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【読者メモ#8】砂と人類 いかにして砂が文明を変容させたか ヴィンス・バイザー 草思社

砂が現代社会を作り上げる重要な主原料であることを視点に、砂と現代社会の繋がりを産業の視点から多角的に整理した、非常に盲点をついた視点の内容である。
なかなか砂を軸にしたものは出会ったことはなく新たな視座を与える斬新な書でした。

鉄筋コンクリート
道路舗装
ガラス・レンズ
という伝統的でこの近代の礎を成してきたテクノロジーをまずまとめている。

特に道路舗装の章には釘付けだった。
1919年、アメリカ国内の軍事車両での東西横断を試みたが道路舗装なく混乱を極め、「自動車、バス、トラックには未来はない」とまでアイゼンハウアーに思わせた。
1912年にアメリカ国内では2100万頭の馬が人と荷物を運ぶ社会だった。

1916年以降政府は膨大な資金を投じて道路建設を重点におく。
建設機械の開発もそのスピードを後押し。
アウトバーンに刺激をうけ、高速道路網も整備が1952年決定。

後に整備された社会は我々の知るところである。

日本でも日本列島大改造が行われた1960年以降、急速に道路網を初めとした「砂」を使ったインフラ整備された。

少々本論からは脱線するが、自動車が開発されたことにより道路網が広がる、必要インフラとして整備される姿はまさにイノベーションである。

筆者はこの過程で、従来では考えられない規模の砂が使われ、結果砂の社会的価値が上がり、砂にまつわる利害争い、土地乱開発、汚職などなどの副産物も生むこととなったと整理している。

同様の論点で各産業を分析している。

また後段では、昨今のデジタル化を支えているのも「砂」であるとし、各テクノロジー技術を支えるプロダクトと砂の関係を説き明かしている。

結論、筆者は、今後の砂が枯渇する社会が来るのは明確であり維持可能な社会、開発を行うことを説いている。

鉄を扱い社会インフラを扱う自身の仕事・アイデアにも多くの視点を与える良書でありました。

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