雨とプリン -直島旅行記vol.1-
畳の上に胡坐をかいてプリンを食べている。
今日は嬉しいことに雨だ。
日本家屋と雨。濡れた木壁は色が濃くなり、日中でも薄暗くなった部屋の中から雨の音を聞く。
直島に一人で来ている。直島は瀬戸内海に浮かぶアートの島として有名であり、島は小さく自転車と徒歩で移動する。自然とアートの調和をコンセプトに、多数の美術館や建造物が点在する。島は3つのエリアに分類され、東側の本村エリア、南側の美術館エリア、西側の宮ノ浦エリアである。
新幹線、バス、フェリーを乗り継いで約4時間かけて家浦港に到着した。前々から行きたいと思っていたのだが踏ん切りがつかず、学生生活ギリギリで念願の直島に来た。
宮ノ浦港には宿泊先の家主が迎えに来てくれた。白髪交じりの長髪を後ろで結んだファンキーな出で立ちのおじさんが、古びたパジェロミニの前で待っていた。彼が三日間お世話になる民家の家主、小野さんだ。
「どもども~~そんじゃ行きましょうか~」
見た目とは裏腹に物腰柔らかな人で、宿まで送ってくれた。パジェロミニはいつエンストしてもおかしくないほどががたつき、燃費の悪そうな音はやけに懐かしく、初の1人旅の不安をかき消してくれた。
日本語ぺらぺらの外国人の奥さんと2人で1年ほど前に直島に移ってきたらしい。たまたま旅行できた時に地元の方と仲良くなり、成り行きで東京からこっちに越してきたという。東京での生活から逃れるべく移ってきたのがここ直島だったのだ。古民家を改装し、家の中は色々な作品が置かれていた。
小野さんと奥さんは温かく自分を迎えてくれ、島のことについて教えてもらった後、雨が降っていたため先ほどのパジェロミニで本村に送ってもらった。
本村では、「家プロジェクト」というアートプロジェクトが展開されている点在していた空き家を改装し、街中を歩きながら鑑賞できる。
本村に到着し何件か鑑賞したものの、朝から何も食べておらず遅めの昼食をとるべく古民家カフェ「島小屋」に入った。メニューはプリンセットしかななく、極限の空腹状態だった自分は他の店を探す気力もなく、とりあえずプリンを頼んだ。店内(というよりも日本座敷)の畳に腰掛け、縁側の方に目線をやる。家を出てから何かとせわしなく、やっと一息つくことができた。そう、今回の1人旅の目的はのんびりすることだ。薄暗いカフェで胡坐をかき、外の雨をぼぅっと見る。店員さんがプリンとセットのコーヒーをもってきてくれた。想像以上の大きさだ。プリンを数口食べ、再び外に目をやる。
地面が雨に濡らされ、屋根が草木が雨を弾く音がする。薄暗い部屋の中から覗く濡れて色を増した家々の木壁、限りない曇天と雨音、そして机の上にはプリン。そのアンバランスさが心地よく感じられた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!! 東海道中膝栗毛の膝栗毛って「徒歩で旅する」って意味らしいですよ