオルガンの絡みに悶絶必至の「Heart Won't Stop」がベストトラックです。後半に登場するトークボックスも美味。
20. Polyester the Saint「P-Legit : The Master Peace Album」
西海岸のラッパー兼プロデューサー。
シルキーなメロウが中心のGセンスが炸裂したサウンドがたまらない作品です。Ice CubeやToo $hortなどの影響を感じさせるラップもウェッサイマナーの魅力。
例の高音シンセと美しいピアノ、Diamond Ortizのトークボックス…とオヤG好みの要素が詰まった「Closer」がハイライト。Clyde Carsonのクールなラップも素晴らしいです。
19. Trae Tha Truth「48 Hours After」
テキサスのラッパー。
凄みのあるダミ声から繰り出す詰め込みフロウやゆるい歌を、ダークなものや哀愁路線などテキサスG印のサウンドで聴かせる好作です。声ネタフックの曲が多く、名曲「Swang」が好きな方にはたまらないと思います。
どの曲もGセンスに満ちていますが、テキサスG名曲オマージュの「June 27th」は特に強力。オヤGの方はソファに泣き崩れるはず。
18. Mereba「AZEB」
アトランタのシンガー。
オーガニックなフォーキー・ソウルを軸に、ヒップホップやアフロビーツの要素も取り入れた作品です。スピリチュアルな雰囲気の力みすぎない歌も魅力的。
アコースティックギターや艶やかなベースが効いたオーガニックなサウンドで、優しく包み込むように歌う「G(o)ld」がお気に入り。違う空間に引き込むようなフックも印象的です。
17. Terrace Martin「DRONES」
西海岸のプロデューサー。
ヒップホップにもR&Bにもジャズにも聞こえる、レイドバックしたメロウなサウンドが堪能できる快作です。BattlecatやDJ QuikといったウェッサイGの香りもします。
プレイリストには、メロウなエレピやブリブリのベースが効いた西海岸Gシットの「Drones」を収録しました。Kendrick LamarやSnoop Doggといった客演陣の贅沢な使い方が絶妙な良曲です。
16. Big Pokey「Sensei」
テキサスのラッパー。
どっしりとした低い声質でテキサスらしいコクのあるラップを、ソウルフルな哀愁路線中心で聴かせる燻し銀な作品です。オヤGの方はソファに泣き崩れるはず。
暖かいサックスやファンキーなベース、メロウなエレピが効いた哀愁曲の「Stacks」がベストトラック。スクリュー声ネタフックに悶絶必至です。
15. Marcus Machado「Aquarious Purple」
NYのギタリスト。
ヒップホップやネオソウルを軸にしつつ、Jimi Hendrixの影響を感じさせるファンキーで艶やかなギターを前面に出した快作です。シンガーやラッパーの客演も絶妙。
タイトルが全てを語ったような「Black Psychedelic Funk」がハイライトです。Jermaine HolmesによるD'angeloマナーの浮遊感のある歌とギターの絡みが極上。
14. Wiz Khalifa, Cardo & Sledgren「Wiz Got Wings」
ピッツバーグのラッパーとその周辺プロデューサー二人のコラボ作。
トラップを踏まえつつもメロウでGセンス溢れるものがメインのサウンドで、華とキレのあるラップとゆるい歌が堪能できる作品です。西海岸やテキサスあたりのGに通じる魅力があります。
このアルバムからは、とろけるようなメロウ路線の「Personal Party」を。トラップを通過したドラムも自然に溶け込んでいます。歌フックが極上。
13. Devin The Dude「Soulful Distance」
テキサスのラッパー。
脱力しきった極度にゆるいラップと歌が、ゆるいファンクを基本にしたサウンドで楽しめる好作です。トラップ的な音像に寄った曲も少々あり、シーンに若干歩み寄った印象もあります。
プレイリストに収録した「A Good Woman」は全編歌ものの曲です。生演奏と思しきドラムやベース、ホーンが印象的なバンドっぽい芳醇なグルーヴが堪能できます。
12. Hiatus Kaiyote「Mood Valiant」
オーストラリアのソウルバンド。
ソウルをベースにジャズやヒップホップ、ブラジル音楽など多彩な要素を吸収したハイブリッドな快作です。驚くようなアイデアの引き出しと緻密な演奏が素晴らしいです。繊細でいて野趣溢れる魅力。
ドラムの配置やフックでのシンセの入り方などに、どことなくダブステップっぽい匂いが漂う「Chivalry Is Not Dead」がお気に入り。ヴォーカルのNai Palmの歌ヂカラも圧巻です。
11. seeyousoon「HZLIKEHELL」
フロリダのコレクティヴ。
Death GripsとEDM期のBlack Eyed Peasを足したような、ダークでエッジーかつダンサブルなサウンドが楽しめる刺激的な作品です。エクスペリメンタルと軽薄さを見事に併せ持っています。
プレイリストには、地を這うようなベースやスクラッチ音で切断される冷たいシンセなどが印象的な「FIX YOUR FACE」を収録。キュイっと鳴るSE的なシンセもユニークです。
10. Larry June「Orange Print」
ベイのラッパー。
メロウでソウルフルなものを中心のサウンドで、低音でクールかつ飄々とラップし歌うスムースな作品です。G好きの方はもちろん、幅広いヒップホップが好き方におすすめ。
DJ Mr. Rogersプロデュースの「6am In Sausalito」がベストトラック。美しいピアノをトロトロな雰囲気で聴かせる極上のビートに、Larry Juneのラップスタイルが完璧に溶け込んでいます。
9. Charlotte Day Wilson「ALPHA」
カナダのシンガー。
暖かいソウルをベースにヒップホップやフォークを取り入れた、ネオソウルとオルタナティヴR&Bの中間のような良作です。時折Sadeを思わせる低めで深みのある歌が沁みます。低速化ヴォイスの使い方も見事。
プレイリストに収録した「If I Could」は、美しいメロディが骨太さも持ったフォーキーなサウンドで堪能できる好曲です。ラストにはプリズマイザーも使用。
8. Kiddo Marv「Zoe Boy」
フロリダのラッパー。
YoungBoy Never Broke Againなどのメロディックトラップと、ハイチ音楽をミックスしたようなユニークな作品です。Wyclef Jeanに現行フロリダヒップホップ要素を足したような魅力もあります。
ピアノと歌のサンプリングを用いたシリアスなトラップの「Suicide」がハイライト。優しい歌い方のフックも印象に残ります。
7. ALLBLACK「TY4FWM」
ベイのラッパー。
変則的でスキルフルなラップが、現行ベイらしいラチェットやメロウなどで楽しめる良作です。2Pac風のフロウや2Pacオマージュが散りばめられているので、オヤGの方も是非。
プレイリストには、Cal-Aとの連名でVince Staplesもフィーチャーした「We Straight」を収録しました。ベースが目立つ現行ウェッサイ流儀のエモーショナルな曲です。
6. Durand Jones & The Indications「Private Space」
インディアナのソウルバンド。
スウィート路線やダンサブルなものなど、70年代風のソウルを軸にしつつも適度な幅を持たせた快作です。力強い歌声のDurand Jones、甘い歌声のAaron Frazerと異なる魅力を持つヴォーカル二人の歌が堪能できます。
ジャージークラブ的なリズムで跳ねるベースが印象的な「Witchoo」がお気に入り。フックでの二人の掛け合いも楽しく聴けます。
5. Isaiah Rashad「The House Is Burning」
テネシーのラッパー。
低めの声質でクールなフロウも崩したフロウもこなすスキルフルなラップを、UGKやThree 6 Mafiaなどの南部G要素をTDEサウンドに注入したような路線で聴かせる作品です。随所で見せる南部G愛にニヤリとさせられます。
プレイリストに収録した「RIP Young」は、Project Patの声ネタを使ったメロウな佳曲です。低速化した「アイセーイ」のフレーズにはMike Jonesも想起。
4. Jon Batiste「WE ARE」
ルイジアナのジャズ/ソウル系アーティスト。
ジャズの要素もありますが、Andre 3000あたりに通じるハイブリッドな感性が活きた歌もの作品です。ヒップホップなどの要素も取り入れつつ、暖かいソウルに寄った印象に仕上がっています。
ヒップホップ的なグルーヴを持った美しいソウルの「SHOW ME THE WAY」がベストトラック。ソウルフルな歌いっぷりにノックアウトされます。
3. IDK「USEE4YOURSELF」
メリーランドのラッパー。
トラップやバウンス、ブーンバップなどの多彩なヒップホップの要素をミックスしたようなアイデア満載の楽しい作品です。少し高めの声質で様々なフロウを巧みに使いこなすラップやソウルフルな歌も見事。
引用の多さもこの作品の魅力です。トラップ系のビートでWestside GunnとMF DOOM、Jay Electronicaを迎えたカオスな「Red」では某G名曲の替え歌が飛び出します。
2. Jam & Lewis「Jam & Lewis, Volume One」
ミネソタのプロデューサーユニット。
現行シーンに合わせすぎない、メロウでスウィートな曲が詰まったR&Bファン悶絶必至のロマンティックな傑作です。Mariah CareyやBabyface、Usherなど客演の人選も完璧。
プレイリストにはBoyz II Menが歌う「The Next Best Day」を収録しました。切ないギターやストリングスに808のドラムを合わせた哀愁漂う美曲です。
1. Drakeo the Ruler「The Truth Hurts」
西海岸のラッパー。
現行ウェッサイ~ミシガン系の、ラチェットを通過したバンギンなビートが中心の硬派な作品です。濁った声質の淡々としたラップで醸し出すヒリヒリとした緊張感は凄まじいものがあります。
多くの客演を迎えた作品ですが、プレイリストにはそのラップの魅力が堪能できる純ソロ曲の「Too Icey」を。ポロポロとしたギターを使ったビートで静かなラップの凄味が光ります。
このリストを作った一週間後にDrakeo the Rulerの訃報が届きました。ご冥福をお祈りします。
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