2021年のお気に入りGファンクを集めたプレイリストを作りました
2021年のお気に入りGファンクを集めたプレイリストを作りました。
全36曲です。比較的オーセンティックなGファンク→1980年代ファンク/ブギー色の強いGファンク→トラップの要素を持つGファンク→ネオソウルやジャズと融合したGファンク→Gファンクの音色を使ったブーンバップという大まかな流れで組んでいます(完全に沿っているわけではありません)。
現在Gファンクが盛んな地は、発祥の地であるLAやベイのほか、近年西海岸ヒップホップとの急接近が進むミシガン、Screwed Up Clickなどが古くから取り入れてきたテキサスなどです。と言ってもミシガンやテキサスでは全曲Gファンクで作ってくるようなアーティストはあまり多くなく、アルバムの中のメロウ枠としてGファンクの曲が収録されているようなケースが多い印象です。
比較的オーセンティックなGファンク
前半に固めた比較的オーセンティックなGファンクは、やはり特に西海岸で多く見られます。ずっと変わらずに古き良きGファンクを作り続けているアーティストもいますが、YG周辺のようにラチェットを通過してGファンクに回帰したようなアーティストもいます。今回のプレイリストで言うとSlim 400(R.I.P.)やG Pericoなどがそれにあたります。
ラチェット経由のGファンクは以前はミニマルでドラムの手数が多い傾向にありましたが、近年はよりストレートなGファンクに回帰する動きも増えてきました。
1980年代ファンク/ブギー色の強いGファンク
Gファンクは元々1980年代ファンク/ブギーと密接なサブジャンルですが、以前こちらの記事で書いた1980年代リバイバルの流れを汲んでさらに接近するような例が2000年代後半から目立つようになってきました。
このスタイルは、ブギー人気の高いフランス勢との交流もあるXL Middletonや、2000年代からそういったビートを作り続けてきたDJ. Freshなどが得意としています。
DJ. Freshは以前こんなツイートをしていましたが、XL Middleton(と恐らく変名のDelmar Xavier VIIのタッグ)が昨年リリースしたアルバム「XL Middleton & Delmar Xavier VII」では全曲で日本のシティポップをサンプリングしています。
元々ヴェイパーウェイヴとGファンクの共通点は多くありますが、今後さらに接近が進んでいくかもしれません。要注目です。
トラップの要素を持つGファンク
2010年代の西海岸はラチェットが主流でしたが、Nipsey Hussle周辺やDom Kennedyなどトラップの要素を以前から取り入れているアーティストもいました。
西海岸以外では南部でGファンクが盛んなテキサス勢や、メインストリームに近いTaylor Gang周辺のCardoとSledgrenがトラップとGファンクのクロスオーバーを聴かせることがあります。
また、ベイでヒップホップのプロデューサーとしてのキャリアを始めてアトランタでブレイクを掴んだトラップ職人のZaytovenも、Mozzy「Chase Dat Money」などで時々Gファンク要素を取り入れたビートを聴かせてきました。Zaytovenがベイ勢と共にその側面を前面に押し出したアルバム「Zaytoven Presents: Fo15」をリリースしたことは昨年の重要トピックの一つです。
ネオソウルやジャズと融合したGファンク
ネオソウルやジャズと融合したGファンクは、Snoop Doggのライブバンドのメンバーを務めていたTerrace Martinなどが取り組んでいます。
Jill ScottやMusiq Soulchildといったネオ・フィリー勢のプロデュースで知られるDre & Vidalと近しかったD Smokeもこの文脈と言えるでしょう。
BattlecatやDJ Quikなどが1990年代から生演奏を活かしたGファンクに取り組んでいましたが、それを聴いて育ったミュージシャンが発展させた流れがあります。この文脈についてはムック本「Jazz The New Chapter 5」で詳しく紹介されているので、未読の方は是非。
また、Zo!などミュージシャンの生演奏を活かしたサウンドを聴かせるThe Foreign Exchange周辺もGファンクとして聴ける曲を作ることがあります。
Gファンクの音色を使ったブーンバップ
Gファンクの音色を使ったブーンバップは古くから作られています。Erick Sermonや故MF DOOMらがGファンク的な質感のネタを使ったビートを作っており、逆にGファンク文脈で語られることの多いCompton's Most Wantedはブーンバップ的なビートを聴かせてきました。また、ブーンバップの聖地であるNYでもMasta AceやThe Notorious B.I.G.らがGファンクに乗ってきました。
こういった試みは後進に受け継がれ、Marco PoloやStatik Selektahといったストイックなブーンバップ職人と思われがちなプロデューサーも時々Gファンクの音色を使ったビートを作ってきました。J DillaもGファンク路線の曲をいくつか発表しています。近年のアーティストではJay WorthyとSean HouseによるユニットのLNDN DRGSがこの文脈で、ブーンバップのトレンドであるドラムレス(ドラム弱)のビートも取り入れて発展させています。
その手のビートでのJay Worthyの客演数も多く、今回のプレイリストの後半にも集中しています。
そして、客演といえば今回のプレイリストにはLarry Juneの登場率も高いです。比較的オーセンティックなGファンクでも、ブーンバップと交差するGファンクでも登場しますし、今回のプレイリストには未収録ですがアルバムではラチェット経由のGファンクやトラップにも乗っています。今年も多彩なアプローチでGファンクを届けてくれるでしょう。
なお、今回プレイリストに入れた曲の多くはレビューを書いた作品から選びました。プレイリストを聴いて気になった作品があったらあわせて是非。
有料部分はプレイリストの一曲目を飾る「PLAY NO GAMES」を収録した、1TakeJayのアルバム「1TAKEBAE」のレビューです。
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