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知られざる優等生、ドイツ産メロデスDecember Flower🇩🇪

知名度はほとんどないが、ドイツのメロディック・デス・メタル・バンドはDecember Flowerは埋もれるには惜しい輝き放つ存在だ。彼らの音楽は、スウェーデン発祥のメロディックデスメタル、いわゆるイエテボリ系のスタイルを基盤としながらも、ドイツ特有の堅実さと重厚さを加えた独自の魅力を持つ。特に彼らがリリースしたデモ『Moloch』(2008年)と1stアルバム『When All Life Ends...』(2011年)は、その進化の過程を如実に物語っている。

1. Moloch (2008年、デモ)

音質の点ではデモ音源らしい粗さがあるものの、楽曲構成の堅実さが際立つデモだ。特に注目すべきは、メロディックデスメタルの枠を超え、メロディックブラックメタルに接近したスタイルを見せている点だ。いや、この中間型スタイルこそデフォルトなのだろう。この影響は特にタイトル曲「Moloch」に顕著で、冷たくダークな雰囲気が全体を覆う。その一方で、リフと展開にはドイツ人らしい緻密さと安定感があり、単なるスウェーデンの模倣に留まらないオリジナリティを感じさせる。デモの段階から、彼らの音楽性の方向性はすでに明確であった。

2. When All Life Ends... (2011年、1stアルバム)

バンド名December Flowerからして、スウェーデンのIn Flamesへのリスペクトが剥き出しであるが、この作品は単なるフォロワーの域を超え、イエテボリ系への深い共感と大胆なアレンジを施した一枚に仕上がっている。

アルバム全体を通して、特に初期のIn FlamesやDissectionを彷彿とさせるメロディックでキャッチーな要素が際立つ。その中でも「The Apprentice」や「Your Darkest Path」、「As Darkness Reigns」といった楽曲は、つかみの良さが特筆される。もしIn Flamesの初期2枚が、さらにパワフルなドラムプレイと高いプロダクションで仕上げられたら—そんな仮想を実現したかのような爽快感と破壊力が、このアルバムにはある。

また、注目すべきは「And Blood Has to Be Shed」だ。この曲の冒頭は、In Flamesの名曲「December Flower」を彷彿とさせるノリで、リスナーに懐かしさと新鮮さを同時に与える。さらに、アルバム全体を貫く重厚なヘヴィネスと、無理のない抒情性の融合は、北欧の寒々しさや土着感とは異なる、ドイツ的な安定感と洗練を感じさせる。

考察: December Flowerの強み

December Flowerの音楽は、北欧メロデス直輸入系と一線を画す。彼らはイエテボリ系のエッセンスを巧みに取り入れつつ、それを独自の解釈で再構築している。メロディの抒情性は本家に一歩譲るものの、ドイツ的な重厚な土台と、ヘヴィネスを保ちながらも無理なく泣きを入れる堅実さが彼らの最大の魅力だ。

また、メロデスファンにとって特筆すべきは、北欧メロデスの影響をそのまま継承するだけでなく、米系メタルコアの要素も咀嚼して取り入れている点だ。このアプローチは、単なるリバイバルバンドにはない新鮮さを与え、彼らの楽曲に幅と深みを持たせている。

結論

December Flowerの『Moloch』と『When All Life Ends...』は、それぞれ異なる方向性でメロディックデスメタルの可能性を追求している。特に1stアルバム『When All Life Ends...』は、スウェーデンメロデスの影響を下敷きにしながらも、ドイツ特有の重厚さと堅実さを融合させた力作だ。シーンを去って久しいが、彼らの音楽はメロデスファンだけでなく、ブラックメタルやメタルコアファンにも広く薦められる。

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