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この真意がわかれば風営法上級者|警察庁通達を分析


ヘンな臭いがする

私はコンプライアンス職場環境改善のアドバイザーでもありますが、警察庁が発した不可思議な通達を見てヘンな臭いを感じ取ってしまったので、この通達をもとに政府中枢で起きている心理的現象を考察します。

この記事はいずれ削除するかもしれませんが、私の頭の整理を兼ねて記事にしました。

私の専門分野の一つに風営法があります。
風営法に関係するニュースや通達等を日々チェックしているのですが、そのなかでこんな通達がありました。

令和6年3月8日付の警察庁の通達です。
2ページなので、風営法をよく知らない人でもサラッと眺めることができます。

なお、私は警察庁を批判したいわけではありません。

むしろ私は経験上、この通達の背景に様々なやむを得ない事情があるのだろうと推測しています。

今回はたまたま警察庁の通達を素材にして

すでにこういう現象が起きていますよ

という警鐘を込めて取り上げます。

◎アナログ規制の見直し結果を踏まえた風営適正化法等の運用について(通達)

https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian/hoan/hoantsutatsu/anarogukiseihuueitekiseikahou.pdf

許可証をネットで掲示してもいいよ

私はこの2ページを読んだあと、しばらくの間、意味がよくわからず、何度も読み返しました。

たいして複雑な内容ではありません。
この通達における「書面掲示規制」の部分について解説してみます。

もともと、キャバクラやパチンコ店などの風俗営業者は風俗営業許可証を店内に掲示する義務が風営法で定められていて、これも「書面掲示規制」と言えます。

この通達では「風俗営業者許可証をインターネットで掲示することは可能である」ということを各都道府県警察に知らせています。

ところが、風営法でも関連法令においても、<許可証をインターネットで掲示してはいけない>と思わせるような規定はもとより存在しません。

不可思議な通達の真意

各都道府県警は風営法に基づいて風俗営業者を監督する立場であり、警察庁は風営法の一般解釈を定め、風営法の適切な運用を国として支える立場です。

風営法の運用に関して、「こうせよ」「このように解釈せよ」という情報が警察庁から各都道府県警察に頻繁に通達されます。

しかし、ここで取り上げられている通達は、もともと自由にやっていい行為について

 <可能である> 

と伝えています。
 

この通達は都道府県警察に何を求めているのでしょうか。

私の理解ではこういう結論です。
よろしければぜひ、ご自分で通達を読んで内容をご確認ください。

一言で言えば、

<何も求めていない>

言い換えれば、

<この通達を無視してくれればいい>

ならば、なぜわざわざ通達を出したのか。

政府の施策に合わせたふり?

(以下通達から一部抜粋)

(この通達の)経緯
令和4年6月、デジタル臨時行政調査会において「デジタル原則に照らした一括見直しプラン」が決定され、我が国における全ての法令について、7項目のアナログ規制(「目視規制」、「実地監査規制」、「定期検査・点検規制」、「常駐・専任規制」、「対面講習規制」、「書面掲示規制」及び「往訪閲覧・縦覧規制」)に該当する条項について見直しを行うこととされた。
(以上抜粋おわり)

上記からは、デジタル臨時行政調査会という政府の機関が決定したプランにもとづき、風営法についても「見直し」を行う必要に迫られたから、風営法の所管官庁である警察庁が通達を出したという「経緯」が読み取れます。

この「プラン」には「書面掲示規制」に該当する風営法の条項の見直し(風俗営業許可証の掲示義務)が含まれていて、警察庁はそれについて<やります>という態度を取ったと推測されます。

いわゆる姑息な手段

私が思うに、こういう場合は
許可証の原本の代わりに電子画面での許可証情報の表示でも足りる
とか、
ネットで許可証を掲示すれば店内で掲示しなくてもいい
とか、
都道府県警察のホームページで許可情報を掲載する
といったことを検討しそうなものだと思うのですが、そういったことは検討しなかったか、又は、無理と思ったのでしょう。

検討した結果、無理だと思ったなら調査会に対してそう説明すればよいし、現場をいたずらに困惑させるような通達を出す必要はないのです。

しかし、見直しせよと言われたのに対して「無理です」とは言いたくなかったので、
こういう通達を出しました
つまり、
ちゃんと見直ししました
と言うことにしたかった。

この通達の内容は一見すると

許可証をインターネットで掲示してもよくなった

という規制緩和の意味であると早合点しそうですが、実はそうではなく、

掲示義務は今まで通りで、なおかつ今まで通りインターネットで掲示してもいいよ。それも、もともと自由なんだけど。

という意味になります。

この通達の文章の歯切れが悪いので、風営法を専門とする私でさえ、何度も読み返して不思議に思うわけですが、それは通達作成者が意図してのことで、この程度の誤魔化しが政府内では実際に有効であることが推察されるのです。

背景に存在する無意味な人たち

この通達によって風営法も風俗営業者もなんら影響を受けません。現状は何ら変化しないからです。

もし変化があるとしたら、この不思議な通達を出した警察庁に対する複雑な思いが沸き上がるという現象です。

調査会のプランを実行したフリをするために通達をだしたんだな。つまり無視しとけばいいのね。

これが風営法を理解している人の感想であり、風営法に関わらない人や関心の無い人にとっては別にどうでもいいこと。

まともに意思疎通ができている会社であれば、こんな無意味な通達案を作った責任者は「最近体調でも悪いのか」と周囲から心配されるか、「何事か!」と叱責を受けるかもしれませんが、いま、この国ではそういうことにはなりません。そして、国家の正式な通達として記録されます。

この調査会はすでに廃止されていますが、デジタル臨時行政調査会の人たちは、この通達を見てどのように反応したのでしょう。

風営法を所管している警察庁が「ちゃんと通達しました」と言ってるんだからちゃんとやってるんだろう・・・

または、この通達を読んでも何ら問題がないと思ってしまった。

または・・・

まさか、まったく読んでいない?

これが学識経験者などのご立派な方々で構成された調査会の実情なのでしょうか。

この非効率な実態に気がつかないのなら、彼らはどういう心理でその仕事をしているのでしょう。

やる気がないか、かなり無能な人たちが選ばれているか、そもそもこの組織自体が本気ではないということになるでしょう。

全く意味がないわけではないという言い訳

もちろん、私はこの活動が全く無意味であるとは思っていません。
かならず何らかの成果は上げたと考えています。

だからといって、このやり方で充分だとは思わないし、言い訳の理由にもなりません。

むしろ、こういう言い訳を理由として問題なしという結論へ導こうするのであれば、それは悪意のある人がよく使う手法であると私は考えます。

基本的な意思疎通ができておらず、ごまかしのための仕事が発生していることを許してしまえば、それは組織の腐敗の証拠でもあります。

この記事で示した事例は、私が見てきた風景のほんの一部です。

民間企業であれば、おかしな組織は経済競争で淘汰されますが、その淘汰を回避するために私は企業に対してアドバイスしています。

公的機関は淘汰されないので、なおさらのこと市民による監視がで重要です。

国家組織の腐敗防止は社会にとって最優先課題であるはずです。

真の問題は別のところにある

このような経緯で通達がだされ、誰も疑問をもたないまま、こういった手法が日々繰り返されている組織。

この日本という組織は、こんなに効率の悪い無駄な仕事を、税金を使って全国の警察や風俗営業者を巻き込んで、これからも続けてゆくのです。

私は警察庁を批判したいわけではありません。

デジタル臨時行政調査会とやらが現実離れした生ぬるい組織だから、治安に対して結果責任を持つ警察庁としては本気で相手していられない。

ということで、お決まりの現実主義的なパターンで対応しただけのことだと、私は想像しています。

だから、この国の上の方では、日々こういった不毛な活動が行われていて、警察庁はむしろ困りながら仕方なく防御的に対応しているのではないか。

なぜなら、こんな通達の実態にさえ気がつかない程度の人たちが、この国の重要な政策を決定し推進している現実が、この通達から読み取れるからです。

つまり、警察庁は彼らの能力やる気が低いことを見抜き、あきらめ、そして舐めている。

だから、こういった茶番劇が発生しうるのです。

「いや警察庁も良くないぞ」

というご意見はあるでしょう。
もしそうであるなら、事態はもっと深刻だということです。

この茶番劇でよしとする人々を選び、任せているのは誰か。
つきつめて考えれば、それは私たち国民なのです。

でも政府はちゃんと情報をだしています。
この通達をだしても何ら問題がないと彼らに思われている。つまり、国民もなめられているということです。

手に入りうる情報に目を向けず、実情を読み取ろうしない国民の方に問題があるのです。

政府だけの問題ではない

これが日本政府だけのことだとは思えません。

私たちは大事なことを任せる相手を根本から間違っていて、彼らを信じすぎ、ほったらかしにしています。

そういう心理状態にさせるように、実に複雑巧緻な仕組みができあがっていて、私たちは日々、こうして気がつこうとしないままになっているのではないか。

そうとしか考えにくいのです。

もう信じてはいけない

その実態をよくわかっていて、大組織に寄生してラクして稼ぐことが勝ち組の方程式だと信じ、その道を突き進んでいる一部の人たちが社会を動かしているという現実。

だから、想像もつかないようなおかしなことが、この国では起こり得ます。

それでも私たちは、「世の中そんなもんでしょ」「考えすぎだよ」などと思ってしまいますが、いやいや、そんなもんではないです。

官僚は法に従って活動する立場ですが、彼らが法を尊重しないのであれば法治主義の原理は崩れます。

では、法解釈を明らかにする道具である通達というものを、「面倒くさいから」という彼らの都合のために使ってよいのか。

それは法を軽く扱っているということであり、もはや法に従って仕事をしているつもりはないということであり、公私混同でもあります。

公私混同は組織においてもっとも忌むべきものです。

それでも問題がないと考える人々の割合がこの世の中において多くなっていくことを懸念します。

組織はこのようにして徐々に腐っていくからです。

私も含めてですが、そろそろ真剣に考える必要があるんじゃないかと思います。

組織の腐敗は、腐敗させる細菌の責任ではなく、細菌の増殖を放置する者管理責任が問われるのです。

要するに、もはや今そこにいる人たちを一切信じてはいけない段階に来ているということだと、私は考えざるをえません。

彼らがすでに平安貴族みたいな気分でいるのだとしたら、その他の国民としてはどうしますか?

とりあえず私は、風営法と職場環境改善の専門家として気になった現象を、ここで記事にしておきたくなった次第です。

こういった現象は企業組織でも起きています。

職場でヘンな臭いに気がついた社員は転職し、転職先でもまた同じような臭いを嗅いでいるうちに「世の中こんなもんだ」と考えるようになり、こうして社会全体が臭いを感じなくなります。

さて、あなたはこの臭いが気になる人ですか?


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心理法務カウンセラー 風営法-ハラスメント問題アドバイザー
ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 <(_ _)>