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フリーランスのためのお金・税金基礎用語100選

はじめに

突然ですが、「フリーランスになりたい!」「いつかは独立しよう!」と夢や目標を抱いている方のなかには、「でも、お金や税金ってややこしくない?」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

会社員であれば経理部や総務部がやってくれていたことも、フリーランスになるとすべて自分で対応しなければなりません。確定申告や経費管理、社会保険への加入、あるいは将来の年金や資金繰り…耳慣れない言葉ばかりが並ぶと、それだけで気後れしてしまうかもしれません。

しかし、この“お金・税金”というのは実に面白い世界でもあります。もちろん法律や制度上のルールはありますが、それらを知ることで自分のビジネスに応用できるテクニックやメリットがたくさん見つかるのです。

たとえば、

  • 青色申告をするかしないかで、大きな節税ができるかもしれない。

  • 家事按分を適切に使うと、普段の光熱費や家賃の一部も経費にできるかもしれない。

  • 国民年金基金iDeCoで「老後の資金形成+節税」が同時にできるかもしれない。

このように、お金や税金の知識はフリーランスとしての可能性を広げてくれる「武器」となります。そして、その武器を上手に使えるかどうかが長く続ける秘訣でもあります。

本稿では、「フリーランスとして知っておきたい基礎用語」を厳選して100個ご紹介します。初心者向けのわかりやすい解説を心がけておりますので、どうぞ気軽に読み進めてみてください。

  • まず前半(1〜36)では、「税金の基本」についてお話しします。個人事業主の開業届や、所得税・住民税といった国税や地方税の仕組み、さらには青色申告や白色申告の違い、控除の活用術などを扱います。

  • 後半(37〜55)は、「お金の管理」にフォーカスします。記帳の仕方や会計ソフトの活用法、銀行口座やクレジットカードの使い分け、税理士との付き合い方など、日頃の経理管理から資金繰りのヒントまで網羅。

  • その次(56〜67)は、「社会保障」に関するテーマです。国民年金、国民健康保険、労災保険特別加入など、フリーランスならではの注意点をまとめています。

  • 最後(68〜100)では、「その他の実務に役立つ知識」として、印紙税やインボイス制度、ファクタリングといった実践的かつ多岐にわたるキーワードをピックアップしました。

    • たとえば「補助金・助成金」や「税務調査」の話は、規模が小さいフリーランスでも意外と身近です。

    • 「帳簿の保存期間」や「電子帳簿保存法」あたりは最新の動向もあり、慣れないと戸惑うかもしれません。

    • あるいは「入金サイト(支払サイト)」の長さに悩まされる…といった資金繰りのリアルな話題も欠かせませんよね。

どれも、一度は耳にしておきたい重要キーワードばかりです。用語の意味を知っているだけでも安心感が増し、トラブルやリスクへの備え方が変わってきます。



税金の基本編(1〜36)

1. フリーランス

会社など組織に属さず個人で仕事をする人のことです。雇用契約ではないため、収入管理や税金の申告・納税、社会保険の手続きなどをすべて自分で行います。

2. 個人事業主

法人(会社)を設立せずに個人で事業を営む人のことです 。フリーランスの多くは個人事業主として開業届を提出しており、税法上は「事業所得」として課税されます(後述の所得税参照)。

3. 屋号

個人事業主が事業上で使用する名前(ブランド名)です。例えば本名とは別に屋号を設定し、請求書や名刺に記載したり、銀行口座を屋号付きで開設したりできます。屋号は任意ですが、ビジネス上の信用やブランド構築に役立ちます。

4. 所得税

個人の所得(もうけ)に対してかかる国税です。毎年1月1日〜12月31日の所得を計算し、翌年2月16日〜3月15日に確定申告を行って納税します 。所得額に応じた超過累進税率(所得が多いほど税率が高くなるしくみ)で、最高税率は45%(復興特別所得税を含め実質約46.%)です。基本的には売上-経費で計算されます。

5. 住民税

個人の所得に対して市区町村が課税する地方税です。前年の課税所得に一律約10%の税率で計算され、毎年6月頃から自治体から送られる納付書で年4回に分けて納めます (給与がないフリーランスの場合、自分で全額納付します)。住民税は所得税とは別途発生するため、所得税を申告した後にも支払いがある点に注意しましょう。

6. 個人事業税

特定の事業を行う個人事業主に対して都道府県が課す地方税です。業種によりますが、原則として年間の事業所得が290万円を超える場合に5%前後(業種により税率3〜5%)の税金が発生します 。所得が290万円以下なら課税されません。納付は年2回(8月と11月)に分けて行います。

7. 消費税

商品やサービスの取引に課される間接税で、日本では原則として一律10%の税率です。フリーランスの事業者でも、前々年度の売上が1,000万円を超えると課税事業者となり、消費税の申告・納税義務が生じます。逆に売上が1,000万円以下なら免税事業者(後述)として消費税を納めなくてもよい場合があります。

ただし、適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)となっている場合には消費税の納税義務があります。

8. インボイス制度

2023年10月から始まった「適格請求書等保存方式」のことです 。適格請求書(インボイス)とは所定の要件を満たした請求書で、発行するには税務署への事業者登録が必要です。

適格請求書発行事業者になると、自身は消費税の課税事業者となり消費税の申告納税義務が発生しますが、取引先はあなたの請求書に基づき仕入税額控除を受けられます。フリーランスの場合、免税事業者でも取引先からインボイス発行を求められるケースがあり、自身の取引状況に応じて登録するか判断が必要です。

9. 源泉徴収

所得税の徴収方法の一つで、報酬を支払う側が事前に税金を天引きし、代わりに納税する仕組みです。会社員であれば給与支給時に所得税が差し引かれます。

フリーランスの場合、基本的に報酬は源泉徴収されませんが、原稿料やデザイン料など一部の仕事では10.21%(所得税10%+復興税0.21%)が源泉徴収されることがあります 。

源泉徴収された場合、確定申告で計算した所得税の額から源泉徴収分を差し引いて納付します。源泉徴収された分の方が多い場合には還付となります。

10. 確定申告

1年間の所得と税額を計算し、税務署に申告する手続きです 。フリーランスは自分で毎年確定申告を行い、所得税や消費税などを納める義務があります。確定申告を怠ると最悪の場合脱税とみなされ罰則を受けるリスクがあります。期限は毎年3月15日(原則)で、この日までに所定の申告書類を提出し税金を納めます。

11. 青色申告

所得税の確定申告の方式の一つで、65万円の特別控除(後述)など各種の税制上のメリットが受けられる制度です 。事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出し承認を受ける必要があります。複式簿記に基づく帳簿づけや決算書類の作成が求められますが、会計ソフトの活用により比較的容易に青色申告を行うことも可能です 。

12. 白色申告

簡易な方法で行う確定申告のことです。かつて青色申告にしない場合は白色申告となり帳簿作成義務もありませんでしたが、2014年以降は白色申告でも記帳と帳簿保存が義務化されています 。

白色申告には青色申告の特典(特別控除や損失繰越など)が無いため、節税面では劣りますが、事前申請が不要で比較的手軽に申告できます。

13. 開業届

個人事業を開始したときに税務署に提出する書類です。正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、開業日から1ヶ月以内に提出することが推奨されています。

提出しなくても罰則はありませんが、青色申告をする場合は一緒に提出するのが一般的です (未提出でも確定申告自体は可能)。金融機関の融資や各種証明で「事業を行っている証明」として開業届の控えコピー提出を求められるケースもあります。

14. 青色申告承認申請

青色申告を行うために税務署へ提出する申請書です。開業から2ヶ月以内、または青色申告を始めたい年の3月15日までに提出する必要があります。

これを提出し承認を受けることで、その年分以降は青色申告の特典を利用できます 。期限を過ぎるとその年は青色申告ができず白色申告扱いになるので、開業時は忘れず提出しましょう。

15. 税務署

国税を管轄する税務官庁です。所得税や消費税の確定申告書類の提出先であり、納税の相談や各種届出もここで行います。

フリーランスが開業届や青色申告申請を提出するのも、納税証明書をもらうのも税務署です。疑問があれば税務署の窓口で相談したり、電話で問い合わせることもできます。

16. e-Tax(電子申告)

国税のオンライン申告システムです。パソコンからインターネット経由で確定申告書を提出できます。マイナンバーカードやICカードリーダー、またはID・パスワード方式を利用して本人確認します。

メリットは税務署に行かずに済む点で、青色申告の場合はe-Taxで申告すると青色申告特別控除65万円をフルに適用できます(紙提出の場合、一部条件により控除額が10万円減額)。

17. 予定納税

前年の所得税額が一定額を超えた場合に、翌年の本来の納税時期より前に一部を納める制度です。具体的には、前年分の所得税額が15万円超の場合、その年の所得税をあらかじめ7月と11月に各1/3ずつ前払いします (翌年3月の確定申告時に精算)。

前年に大きな税額を納めたフリーランスは、夏と秋にも税金の支払いが発生する点に注意が必要です。

18. 納税

確定申告により算出された税金を国や自治体に支払うことです。所得税の場合は申告期限の3月15日が納期限です(延長される場合を除き同日までに納付)。

納税方法は、現金を金融機関やコンビニで支払うほか、クレジットカード納付や口座振替(後述)も利用できます。期限までに納めないと延滞税が課されるため、納期を守って納税しましょう。

19. 延滞税

税金を期限までに納付しなかった場合に課されるペナルティ(利息)です。納付が遅れた日数に応じて年利換算で延滞税が加算されます。延滞税率は納付遅延期間により異なり、長引くと高率になります。

資金不足などで支払いが遅れる場合は、放置せず早めに税務署に相談することが大切です。
延滞税の試算は国税庁HPで可能ですが、極力そのようなことがないように期限までに納付しましょう

20. 事業所得

個人事業主の事業から生じた所得のことです。売上(収入)から経費を差し引いた利益が事業所得となり、これが所得税や住民税の課税対象になります。

フリーランスの本業の稼ぎは通常「事業所得」として申告します(青色申告なら65万円控除等が適用可能)。

21. 雑所得

公的年金や副業収入など、主たる所得区分に当てはまらない雑多な所得のことです。

フリーランスの収入でも、規模が小さい副収入や趣味的収入など事業として認められないものは雑所得扱いになる場合があります。雑所得は事業所得と異なり青色申告の特典が使えず、経費計上にも一定の制限があります。

22. 給与所得

会社などから給与(給料)として受け取る所得です。給与所得には給与所得控除(みなし経費)があり、源泉徴収や年末調整によって会社側で税金の精算が行われます。

フリーランスでも、場合によってはアルバイトやパートなど給与所得を得ることがありますが、その場合は事業所得とは別区分として確定申告で合算します。

23. 必要経費

事業所得を計算する際に売上から差し引くことのできる業務上の支出のことです。フリーランスの経費には、仕事に使った交通費、通信費、機材購入費、取材や打ち合わせのための飲食代(交際費)、自宅作業スペースの家賃按分分など様々なものが該当します。事業に関係のある支出は領収書など証拠を保存し、漏れなく経費計上することで課税所得を減らせます。

24. 青色申告特別控除

青色申告者に与えられる所得控除で、正規の簿記(複式簿記)による記帳と決算書の提出を行うと最大65万円が所得から控除されます 。

簡易簿記など簡単な記帳でも10万円の控除が認められます。これがいわゆる「青色申告の65万円控除」で、フリーランスにとって大きな節税メリットとなります。

25. 青色事業専従者給与

青色申告者が、生計を一にする親族(配偶者や家族)を事業専従者として働かせ、その給与を経費にできる制度です。

例えば配偶者に事業を手伝ってもらい給与を支払えば、その金額を必要経費に算入できます(事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、適正な金額で支払う必要があります)。これは家族への給与という形で所得を分散し、結果的に世帯全体の税負担を軽減できる節税策です。

26. 収支内訳書

白色申告の場合に確定申告書に添付する決算書類です。1年間の事業の収入(売上)と支出(経費)の内訳をまとめたもので、科目ごとに金額を記載します。青色申告のような貸借対照表の作成は不要ですが、収入額や経費額を正確に計算し記載する必要があります。収支内訳書を基に税務署が所得を把握するので、白色申告でも記帳をしっかり行いましょう。

27. 青色申告決算書

青色申告者が確定申告時に提出する決算書類のことです。一般的に損益計算書と貸借対照表の2つで構成されます。

事業の収入・経費の内訳や、減価償却費の計算、期末時点の資産・負債の状況などを詳細に記載します。65万円控除を受けるにはこの決算書の提出が必要です。会計ソフトを使えば取引データから自動作成できます。

28. 基礎控除

全ての納税者に一律に適用される所得控除です。2020年以降、基礎控除額は一律48万円となりました(合計所得2,400万円超の高所得者は段階的に減額) 。基礎控除は所得税・住民税ともに適用され、他の控除と重複して誰でも受けられる基本的な控除枠です。

29. 配偶者控除

納税者に所得の低い配偶者(専業主婦(夫)など)がいる場合に適用される所得控除です。控除額は原則38万円で、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下などの条件があります 。

対象となる配偶者の年間所得(給与収入ベースで約103万円以下)が一定以下であることが必要です。簡単に言えば、「扶養内」で働く配偶者がいる場合に納税者本人の税負担を軽減できる制度です。

30. 扶養控除

納税者に扶養親族(16歳以上の子や高齢の親族など)がいる場合に受けられる所得控除です 。控除額は扶養親族の年齢や同居の有無により異なり、一人当たり基本38万円、19〜22歳の子なら63万円(特定扶養親族)などとなっています。

なお配偶者は配偶者控除の対象となるため扶養控除には含みません。扶養親族が多いほど課税所得が減り節税になります。

31. 社会保険料控除

国民年金保険料や国民健康保険料など、その年に支払った社会保険料の全額が所得から控除される制度です 。

フリーランスは厚生年金や会社の健康保険ではなく、自分で国民年金や国民健康保険を納めますが、その支払った保険料は全額が所得控除として差し引かれます。
年末に日本年金機構から送付される「社会保険料控除証明書」を用いて確定申告または年末調整で申告します。

32. 生命保険料控除

生命保険や介護医療保険などの保険料を支払った場合に受けられる所得控除です。一般生命保険・介護医療保険・個人年金保険の3つの枠があり、それぞれ最大4万円(新制度の場合)まで、合計で最大12万円の所得控除となります。

例えば民間の生命保険や医療保険に加入していれば、払い込んだ保険料に応じて税金が安くなります。保険会社が発行する控除証明書を使って申告します。

33. 地震保険料控除

地震保険に加入し保険料を払った場合に受けられる所得控除です。1年間に支払った地震保険料のうち、50,000円を限度にその全額が所得から控除されます(旧長期損害保険料控除は廃止済み)。

持ち家に地震保険を掛けている人などが対象で、これも保険料控除証明書に基づき申告します。

34. 医療費控除

1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に所得から控除できる制度です 。自己または生計を一にする配偶者・親族のために支払った医療費が年間合計で10万円超(または総所得金額等の5%超のいずれか低い方)になると、超過分が医療費控除額となります。

確定申告で明細書を提出することで所得税の還付や住民税の軽減が受けられます。なお、高額療養費制度による給付金など受け取った場合は控除額から差し引く決まりです。

35. 寄附金控除

国や地方公共団体、公益性の高い団体等に対する寄付を行った場合に受けられる所得控除です 。一年間の特定寄附金の合計額から2,000円を引いた額が所得控除されます(控除上限は総所得金額等の40%相当額)。

主な例として、赤い羽根共同募金などの公益団体への寄付や、ふるさと納税(後述)も寄附金控除の対象になります。寄附金控除を受けるには受領証など証明書を添付して確定申告します。

36. ふるさと納税

自分が選んだ自治体に寄付を行うことで、寄付額の大部分(自己負担2,000円を除く)が住民税・所得税から控除される制度です。実質2,000円の負担で、寄付先の自治体から地域の特産品など返礼品を受け取れるため、節税をしながら地域貢献もできると人気です。

年間の控除上限額は収入や家族構成によって異なります(目安は住民税所得割額の2割程度)。ワンストップ特例制度を利用すれば5自治体まで確定申告不要で控除を受けられます。


お金の管理編(37〜55)

37. 会計ソフト

帳簿付けや確定申告書類の作成をサポートするソフトウェアです。パソコンやクラウド上で動作し、日々の取引を入力すると自動で仕訳や決算書類を作成してくれます。

代表的なクラウド会計ソフトに「freee」や「マネーフォワードクラウド」「やよいの青色申告オンライン」等があり、多くのフリーランスが活用しています (確定申告の電子提出にも対応)。有料ですが記帳の手間が大幅に省け、税金計算ミスも減らせます。

38. 記帳

事業の収入や支出を帳簿に記録することです。フリーランスは収入金額や必要経費を日々記帳し、取引の証拠となる領収書類を保存する義務があります 。記帳をきちんと行っておくことで、確定申告時に正確な所得計算ができ、万一税務調査(後述)があってもスムーズに対応できます。

39. 帳簿

取引内容を記録する帳面やデータの総称です。売上帳、経費帳、現金出納帳、預金出納帳、仕訳帳・総勘定元帳など様々な帳簿があります。これらの帳簿は確定申告書の元になるだけでなく、税務調査の際の証拠資料にもなります。帳簿書類の保存期間は原則5〜7年間と定められており 、フリーランスも法律に従って長期保存しなければなりません。

40. 複式簿記

「貸方(クレジット)」と「借方(デビット)」の二面から取引を記録する簿記方式です。例えば売上が発生したら「現金(資産)が増加」と同時に「売上(収益)が増加」といった形で一つの取引を二つの要素に分けて記帳します。複式簿記による帳簿は青色申告65万円控除の要件にもなっています 。専門知識が必要ですが、会計ソフトを使えば自動で複式簿記の仕訳が行われるため、知識がなくても対応可能です。

41. 単式簿記

家計簿のように一つの取引を一行で記録する簡易的な簿記方式です。現金の出入りを中心に記録するため分かりやすい反面、正確な損益や財産状況を把握しづらい面があります。かつての白色申告は単式簿記でも良いとされていました。現在でも、青色申告を選択しない場合や、青色でも簡易簿記で記帳する場合は10万円控除が適用されます。将来的に事業規模が大きくなる場合は複式簿記への移行が望ましいでしょう。

42. 損益計算書

決算書類の一つで、一定期間(通常1年間)の収益と費用、および利益(または損失)をまとめたものです。英語ではP/L (Profit and Loss Statement)とも呼ばれます。フリーランスの場合、1年間の売上総額から必要経費を差し引いた事業所得(儲け)を計算する目的で作成します。青色申告決算書の一部として提出が必要であり、自身のビジネスの収支状況を把握するためにも重要です。

43. 貸借対照表

決算書類の一つで、ある時点(通常は決算日=12月31日)の資産・負債・純資産の状態をまとめたものです。英語ではB/S (Balance Sheet)と呼ばれます。フリーランスでも青色申告65万円控除を受ける場合は貸借対照表の提出が必要です。現金や預金、売掛金、備品などの資産、借入金や未払い費用などの負債、そして差し引きの**純資産(元入金や当期利益)**を一覧にします。自分の事業の財政状態を把握でき、金融機関から融資を受ける際などにも参照されます。

44. 勘定科目

収支を分類するための項目名のことです。帳簿に記帳する際、取引内容に応じて適切な勘定科目を用います。

例えば、事業の収入であれば「売上高」、仕入れにかかった費用は「仕入高」、事務所家賃は「地代家賃」、電車や車で移動した費用は「旅費交通費」等の科目があります。適切な科目分類によって経営分析がしやすくなり、確定申告書の収支内訳書や青色決算書にも反映されます。会計ソフトではあらかじめ科目が用意されているので、それを選んで入力する形になります。

45. 領収書

代金を受け取ったことを証明する書類です。フリーランスの場合、自分が支払った経費について受領する領収書が重要になります。

経費計上の根拠資料となるため領収書やレシートは捨てずに保管しましょう。紙の領収書は青色申告の場合原則7年、白色申告の場合原則5年の保存義務があります 。最近は電子データで領収書を受け取るケースもありますが、その場合も電子帳簿保存法(後述)の要件を満たして保存する必要があります。

46. 請求書

フリーランスがクライアントに報酬や代金を請求するために発行する書類です。仕事完了時や月末締めなどで発行し、何のサービスに対する請求か、金額(税込みか税抜きか)、振込先の銀行口座、発行者(あなた)の住所氏名などを記載します 。請求書を発行しないと報酬を振り込んでもらえないので、必ず発行しましょう。会社宛てに郵送する場合、封筒に「請求書在中」と朱書きするのがマナーです。近年は郵送ではなくPDF請求書をメール送付したり、クラウド請求書サービスを使うことも増えています。

47. 見積書

仕事の発注前に、業務内容とそれにかかる費用を見積もって提示する書類です。クライアントから依頼内容を聞き取り、「●●作業一式:¥○○」といった形で発生しそうな費用を算出します。見積書をクライアントに提示して合意が取れれば正式な契約・発注となる流れです。見積書は発注前の打ち合わせ資料なので、必ずしも全案件で必要になるわけではありませんが、高額案件や期間が長い仕事では作成しておくとトラブル防止になります。

48. 売上

事業によって得た収入金額のことです。フリーランスにとっての売上とは、クライアントから支払われた報酬の合計額(源泉徴収されている場合は差し引かれる前の額)を指します。売上は事業の規模を表す重要な数値ですが、そのまま利益ではありません。売上から経費を引いた残りが利益(事業所得)となり、税金の計算にも使われます。なお、消費税の課税売上高1,000万円超か否かで翌々年の消費税納税義務が決まるため、売上額は消費税上も重要です。

49. 銀行口座

お金を出し入れする銀行の預金口座です。フリーランスでは仕事用に銀行口座を分けることが望ましいです。プライベートの家計費と事業のお金を同じ口座で管理すると記帳や経理が煩雑になるため、事業専用の口座を作り、売上の振込受取や経費支払いに使うと管理しやすくなります。個人事業主でも銀行によっては屋号付きの口座名義を作れます。普段使いの銀行とは別にネット銀行等で開設する人も多いです。

50. 銀行振込

銀行口座間でお金を振り込む決済方法です。フリーランスの報酬支払いは銀行振込が一般的で、請求書に指定した自分の口座にクライアントから入金があります。振込のタイミングは契約によりますが、月末締め翌月末払い(締め後30日以内の支払い)など「支払サイト」として取り決められます(後述の入金サイトも参照)。振込手数料は支払側が負担するケースが多いですが、契約によっては報酬から手数料相当額を差し引かれることもあります。

51. クレジットカード

商品やサービスの支払いに利用できるカード決済手段です。フリーランスが経費を支払う際、現金ではなくクレジットカードを使うと決済日から実際の口座引き落としまでに猶予ができるため資金繰りが楽になります。また、利用明細が記録に残るため経費管理にも便利です。事業専用にクレジットカードを作り、仕事関連の支払いはそのカードで集約すると経理処理が簡素化できます。ただし使いすぎないよう管理と、後日きちんと経費科目ごとに仕訳することが必要です。

52. 資金繰り

事業におけるお金のやりくり(キャッシュフロー管理)のことです。フリーランスは収入が毎月一定ではないため、納税資金や生活費を見越してお金をプールしておくなど計画的な資金繰りが重要です。例えば、売上のうち税金分として○%は別口座に積み立てておく、入金サイトが長い取引先には支払いサイトの短い経費支出を充当しすぎない等、手持ち資金が枯渇しないよう調整します。資金繰りに不安があるときは銀行から融資を受けたり、ファクタリング(後述)で売掛金を早期回収する手段も検討します。

53. 税理士

税務の専門家である税理士資格保有者のことです。フリーランスは自身で経理・申告を行うのが基本ですが、事業が軌道に乗り忙しくなったら税理士に依頼して記帳や確定申告、税務相談をお願いすることもできます。税理士に依頼すると毎月の記帳代行料や申告料がかかりますが、節税アドバイスを受けられたり、本業に専念できるメリットがあります。税務調査の際も税理士が立会い対応してくれるため安心です。税理士を探す場合、知人の紹介や税理士紹介サイトなどを利用するとよいでしょう。

54. マイナンバー

国民一人ひとりに割り当てられた12桁の「個人番号」です。税金や社会保障の手続きで個人を識別するために使われます。確定申告書や法定調書などにはマイナンバーの記載欄があり、フリーランスも自身のマイナンバーを記入します(番号提供の際は厳重な本人確認が必要)。マイナンバーは行政手続の効率化に役立ちますが、他人に不用意に知られると悪用の恐れがあるため、通知カードやマイナンバーカードは大切に保管しましょう。

55. マイナンバーカード

マイナンバー(個人番号)が記載されたICチップ付きの本人確認カードです。顔写真付きで公的な身分証明書として使えるほか、e-Taxによる電子申告の電子署名や、コンビニで住民票を取得するサービスなど様々な機能があります。現在は健康保険証としても利用可能です。発行は希望制ですが、多くの行政サービスで活用できるためフリーランスでも取得する人が増えています。申請すると市区町村で交付され、有効期限は10年(転居や氏名変更時は要更新)です。


社会保障編(56〜67)

56. 国民年金

日本に住む20歳〜60歳未満の全ての人が原則加入する公的年金制度です。フリーランスや自営業者は第1号被保険者として国民年金に加入し、自分で保険料を納付します。保険料は定額で、2024年度は月額16,980円です (毎年度見直し)。原則として40年間(20〜59歳)納めると65歳から老齢基礎年金を受け取れます(満額で年約80万円程度)。収入が少ない場合は保険料免除や猶予申請(後述)が可能ですが、その期間は将来受け取る年金額が減る点に注意しましょう。なお、国民年金保険料は全額が社会保険料控除の対象です 。

57. 厚生年金

会社員や公務員が加入する公的年金制度です。フリーランスは会社に属していないため通常は加入できません(法人化して自分を役員給与にすれば加入)。厚生年金保険料は給与に比例した額で、労使折半で納付します。毎月の給与から天引きされるため自営業者には負担に感じますが、その分受給できる年金(老齢厚生年金)は国民年金より多くなります。フリーランスから会社員になると国民年金から厚生年金へ切り替わり、逆に会社員から独立すると厚生年金を脱退し国民年金のみになります。

58. 国民年金基金

自営業者やフリーランス向けの任意加入型年金制度です。将来の年金を上乗せするため、国民年金に加えて加入できます。毎月の掛金を払込むと、65歳以降に終身年金や一定期間の年金を受け取れます。掛金は全額が社会保険料控除の対象なので、払った分だけ所得税・住民税が軽減されます。国民年金基金は職業別・地域別に基金が分かれており、自分の属する基金に加入します。将来もらえる年金額が確定している確定給付型で、運用や利率は基金により異なります。加入は強制ではありませんが、公的年金を補完する制度として検討する価値があります。

59. iDeCo(イデコ)

個人型確定拠出年金と呼ばれる私的年金制度です。自分で金融機関を通じて積立投資を行い、60歳以降に老後資金を受け取ります。自営業者の場合、月額0円〜68,000円まで掛金を拠出可能(加入状況による)で、その掛金全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除されます。運用益も非課税で運用できるメリットがあります。ただし原則60歳までは引き出せず、運用結果によって将来受取額が変動する確定拠出型です。老後資金づくりと節税を兼ねた制度としてフリーランスにも広まりつつあります。

60. 小規模企業共済

小規模事業者(従業員20人以下の個人事業主や会社役員)向けの国の共済制度です。経営者の退職金制度とも言われ、毎月の掛金を積み立て、廃業や老後時に共済金(退職金)を受け取れます。掛金(月1,000〜7万円)は小規模企業共済等掛金控除として全額所得控除されるため、在職中は大きな節税効果があります。受取時も退職所得扱いになるため税制優遇があります。フリーランスで将来の備えをしつつ節税したい人にとって、有力な制度です。掛金は途中で増減や一時停止も可能ですが、短期解約すると元本割れする可能性があるので注意が必要です。

61. 国民健康保険

自営業者や無職の人などが加入する公的医療保険です。フリーランスになると会社員時代の健康保険を脱退し、市区町村が運営する国民健康保険(国保)に切り替わります 。保険料は前年の所得に応じて算定され、各自治体から年数回に分けて納付通知が来ます。国保に加入すると、病気やケガで病院にかかった際の医療費の自己負担が3割(一定以上の所得がある場合は3割超)になります。加入は義務であり、もし会社を辞めて国保への加入手続きを怠ると後からでも請求されます 。前年所得が少ない場合は保険料が軽減される制度もあります。

62. 任意継続

会社員だった人が退職後もそれまでの健康保険に継続加入できる制度です。正式には「健康保険の任意継続被保険者制度」といい、退職日から20日以内に申請すれば最長2年間会社の健康保険に留まれます 。保険料は今まで会社と本人で折半していたものを全額自分で支払います(場合によっては在籍時より高くなることもあります)が、国民健康保険と比べて有利な場合があります。例えば退職前の標準報酬月額が低かった人は任意継続のほうが保険料が安いケースもあります。フリーランスとして独立する際、国保と任意継続どちらが得か比較して選択するとよいでしょう。

63. 介護保険

40歳以上の国民が加入する公的介護保険制度です。介護が必要になったときに介護サービスを受けるための保険で、40〜64歳は医療保険(会社員なら健康保険、フリーランスなら国民健康保険)に上乗せして加入し、65歳以上は年金から天引きで納めます。フリーランスの場合、40歳になると国民健康保険料に介護保険料分が加算されます。介護保険に加入していれば、要介護認定を受けた際にケアプランに沿ったサービス(訪問介護や施設入所など)を1割〜3割の自己負担で利用できます。

64. 雇用保険

会社員が加入する労働保険の一つで、失業した際に給付(失業手当)を受けられる制度です。フリーランスは雇用されていないため雇用保険には加入できません。そのため、会社員であれば失業中に受け取れる失業給付(基本手当)が、フリーランスには原則ありません。過去に会社勤めをしていて雇用保険に入っていた人は、退職後所定の手続きを取れば失業手当をもらえる可能性がありますが、フリーランスとして独立して開業届を出してしまうと基本手当は受け取れなくなります。

65. 失業保険(失業給付)

雇用保険の被保険者が失業した際に支給される給付金の通称です。基本手当とも呼ばれ、失業中の生活費を一定期間支援するものです。フリーランスは雇用保険に入っていないため、この失業保険の対象外です。独立=「常に失業状態」とも言えますが、公的支援がない分、仕事が途切れたときに備えて貯蓄をする・収入源を複数持つなど自己防衛が必要です。なお、会社員から独立する際は、独立する前に失業給付を受け取ってから起業準備するという選択肢もあります(ただし求職活動の実態が必要です)。

66. 労災保険

業務上の事故や災害による労働者のケガ・疾病に対して給付を行う保険制度です。正式には「労働者災害補償保険」で、会社などが従業員分を加入します。フリーランス本人は労働者ではないため原則として労災保険の適用外ですが、請負現場などでケガをした場合、発注元の事業所の労災保険が適用されるケースもあります。また後述の特別加入制度により、自身で労災保険に加入することも可能です。なお、業務中の事故でケガを負っても労災に入っていないフリーランスは、公的には国民健康保険で治療するしかなく、休業補償などはありません。

67. 労災保険特別加入

フリーランスや一人親方など労働者ではない人が、労災保険に任意で加入できる制度です。建設業や運送業など一定の危険を伴う業種の自営業者は、労働局長の承認を受けることで労災保険に入れます。中小事業主等やその家族従事者も条件次第で加入可能です。特別加入すると、業務中や通勤中の事故で怪我をした場合に療養補償給付や休業補償給付を受けられます。保険料は業種により異なる労災保険料率を事業主が負担します。危険度の高い仕事をするフリーランスは、万一に備えて特別加入を検討すると良いでしょう。


その他の実務に役立つ知識編(68〜100)

68. 収入印紙

「印紙税」という税金を納めるために金額に応じて文書に貼付する切手のような証票です。フリーランスに関係する場面では、5万円以上の領収書や請求書(受取書)を発行するときに収入印紙を貼る必要があります 。例えば、5万円以上100万円以下の領収書には200円分の印紙を貼付します(郵送しないPDFの電子請求書等は対象外)。収入印紙を貼らずにいると、後日ペナルティ(印紙税額の3倍の過怠税)を課されることがあるので注意しましょう。

69. 税込価格

消費税を含んだ価格表示のことです。例えば「税込11万円」は本体価格10万円+消費税1万円を合計した金額です。消費者向けの価格表示は原則税込みで表示することが義務付けられています。一方、BtoB取引では税抜金額で管理することも多いです。フリーランスが請求書を発行する際は、税込価格で記載するか税抜価格+消費税額で記載するか、事前にクライアントと取り決めておくとよいでしょう。

70. 税抜価格

消費税を含まない本体価格のことです。例として「税抜10万円」は別途消費税が加算される前の価格です。事業間取引では税抜価格で契約し、請求時に消費税額を加算する方式が一般的です。税抜表示は消費税率が変更になっても本体価格を据え置けるメリットがありますが、消費者向け表示には使えない場合がある点に注意しましょう(総額表示義務)。請求書には税込・税抜の別を明記し、誤解がないようにします。

71. 法人化

個人事業を法人(会社)形態にすること、いわゆる会社設立を指します。フリーランスが事業を拡大し、株式会社や合同会社を設立して代表者となるケースです 。法人化すると、自分は会社の代表取締役(または役員)となり、以後の所得は「役員報酬(給与所得)」や「配当所得」として課税されます。法人税や消費税の免税期間など税制上のメリットを得られる場合があり、一般に事業利益が年間600〜800万円を超えたら法人化を検討すると言われます。ただし法人化すると社会保険加入義務や事務手続きの増加などコストも発生するため、税理士と相談して判断しましょう。

72. 源泉徴収票

給与所得者に対して年末に発行される所得証明書です。会社員時代には毎年もらっていた人も多いでしょう。内容はその年の給与収入や源泉徴収された所得税額、各種控除額などが記載されています。フリーランスになってからは、基本的に自身の事業収入には源泉徴収票は発行されません。ただし年の途中で会社を退職して独立した場合や、フリーランスで働きつつ年末調整済の給与所得がある場合などは、確定申告時に前職の源泉徴収票が必要になります。なお、一部のフリーランス業務で源泉徴収された報酬については、クライアントから支払調書が発行されるケースがあります 。

73. 損失繰越控除

ある年に事業所得がマイナス(赤字)だった場合、その赤字を翌年以降の所得から差し引ける制度です。青色申告者であればこの純損失の繰越が認められ、最大3年間にわたり赤字分を繰り越せます。例えば、開業初年度に経費が嵩み100万円の赤字になった場合、翌年以降の黒字からその100万円を控除して課税できます。繰越控除を受けるには赤字が出た年に確定申告書に所定の事項を記載しておく必要があります。フリーランスの開業当初や不景気で赤字になった場合でも、無駄にせず将来の利益と相殺できるので、青色申告の大きなメリットの一つです。

74. 免税事業者

消費税の納税義務が免除されている事業者のことです。前々年度の課税売上高が1,000万円以下であれば、その事業者は消費税の免税事業者となり、消費税の申告・納税をしなくてもよくなります(新規開業から最初の2年間も免税)。フリーランスの多くは開業当初、この条件を満たすため免税事業者としてスタートします。ただし2023年開始のインボイス制度により、免税事業者だと取引先が仕入税額控除を受けられない問題があるため、取引先によっては課税事業者になるよう要求される場合があります。免税事業者を続けるか課税事業者になるかは、売上規模や取引先の意向を踏まえて検討しましょう。

75. 課税事業者

消費税の課税義務がある事業者です。前々年度の課税売上高が1,000万円を超える場合や、適格請求書発行事業者として登録した場合などは課税事業者となります。課税事業者は取引に際して消費税を預かり、原則としてその差額(預かった消費税−支払った消費税)を国に納めます。消費税申告では、事業で使った経費等に含まれる消費税(仕入税額)の控除計算が必要です。フリーランスが課税事業者になるタイミングでは、消費税の知識や申告の手間が増えるため、必要に応じて税理士に相談すると良いでしょう。

76. 簡易課税制度

消費税の計算方法の特例で、小規模事業者が利用できます。課税売上高が5,000万円以下なら適用可能で、実際に支払った消費税額ではなく、業種ごとに定められたみなし仕入率を用いて仕入控除税額を計算します。例えばサービス業(第五種事業)の場合、みなし仕入率は50%なので、売上に対する消費税額の50%を仕入税額と見なして差し引けます。簡易課税を使うと消費税の計算・帳簿付けが簡略化され、場合によっては納税額も少なくなるメリットがあります。ただし適用を受けるには事前届出が必要で、原則として2年間は方法を変更できないなどの制約もあります。

77. 年末調整

給与所得者(会社員等)の所得税を年末に精算する手続きです。会社が従業員に代わって、1年間の給与所得や各種控除額を再計算し、本来納めるべき税額との差額を12月の給与などで調整します。これにより会社員は原則として確定申告不要で納税が完了します。一方、フリーランスはこの年末調整をしてくれる雇用主がいません。そのため、自ら確定申告を行って納税額を確定させる必要があります。なお、会社員でも医療費控除やふるさと納税など年末調整では対応できない控除を受ける場合は確定申告が必要です。

78. 日本政策金融公庫

中小企業や個人事業主に向けて融資(事業ローン)を行う国が出資する金融機関です。通称「政策公庫」や「日本公庫」。フリーランスや起業したての個人事業主でも利用できる「新創業融資制度」などを提供しており、担保や保証人なしでも借りられるケースがあります。民間銀行に比べ低金利で、返済期間も長めに設定できます。開業資金や運転資金が必要なとき、民間の信用実績が少ないフリーランスにとって強い味方となります。融資を受けるには事業計画書の提出や面談がありますが、自治体の創業支援機関などと連携したサポートも受けられます。

79. 住宅ローン控除

個人がマイホーム購入のため住宅ローンを借り入れた場合に受けられる税額控除(所得税・住民税)です。正式には住宅借入金等特別控除といい、年末の住宅ローン残高の0.7%相当額を10年間(条件により13年)にわたり所得税額から直接控除できます。

例えば残高2000万円なら年間20万円の税額控除となります。フリーランスでも住宅ローンを組んで住宅を取得すれば適用可能で、初年度は確定申告で控除申請を行い、2年目以降は年末調整で処理されます(フリーランスの場合は毎年確定申告で申請)。住民税にも一部控除されるため、所得税から控除しきれない場合も無駄になりません。

ただし住宅ローンは適用対象となる住宅の要件などが複数あるため、控除を利用する場合には慎重に要件を確認する必要があります。

80. 所得証明書(課税証明書)

自治体(市区町村)が発行する、その人の前年の所得金額や課税額を証明する書類です。正式名称は「所得課税証明書」などといい、住民税の申告内容に基づいて作成されます。フリーランスは給与明細や源泉徴収票がないため、クレジットカードの収入証明や子どもの保育園入園手続き、家賃保証会社への提出などで所得証明書を求められることがあります。取得するには住所地の市区町村役所で発行申請を行い、数百円の手数料で受け取れます。前年分の確定申告をしていないと「所得なし」の証明しか出ないので、正確に申告しておくことが重要です。

81. 納税証明書

ある税目について納税があったことを証明する書面です。例えば「その年の所得税を完納していること」を示す**納税証明書(その1)**など複数の種類があります。フリーランスが住宅ローンを借りる際や、ビザ申請時、公的支援を受ける際などに提出を求められる場合があります。国税の納税証明書は税務署または国税庁HPのシステムで交付請求でき、手数料がかかります。住民税の納税証明は市区町村で発行されます。必要な場合にすぐ取得できるよう、税金は期限までにしっかり納付しておきましょう。

82. 住民税申告

市区町村に対して行う住民税用の申告です。所得税の確定申告をしていれば通常は不要ですが、所得税の申告をしていない人(例えば所得が少なく所得税非課税だった場合など)は、住民税の申告を別途行わないと住民税や国民健康保険料が正しく算定されません。

住民税申告書には前年の所得や控除額等を記載します。フリーランスで年間所得が少なく所得税の確定申告義務がなかった場合でも、住民税申告を出しておくと自治体サービス(非課税判定)等で有利になる場合があります。各自治体の申告期限(通常3月15日)までにお住まいの役所へ提出してください。

83. 開業費

開業前に事業準備のため支出した費用を、後から経費として計上できる制度です。会社設立における「創立費」と似た概念で、具体的には開業前の市場調査費や研修受講費、広告宣伝費、事務所の敷金礼金、備品購入費などが該当します。開業費は、事業開始後に一括で経費計上するか、数年間にわたって償却(分割経費化)することができます 。

例えば、開業前にかかった100万円の費用を開業費として計上し、初年度に全額経費に落とすか、5年均等などで配分して経費計上できます。初年度に利益が出ているなら全額、赤字になりそうなら繰り延べるなど、税負担の調整に利用します。

84. 減価償却

長期間使用する資産(固定資産)の購入費用を数年にわたり経費配分する会計処理です。例えばパソコンやカメラ、車両、オフィス家具など耐用年数が1年以上の資産は、その耐用年数に応じて毎年少しずつ価値が減少すると見なし、取得費用を分割して経費計上します。

税法上、一度に経費にできる金額の基準は取得価額が10万円未満なら全額即時経費、10万円以上は減価償却資産として計上という形です (少額減価償却資産の特例で30万円未満を即時償却できる制度も中小企業等向けにあります)。減価償却費として毎年計上することで、大きな支出でも複数年に渡って損金化し、収益と費用の対応を図ります。

85. 家事按分

事業と私用が混在する費用を、合理的な基準で按分(分割)して経費計上することです 。フリーランスは自宅をオフィスとして使ったり、個人名義の携帯電話や自家用車を仕事にも使ったりするケースがあります。こうした支出はそのままではプライベートと事業が混ざっているため、使用割合を按分して事業使用分だけ経費に計上します。

例:自宅面積のうち仕事部屋が全体の20%なら家賃や電気代の20%を経費計上する、個人携帯の通話明細から仕事分を集計して◯割を経費計上する、などです。按分には客観的に説明できる基準(面積比・時間比・使用頻度など)を用い、按分計算の根拠もメモ等で残しておくと税務調査でも安心です。

86. 国民年金保険料免除制度

所得が低いなどの事情で国民年金保険料の納付が困難な場合に、保険料の全部または一部が免除される制度です。全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除の区分があり、申請者本人や扶養配偶者の所得に応じて判定されます。免除期間中は将来受け取る年金額も減額されますが、未納にするよりは免除制度を利用した方が良いです(免除期間も一定の条件下で老齢基礎年金の受給資格期間に算入されます)。免除を受けた期間の保険料は、後から10年以内であれば追納(遡って納付)することも可能です。フリーランスで収入が不安定なときは、市区町村役所で免除申請を検討しましょう。

87. 固定資産税

土地や建物などの固定資産に毎年課される市町村税です。自宅や事務所として使う不動産を所有している場合、その評価額に応じて毎年4月〜6月頃に納税通知書が届き、年4期に分けて支払います。

標準税率は評価額の1.4%(標準課税)ですが、住宅用地は軽減措置があります。不動産を持たないフリーランスでも、業務用の車両や償却資産に対して固定資産税(償却資産税)が課される場合があります。

また、自宅兼事務所の場合、事業で使っている割合分の固定資産税は経費に按分計上できます 。固定資産税は申告不要で自治体が評価・算定しますので、送られてきた納付書で期限までに納めましょう。

88. 補助金・助成金

国や自治体などが事業者に交付する資金援助のことです。一定の条件や事業計画を満たすことで、使った経費の一部を国などが補助してくれる制度が多数あります。例えば、小規模事業者持続化補助金(販路開拓等の経費2/3補助、上限50万円)やIT導入補助金、創業支援助成金などがあります。フリーランスでも要件を満たせば申請可能で、採択されれば補助金を受け取れます。

ただし事前の申請と審査が必要で、成果報告や経費証拠提出など手続きが煩雑です。公的補助金は返済不要なメリットが大きい反面、採択は競争率が高い場合もあります。新しい制度の情報をキャッチするには、中小企業庁や自治体のサイト、新聞などをチェックするとよいでしょう。

89. ファクタリング

売掛金(請求書債権)を現金化するサービスです。フリーランスの取引では報酬の支払いサイトが長く設定されることもあります(例:納品後60日後払い等)。そうした場合に、ファクタリング会社がその請求書を買い取り、代金を先払いしてくれます 。債権譲渡の形で行われ、手数料(数%〜数十%)が差し引かれますが、取引先からの入金を待たずに早期に資金調達できるメリットがあります。近年はフリーランス向けのオンライン完結型ファクタリングサービスも登場しており、緊急で資金が必要なときの手段として注目されています。ただし手数料コストがかかるので、資金繰りが厳しい場合の一時的な利用に留め、日常的にはなるべく使わずに済むよう計画的な運転資金管理を心がけましょう。

90. 副業

本業とは別に収入を得るために行う仕事のことです。会社員が勤務時間外に個人で仕事を請け負うケースなどが典型ですが、フリーランスの場合も他業種の仕事やアルバイトを副業として持つ人がいます。税務上は、本業・副業の区別なく全ての所得を合算して確定申告する必要があります。ただし、給与所得者(会社員など)が副業で得た所得が年間20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要という規定があります (この「20万円ルール」は所得税のみで、住民税は別途申告が必要な場合があります)。なお副業の有無によって社会保険の加入状況や扶養判定が変わることもあるので注意してください。

91. 電子帳簿保存法

伝票や帳簿などを電子データで保存するための法律です。近年の改正で、電子取引データ(メールやPDFの請求書など)は紙に印刷せず電子のまま要件を満たして保存することが義務化されました(2024年末までは宥恕措置あり)。具体的には、改ざん防止措置や検索機能確保など一定の要件を備えた形で電子データを保存します 。フリーランスの場合、会計ソフトやクラウドストレージを使って請求書・領収書PDFを保存することで対応できます。紙の書類についても、スキャナ保存制度により一定の要件下で電子化保存が認められています。電子帳簿保存法に対応することで紙のまま保管する手間を省けますが、要件不備だと認められないため注意が必要です。

92. 配偶者特別控除

配偶者控除の対象から外れる一定以上の所得がある配偶者について、段階的に適用される所得控除です。配偶者の年間所得が48万円を超えていても、例えば給与収入ベースで約103万円超〜201万円未満であれば納税者本人に配偶者特別控除が適用されます 。控除額は配偶者の所得に応じて最大38万円から0円まで段階的に減少します。つまり、専業主婦(夫)ほどではないがパート収入がある程度ある配偶者がいる場合でも、納税者本人の税負担を一部軽減できる制度です。なお、配偶者控除と配偶者特別控除は重複適用されず、どちらか一方(条件に合う方)が適用されます。

93. 入金サイト(支払サイト)

代金の支払い条件として定められる、請求から入金までの期間のことです。例えば「締め支払30日(サイト30日)」と言えば請求書発行から30日後に支払われる契約を指します。フリーランスの取引では**月末締め翌月末払い(サイト30日)**や、場合によってはサイト60日などもあります。入金サイトが長いと報酬を受け取るまで時間がかかるため、自身の資金繰りに影響します。できればサイトの短い(早く支払ってもらえる)条件で契約したいところですが、取引先の規模や業界の慣行によります。複数の案件を抱える際は、それぞれの入金サイトを把握し、入金予定表を作ってキャッシュフローを管理しましょう。

94. 税務調査

税務署が納税者の申告内容をチェックするために行う調査です。個人事業主の場合、税務署から事前連絡が来て、自宅や事務所で帳簿類や領収書類の提示を求められる任意調査が主流です。申告内容に不自然な点があった場合や高額所得者は調査の可能性が高まります。

税務調査では、売上の計上漏れがないか、経費に私的なものが混じっていないかなどを詳しく確認されます。きちんと記帳し証憑を保存していれば問題ありませんが、申告漏れが見つかると追加徴税や重加算税などペナルティを受けることもあります。

税務調査は通常のものであれば事前に連絡が来るので、慌てず税理士と相談し誠実に対応しましょう。

95. 課税所得

課税の対象となる所得金額のことです。課税所得 = 総所得金額 - 所得控除額の合計で計算され、この課税所得に対して所得税率が掛けられて税額が決まります。簡単に言えば「税金を計算する基準となる所得」です。

例えば事業所得500万円の人が各種控除で合計150万円差し引かれる場合、課税所得は350万円となります。所得税や住民税ではこの課税所得が多いほど税額も増えます。フリーランスは経費計上や控除の活用によって課税所得をいかに減らすかが節税のポイントとなります。

96. 振替納税

税金を銀行口座から自動引き落としで納付する制度です。事前に「預貯金口座振替依頼書」を提出しておくと、所得税や消費税などの納付額が期限日に指定口座から自動振替されます。

例えば所得税の確定申告をe-Taxで行い振替納税を利用すると、納期限が4月中旬頃(令和5年分では4/24)に延長され、その日に口座から引き落としされます。振替納税を利用すれば納付忘れを防止でき、窓口に行く手間も省けます。残高不足だと引き落としされないので、振替日前日までに口座残高を十分用意しておきましょう。なお、住民税や国民年金保険料等も口座振替の登録が可能です。

97. 税額控除

税金の計算において、算出された税額から直接差し引くタイプの控除です。所得控除が課税所得を減らすものなのに対し、税額控除は税そのものを減らします。代表例は先述の住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)で、年末ローン残高の1%を所得税額から引きます。

他にも配当控除や外国税額控除、政党等寄附金特別控除、扶養親族が多い場合の調整控除などがあります。税額控除は所得控除と比べて節税効果が高いですが、適用要件が限られています。フリーランスでは主に住宅ローン控除くらいしか該当しない場合も多いですが、該当するものは確実に適用しましょう。

98. 業務委託契約

企業とフリーランスとの間で結ばれる契約形態の一つです。仕事内容の完成や成果物の提出をもって報酬が支払われる契約で、法律上は請負契約や委任契約に分類されます。雇用契約ではないため、労働基準法や社会保険の適用はありません。フリーランスは業務委託契約に基づいて仕事を行い、納品物に対して報酬を受け取ります。

契約書には業務内容、報酬額、納期、支払条件(入金サイト)、機密保持などが定められます。企業側にとっては柔軟に専門家を活用できるメリットがありますが、フリーランス側は労災や失業保険の補償が無いため自己責任の部分が大きいです。契約内容を十分確認し、必要に応じて契約書を取り交わすことが重要です。

99. 帳簿の保存

帳簿書類や領収書などを一定期間保管しておく義務です。所得税法では、青色申告者は決算関係書類や現金出納帳などの法定帳簿を7年間、領収書などの証憑書類は5年間保存することが定められています (白色申告者は5年保存ですが、事業所得がある場合は令和2年以降事実上7年保存が推奨されています)。フリーランスは自宅で保管する場合が多いですが、紛失や災害対策としてスキャンしてクラウドに保存するなどバックアップもしておくと安心です。これらの保存期間を守らず書類を廃棄すると、税務調査で推計課税を受けるリスクや青色申告の承認取り消しの可能性もあります。

100. 分割納付

税金を一度に納めるのが困難な場合に、納税額を複数回に分けて支払うことです。税務署に相談し許可を受けることで、原則として1年以内の分割納付計画を立てて支払うことができます。

例えば所得税の納付額が大きく一括では用意できない場合、毎月分割で納める交渉が可能です。延納期間中は延滞税が多少発生しますが、滞納処分(財産差押え等)を避け計画的に納付できます。具体的な手続きとしては、所轄の税務署に出向いて「納税緩和措置(換価の猶予)」の申請を行います。事前に相談すれば柔軟に対応してもらえることも多いので、どうしても資金繰りがつかないときは早めに税務署に打ち明けましょう。


まとめ:100の用語を“あなたの武器”に変えるために

以上が「フリーランスとして知っておきたいお金・税金基礎用語100選」でした。長文お疲れさまでした! 読んでみて気づかれたかもしれませんが、フリーランスには会社員とは異なる「税金・社会保険・経理」などの独特なルールや選択肢があります。

  • 青色申告65万円控除を上手に活かすかどうか

  • 家事按分の計算をどの程度しっかり行うか

  • 国民年金基金小規模企業共済iDeCoをどう組み合わせるか

  • 個人事業主のままでいくか、あるいは法人化するか

  • 資金繰り(キャッシュフロー管理)と入金サイトの調整

  • 国民健康保険 vs. 任意継続の比較

こうした判断を下すには、まず基礎用語を正しく理解することが欠かせません。ぜひ本稿の内容を必要に応じて参照し、わからない言葉があればまた調べてみてください。そうした地道な理解の積み重ねが、やがてフリーランスとしての安定・成長につながっていくはずです。

なお、税制は改正が頻繁に行われるのが常です。インボイス制度をはじめ、ここ数年も大きな変更が相次いでいます。最新情報をキャッチアップするためにも、定期的に国税庁や各種公的機関のホームページ、信頼できる専門家の情報発信を確認するようにしましょう。


コラム:心が折れそうになったら…

フリーランス生活は自由な反面、一人で抱える不安や迷いも多いですよね。特に確定申告シーズンや、長い入金サイトの案件が重なったときなど、精神的に追い詰められてしまうことも少なくありません。

そんなときは、

  • 「なぜ自分はフリーランスを選んだのか?」

  • 「今の仕事のやりがいはなんだろう?」

といった原点に立ち返って、気持ちを整理してみてください。あるいは、日頃から同業の仲間と情報交換できるコミュニティを作っておくのも大切です。お互いの事例を共有することで「自分だけじゃない」と実感でき、税金や社会保険の失敗談・成功談も生々しく学べます。

また、税理士や社会保険労務士などの専門家に相談するのも手。悩みに直面したとき、プロの力を借りることで驚くほどスムーズに解決するケースも多いです。自分の苦手分野は外注や相談をし、本業に集中するのも賢い選択といえるでしょう。


最後に

「税金」という言葉には、どうしても“ややこしそう” “難しそう”という先入観がつきまといがちです。しかし、本レポートで挙げた100個の基礎用語を知るだけでも、かなり見通しがよくなるはずです。

  • インボイス制度消費税の仕組みを知っていると、取引先とのやり取りがスムーズになります。

  • 青色申告特別控除各種所得控除を活用すると、手元に残るお金が増える可能性があります。

  • マイナンバーカードe-Taxを上手に利用して、煩雑な手続きを少しでも効率化できるかもしれません。

フリーランスとしての働き方は、まだまだ社会的にも進化の途上です。だからこそ、**「自ら情報を取りに行く姿勢」**がとても大事。今回ご紹介した用語を足がかりに、さらに学びを深めていただければ幸いです。

もし途中でつまずいても、そこで投げ出す必要はありません。わからない用語があればネットで調べたり、専門家に聞いたりして一つひとつクリアにしていけばいいのです。焦らず、じっくり知識と実践を積み重ねていきましょう。

あなたのフリーランス生活が、より自由で豊かなものになりますように。
そして、この100選が少しでもお役に立てれば幸いです。

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公認会計士・税理士ひでとも
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