1,奈良市学習塾のバイト同僚女性の飲み物に唾液や尿を混入した事件の裁判傍聴記録(2024年9月25日)ーその1
はじめに
この記事では昨年12月から今年4月にかけて奈良市の学習塾で複数の同僚女性の飲み物に自身の唾液や尿を混入させたとして捕まった21歳アルバイト男性の初公判をまとめたものです。私のほうから語彙を変えたり順序を変えるなどの編集をしています。
事件の概要は以下の記事からお読みください。
裁判開始前に
平日の昼間であるためか、傍聴席に人はまばらでした。それぞれ検察側と弁護側の傍聴席に関係者とみられる人々が座っていました。のちにわかることですが、弁護側の関係者席に座っていた傍聴人は被告人の両親でした。
裁判の開始ー冒頭手続き
ここでは本人確認のみをまとめます。
本人確認
通常の刑事裁判であれば裁判官による本人確認が最初に行われますが、本裁判では被害者の個人情報がわからないように手続きを進めていく旨の告知がなされ、被告人にも被害者の特定につながる証言はしないよう伝えていました。
被告人の人物像については以下に箇条書きしていきます。
髙崎颯人(タカサキアヤト)
平成15年生まれ
職業大学生(現在も通学中)
身長は男性の平均程度だが、がたいがよい
スーツ姿に短髪の頭
奈良市内に両親と同居している
前科はなし
父は会社員
母はパート
証拠調べ手続き
冒頭手続きが終了し、証拠調べに入ります。提出された証拠は以下3つです。
甲1号証から甲19号証
乙1号証拠から2号証
弁1号証から弁9号証
また、被告人の母に対する証人尋問と被告人本人に対する被告人質問がありました。
甲1号証から甲19号証
甲号証とは検察の提出する被告以外に関する証拠です。
今回の裁判における甲号証は被害者AさんからDさんの被害の内容等でした。また、被告人に厳しい処罰を求める旨がありました。
乙1号証から乙2号証
乙号証とは検察の提出する被告人に関する証拠です。内容はざっくりと以下の通りでした。
被告人は父親との関係でストレスを抱えており、これが動機となった。
創作物から女性に体液を飲ませるシチュエーションに関心を持つようになった。
写真?(うまく聞き取れませんでした)に体液をかけていたがそれがエスカレートして今回のような犯行に至った。
女性に対する性的欲求と支配欲があり、女性であればだれでもよかった。
弁1号証から弁9号証
弁号証は弁護士の提出する証拠です。内容はざっくりと以下の通りです。
被告人は深く反省し、二度とこのようなことを行わないと表明している。
今後、被告人は被害者に接近・接触をしない。
今後、被告人は事件現場とその最寄り駅には一人で近づかない。
被害者らに対する賠償の事実がある。
被告人の父親による被害者らへの謝罪の手紙
証人尋問
証拠調べが終わり、被告人の母親が傍聴席から証言台へと移動し、証人尋問が始まりました。被告人の母親は終始涙ぐむ様子でところどころ言葉に詰まらせながら質問に答えていました。
また、被告人もそのような母親の姿を直視できないのか終始うつむいて聞いていました。
証人尋問はそれぞれ弁護士のターンと検察官のターンでまとめています。
弁護士による質問
Q. 被告人の犯行についてどう思いますか?
A. 被害者の女性は恐怖しかなかっただろうし、一生心に残るようなことをしました。自分の息子がなんてことをしてしまったのか、被害者の方々に対して申し訳ないです。
Q. 被害者に対して賠償はしましたね?
A .はい。賠償金は息子本人の貯金と不足分を家計からねん出しました。
Q. 犯行前後の被告人の様子はどうでしたか?
A. 様子の変化は見られなかったです。元々自分から話すような子ではなく、私から話しかけて答えるといった会話が常でした。
Q. 当時の被告人に対してどのような対応をとっていましたか?
A. 息子が父親との関係でストレスを抱えていることには気づいていました。そのため、旦那に注意したり、息子に話しかけるなどの対応をしていました。私は息子本人がストレスでどうにかなってしまうことが怖く、まさか他人を加害するとは考えられなかったです。(当時の対応を)深く後悔しています。本人には思いとどまってほしかったです。
Q. 当時の被告人の女性に対する考え方はどのようなものでしたか?
A. 犯行を重ねる息子はどれだけのことをしているのか分かっていなかったのだと思います。
Q. 今後両親ができることは?
A. 絶対にこのようなことをしないよう言い聞かせ、家族内でため込まずに話せる関係を築きます。また、カウンセリングなど、第三者にも協力を仰ぎます。
Q. 被害女性たちについてどう思われますか?
A. 息子の犯したことで被害者の方々はつらく苦しい思いをしています。申し訳ないです。被害者のご両親にも、大切に育ててきた娘さんを苦しめられ、申し訳ないです。
検察官による質問
Q. 被告人に犯行の予兆はありませんでしたか?
A. 気づけませんでした。当時は本人の心配だけをしていました。
Q. なぜ被告人はこのようなことをしたのだと思いますか?
A. 息子の心にため込んだものがあってこのような犯行に至ったのだと思います。
Q. 当時、被告人からストレスに関する相談はありませんでしたか?
A. 私からストレスはあるか、と声かけをすることはありましたが、息子本人からの相談はありませんでした。(相談がなかったことに対して)親には言いづらかったのだと思います。
Q. 今後の被告人に対する監督はどうしますか?
A. 旦那と話し合った結果、家庭内ではストレスをため込まないような関係づくりを、息子本人については(性加害や性依存の)治療プログラムを受けてもらうことになりました。
Q. 今回の事件についてどのように知りましたか?
A. 警察から聞いて知りました。
Q. 事件発覚直後の被告人への対応は?
A. 叱責するなどしました。
次回へ
時数の関係上、被告人質問は次へと繰り越します。