おすすめ旧譜アルバムVol. 53: 50 Cent「Get Rich or Die Tryin'」
旧譜紹介Vol. 53です。
今回紹介するのは、NYのラッパーの50 Centによる03年のアルバム「Get Rich or Die Tryin'」です。
50 CentはNY出身のラッパーです。
Jam Master Jayの周辺から90年代後半に登場。99年のMadd Rapper「How To Rob」への客演が一部で話題を集めますがレーベルから切られ、自主の道へ。そこからの復活劇は以前寄稿したこちらで書いています。02年にはShady/Aftermath入りし、03年に本作をリリースし大ブレイク。05年には2ndアルバム「The Massacre」をリリースし、やはり大ヒット。その後も07年の「Curtis」、09年の「Before I Self Destruct」とリリースを重ねていきます。また、ソロアルバムだけではなくミックステープの発表や、グループのG-Unitでの作品などもリリース。精力的に活動を行っていましたが、10年代に入るとペースは衰え、ミックステープを数枚発表したもののソロアルバムは14年の「Animal Ambition」のみでした。しかし現在も客演やシングルのリリースなど活動は続けており、昨年にはPop Smoke「Shoot for the Stars, Aim for the Moon」でエグゼクティヴプロデューサーを担当。収録曲「The Woo」でも客演し、素晴らしいヴァースを披露していました。
低めの声質で聴かせるゆるいラップが魅力のラッパーです。ヘタウマ系のゆるい歌フックも巧み。サウンド的にはブーンバップ系譜のハードなものやエレクトロ風味、トレンドを汲んだものなどを聴かせます。メロウ路線も得意な印象。
本作は骨太なブーンバップやバウンス、奇怪なものまで多彩なビートを揃えた全米仕様なサウンドが楽しめる50 Centの代表作です。ソングライティングもラップも冴え渡った傑作に仕上がっています。
2. What Up Gangsta
仰々しいストリングスをループしたブーンバップ。
暑苦しい掛け声や歌を交えたフックがキャッチーな良曲です。ヴァースでのゆるいラップとのコントラストも良いです。
3. Patiently Waiting Feat. Eminem
プロデュースもEminem。
緊張感のあるストリングスを使った当時のEminemらしいビートに、50 Centのゆるいスタイルが見事に噛み合った好曲です。Eminemも自然体なラップで好演。
4. Many Men (Wish Death)
近年引用が相次ぐクラシック。
ソウルフルで内省的なサウンドで、悲しげなラップや歌を聴かせる哀愁路線の曲です。フックが非常に強力。
5. In Da Club
Dr. DreとMike Elizondoが手掛けたバンガー。
ダイナミックなストリングスや、タイトで抜けの良いドラムが効いた名曲です。細かく鳴るギターも印象的。
6. High All The Time
EminemとSha Money XL、DJ Radの共作。
ピアノやストリングスを用いた緊張感のある曲です。歌い方がQuavoあたりに通じる瞬間があり、50 Centの多大な影響力が再確認できます。
7. Heat
Dr. Dre制作の怪曲。
銃のリロード音と銃声をドラムのようにループし、ミニマルなキーボードと絡めた物騒な曲です。それにメロディアスなフックを絡める50 Centも見事。
8. If I Can't
再びDr. DreとMike Elizondoのプロデュース。
シンプルなピアノループと弾けるスネアが印象的なビートで、メロディアスなアプローチも多用して聴かせる良曲です。Dr. Dreも一瞬声を挟みます。
9. Blood Hound Feat. Young Buck
UTPっぽいバウンス路線。
チープでミニマルなシンセと高速ハイハットを使ったビートで、威勢の良いラップを聴かせる好曲です。Young Buckのパワフルなラップにもスカッとさせられます。
11. P.I.M.P.
Mr. Porterが手掛けたトロピカルな曲。
スティールパンのループとずっこけたようなドラムがユニークなビートに、クールにラップを乗せていく良曲です。ビートをそのままなぞるフックも耳に残ります。
14. 21 Questions Feat. Nate Dogg
Dirty Swift制作のメロウ路線。
ミニマルなギターのループが素晴らしいビートで、Nate Doggのダンディな低音の歌フックと絡む名曲です。とにかくフックが強力。
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