ゴキブリジュース
彼は歩きながら、ちょっとした休憩を取ろうと思い、街角にある古びた自販機の前に立った。その自販機は錆びついていて、表面には長年の汚れが積もっていた。ボタンを押すと、冷たい音が鳴り響き、ジュースが落ちてくる。
「本当に汚いな」と、彼は小さく呟きながら、紙コップに注がれるジュースを待っていた。
ジュースが注がれる音がしたので、手を伸ばしてコップを取ろうとしたその瞬間、何かがコップの中で動いた。
「うわぁああああ!」彼は思わず後ろに飛び退いた。紙コップの中には、リアルゴールドが注がれたはずのジュースに混じって、ゴキブリが静かに漂っているではないか。
「なんだこれ…」彼は目を疑い、再びコップをよく見た。確かに、ゴキブリがその中でぷかぷかと浮いていた。
目を背けようとしたが、何故かその光景が頭から離れず、彼はしばらくその場に立ち尽くしていた。ゴキブリの動きが一向に止まることなく、リアルゴールドと一緒に漂っている光景は、まるで悪夢のようだった。
「まさかこんなことが…」彼は呆れ顔で、手で顔を覆う。自販機のボタンにもう一度目を向けると、全く触れたくなくなった。彼は心の中でそのジュースとお別れを告げ、深呼吸をして、何もなかったかのようにその場を立ち去ることにした。
「今日は、ちょっと気をつけなきゃな」と、笑いながらも少し疲れた顔をして歩き出した彼だった。
彼は自販機の前に立ちながら、つぶやいた。「もったいないな…」リアルゴールドのジュースが無駄になってしまうのは、確かに惜しい。しかし、ゴキブリが浮かんでいるコップを見ると、その選択肢は到底受け入れられなかった。
「でも、ゴキブリジュースは無理だな…」彼は頭を振って、思わず笑いながらも、内心では少しゾッとした。たとえお金を払ってしまったとしても、あのジュースを口にするのは絶対に無理だと感じていた。
彼はそっと紙コップを置き、足早にその場を離れた。もう二度と、この汚い自販機の近くに来ることはないだろうと心に決めながら。ゴキブリジュースの恐怖とともに、その日の不運な出来事は心の中で笑い話に変わっていった。