ライブの平場
お笑いライブの合間やエンディングで、出演者が一斉に登場してわちゃわちゃするあれ。
客として観る分には芸人の人となりなんかが見えて楽しいが、演者として出る分にはとても苦手だ。
だいたい声の大きい人やキャラのある人、場を盛り上げられる自信のある人が前に出る。
私は声が小さく、主観的にも客観的にも前に出るようなタイプではない。
頑張って前に出たところで変な空気になるのが目に見えている(経験もある)から、基本的にMCに振られなければ前に出ないと決めている。
「滑ってもいいから前に出た方が良い」と言う先輩もいるが、そういう人たちは大抵元々平場が強く、私生活でも集団の中心人物であるように見える。
したがってこの意見は生存者バイアスである可能性が高く、鵜吞みにし実践すると痛い目を見る上に他の芸人からのヘイトを買いかねないと思い採用していない。
しかし、決して「平場を作ること」に消極的というわけではない。
例えば、バトルライブなんかだと、エンディングの平場で結果発表がある。
私は毎回どうせ入賞しないと思って臨んでいる。
手ごたえがある時は入賞しなかった時のショックを和らげるため、手ごたえがない時は「大してウケなかったのに、期待してバカみたい」と惨めな気分にならないためのメンタルハックである。
この時心がけているのは、とにかく「平場」という状態に擬態することだ。
常にスポットが当たっている人の方を向き、笑ったり驚いたり、といった、その場その場の流れに沿ったリアクションに徹する。
「その日の出演者A」を全力で演じるのだ。
ライブの映像を見ると分かるが、平場で一人だけ皆と別の方向を向いていたりリアクションをしていなかったりすると、驚くほど目立つのだ。
そういう奴がいるとお客さんのノイズになるから、前には出ない代わりに舞台と客席間の摩擦係数を減らすことに取り組む。
だから入賞者が呼ばれた後、笑顔で拍手とかするものの、その意図は祝福ではなく擬態である。
他人のウイニングランなど何も楽しくないし興味もないから、本当はマジで早く終われと思っている。
平場が苦手な理由はもう一つある。
ネタ見せに落ち、手伝いに回された人の顔がよぎるからだ。
事務所ライブは、あらかじめネタ見せがあって、合格者がライブに出演でき不合格者が手伝いに回される。
これは本当に残酷なシステムである。
「不合格=他の参加者に比べ面白くない=このライブに参加されるとライブのクオリティが下がる」という烙印を押された屈辱に加え、合格した仲間のネタや平場で楽しそうにする姿を無理やり観させられるわけだ。
人にもよるけど、個人的にライブの手伝いなど一生やりたくない仕事だ。
平場が盛り上がれば盛り上がるほど、その人たちのことを考え申し訳なくなってしまう。
来週ネタ見せ。あー。