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タバコ

最近タバコを吸い始めた。
現在4か月目で、今のところ一日も欠かさず吸っている。
順調に喫煙継続中である。

吸い始めたきっかけは、フリーライブの楽屋に居場所がないことだ。

ライブの入り時間は、だいたいどのライブも開演1時間ほど前、香盤が後の方だと、さらに1時間以上待たされることもある。 
その間芸人はネタ合わせをしたり、他の芸人仲間で喋ったりして時間を潰しているが、私の場合、ピンなのでネタ合わせも必要なく、練習も家で済ませるようにしている。
さらに人見知りで友人が殆どいないため、待ち時間がとにかく暇なのだ。

ネットやYouTubeも、行きの電車の中で散々見ているため飽きる。
ネタやnoteを書く気にもなれない。個人的にライブの楽屋は、一人で何かに没頭するような雰囲気ではないのだ。

喫茶店で時間を潰すにもお金がかかるし、好きな芸人のネタは後ろの方で見たいから、時々は戻りたい。
結果、楽屋から離れられて、かつすぐに会場に戻れる避難所として喫煙所がうってつけだと思ったのだ。

元々タバコは好きでも嫌いでもなかった。
1回試しに吸ってみたことはあったが、ただの煙としか思わず、別にはまらなかった。
嫌煙家ではないものの、「これの何がいいんだろう?」とニコチン中毒というものにピンと来ていなかった

しかし、頑張って一日も欠かさず吸っているとなんとなく中毒性を感じてくるものだ。
なるほど、「絶対に吸いたい!吸わないとおかしくなる!」といった禁断症状はないものの、「作業が一段落したし吸うか」といったブレイクのタイミングには絶妙な中毒性だ。
禁煙一週間は平気だが一年だと厳しい。まさに「嗜好品」という分類がしっくりくる心地の良い中毒性である。

タバコ初心者の不満として、コンビニの陳列がレジから遠い。
初心者だからパッケージのデザインやニコチン、タール値など、いろいろ見て検討したいが、遠いので出来ない。
仕方なくパット見でカッコいいデザインのを買っていた。

いろいろ試した結果、ハイライトに落ち着いた。
他の銘柄は煙が目に染みるのだが、これは不思議とそんなに染みない。「この店の肉は胃もたれしない」みたいに、タバコと身体の相性があるのだと知り勉強になる。
メンソール系もたまに吸う。慢性鼻炎でいつも鼻づまりしているからスースーして気持ちが良い。

芸人のトークで、喫煙所で生まれる絆や交流の話をよく聞いていた。
人見知りながら、そういう見ず知らずの人とのコミュニケーションを多少期待していたが、今のところない。皆スマホを見たり遠くの景色を見たり、各々の一服の時間を満喫している。
どうやら一昔前に流行った「タバコミュニケーション」とは、社交的な人間に限った話で私には関係なかったようだ。

しかし、楽屋のような窮屈さは無い。
そこに居合わせた三者三様の人間たちが、同じ動きでしっとりと愛好に興じる様子がローなアンサンブルを生んでいる。
無機的なようで有機的な磁場がはたらいており、それが思いのほか私には居心地が良いのだ。

またすぐにライブがある。
どうせ誰とも喋らず、のそのそと楽屋を後にし喫煙所へ向かうだろう。
こうして寿命をすり減らしていくのだ。


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