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帝王学の書「貞観政要」から学ぶ組織運営のヒント ~ ⑩部下のせいにする人
現代の組織運営でも役に立つ貞観政要の話です。
貞観政要は7世紀の唐王朝で名君とされる太宗の問答の記録。
現代人にもわかりやすいよう原文にこだわらず、私の勝手な判断で表現を作り替えておりますことご容赦ください。
ある部署から太宗に、凌敬という役人がみだりに人から金品をもらい受けているという報告がありました。
凌敬は賄賂をもらっていたわけではないのですが、当時は官職にある者が副業をして市民から利益を得ることはみっともないこととされていました。
凌敬は頼まれて文章をつくったり、難しい書籍を講読してあげたりするのが好きで、それによって報酬をもらうことがあったのです。
凌敬を推薦したのは魏徴だったので、太宗は魏徴を呼び出し、その責任について問いただしました。
すると魏徴はこう言いました。
私は凌敬を推薦するとき、その長所は学識があり率直に意見を言うこと、その短所は趣味を生かして利益を得るのが好きであること。
そのことを私はあなたにちゃんと説明しました。
凌敬は私が短所として説明したとおり、趣味を生かして収入を得ていますが、まだその長所を生かしていないのは、凌敬のせいではなく、凌敬を使う側の問題です。
人材の短所にだけ注目して私を責め、その長所を生かそうとしないのであれば、私は納得しかねます。
太宗はそれを聞いて「もっともなことだ」と受け入れました。
私はハラスメント気質の管理者とよく話をするのですが、自分がパワハラをした理由を部下のせいにする人がほとんどです。
あんなダメな部下を押しつけられて迷惑だ。誰でも腹が立つに決まっている。腹が立たないなら管理職としてやる気がないからだ。
などと、まじめにおっしゃいます。
管理職の手腕とは、部下の能力を業務の成果に繋げることです。そのためには部下の性質を見極めて上手に使いこなす術が必要です。
その能力がない、つまり自分が管理職として無能であることを棚にあげて部下の無能をパワハラの原因とする。
そんな人材を管理職として採用しているのですから、その会社の経営者の能力もたかが知れています。
たとえば戦場にいる指揮官が上官に対して、
「優秀な兵士をもっとたくさん送ってくれればうまくやれます。」
と言ってきたらどう評価されるでしょう。
限られた戦力でどうにかやりくりするのが戦争なのです。
いま手にしている戦力を分析して最適な活用法を考えるのが指揮官(管理職)の仕事なのです。
「怒鳴れば言いなりになると思ったのにやらない。この部下はやる気がないんですよ。」
(いえいえ、やる気がないと言うのなら、それはむしろあなたの方ですよ・・・)
と思う気持ちを抑えながら、私はパワハラ管理職の不平不満を聞き取ります。
相手の本音を理解しなければ、こちらとしては何も判断できないからです。
そういう基本的なこともわからないまま管理職に任命され、問題が起きると責任を追及される。
そう。無能な管理職もある意味では犠牲者です。
人材の長所短所をよく理解して、適材適所の人事配置によって最適な業務効率を実現するのが経営者の手腕です。
たまたま気に入らない結果になったときにびっくり仰天し、なにもかも部下のせいにする経営幹部がたっぷり給料をもらっていたりする。
不祥事が発生する組織はたいていそれでしょう。
太宗はそういう愚かな人ではなかったのです。
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![心理法務カウンセラー 風営法-ハラスメント問題アドバイザー](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/129142030/profile_18a9a59089dbc62d19dbe0f69006bce4.jpg?width=600&crop=1:1,smart)