帝王学の書「貞観政要」から学ぶ組織運営のヒント ~ ①知りて沈黙するなかれ
現代の組織運営でも役に立つ貞観政要の話です。
貞観政要は7世紀の唐王朝で名君とされる太宗の問答の記録。
現代人にもわかりやすいよう原文にこだわらず、私の勝手な判断で表現を作り替えておりますことご容赦ください。
さて。
太宗が中書、門下の官僚にこんなことを言いました。
中書と門下は皇帝の命令を文書化する役所です。
「私の命令におかしなところがあれば、それに意見を言うべきなのに、最近意見を言う者がいないのは嘆かわしい。はいはいと言いなりになっているようでは、お前たちに任せている意味がないのだ。私の叱責を恐れて意見を言わない、なんてことがないようにせよ。」
と言われても、上司に対しては意見を言いにくいですよね。
そのあたりをよく考えて、上司の方から部下が意見を言いやすい雰囲気を作りましょう。
管理職の皆さんに「部下の本音を聞いていますか?」と質問すると、ほとんどの人が「ちゃんと聞いてまあス」とお答えになります。
ところが、部下の皆さんに聞いてみると「上司に本音なんて言えるわけないでしょ」と言われます。
だとすると、ほとんどの管理職さんは現実認識が甘いと思うのです。
「僕に言いたいことがあったらなんでも言ってね」
と部下に伝えておけば部下は本音を言うだろうという認識ではまだ足りません。
部下から信頼されていなければ、あなたがどう言おうと部下は本音を言いません。
ここで言う「信頼」とは、
「この人には本音を言っても大丈夫。仕返しとか怒ったりとかは絶対にないから」
と信じてもらうことです。
なんとなく、私は太宗を批判するようなことを言っていますが、太宗は部下に本音を言わせるために様々に配慮したエピソードがたくさん残っています。
「意見を言ってほしい」などと言いながら、意見を言わせないオーラを、本人も気がつかないで醸し出してしまう人はたくさんいます。私もそうでした。
だから定期的に、
「私って話しにくくない?」
としつこく聞いてみましょう。
しつこくですよ。しかも、
「俺って話しやすい相手だろ?」
みたいな聞き方はダメです。
その聞き方では
「話しやすいと言ってくれ」
と命令しているのと同じです。
とりあえず、自分が想像するよりも自分は話しにくい相手かも
と思っておくのがよいでしょう。