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第14話「次女 美咲」
第2章「それぞれの人生編」
花宮美咲(次女)
2002年生まれの22歳。
大学に通う美咲は現在、最終学年を迎えている。
マイペースで冷静な性格ながら、強いこだわりを持ち、流されることなく自分の価値観を貫く芯のある女性、それが次女美咲である。
母親と死別したのは、彼女がわずか5歳のとき。
そのため母との記憶はぼんやりとしたものが多いが、唯一はっきり覚えているのは、母と一緒に歌を口ずさんでいた瞬間だった。
幼い頃から音楽を愛し、特に父健治のレコードが大好きだった美咲。
レコードそのものが宝物のように思えた美咲は、父のコレクションを勝手に引っ張り出してはいつも叱られていた。
美咲の小さな頭に大きなヘッドホンをつけ、ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」に合わせてぴょんぴょんと飛び跳ね、腰を振る姿は、家族をほっこりさせる微笑ましい光景だった。
その一方で、健治の好きなコートニーパインの曲をかけると、「これ、ちょっと渋すぎるね」と5歳児らしからぬコメントをして大人達を笑わせいた。
母を亡くした美咲にとって、音楽は心の支えであり、幼い頃から聴き慣れた洋楽は彼女の世界を広げてた。
そして自然と海外への憧れが芽生え、英語の勉強に励むようになる。
いつか海外で暮らし、自分らしい人生を謳歌したい。
それが美咲の夢だった。
父健治はそんな美咲の夢を尊重し、彼女が自由に人生を選択できるよう支え続けた。
しかし、大学卒業を目前に控えたある日、父もまた他界してしまう。
この出来事は、美咲の心に深い悲しみをもたらしたが、彼女は冷静だった、と言うより、冷静でいなければダメだと自分に言い聞かせていた。
「目の前の課題を乗り越えられないなら、何をやってもうまくいかない」
そう自分に言い聞かせる美咲は、ふくろう亭を三姉妹で再建させる現実と向き合う決意を固めたのだ。
その美咲の考え方は正に、父健治と同じDNAを受け継いでいた。
第2章の後半では、美咲に恋が訪れる。
しかし、その相手の恋敵(こいがたき)は身近な人物であり、彼女は自分の気持ちに葛藤する。
叶わぬ恋に胸を痛める中、海外で新しい人生を歩みたいという夢が再び彼女を突き動かすが、
三姉妹の結束でもある「ふくろう亭」も守らなければならない。
美咲はヘッドホンでケミカルブラザーズの
“Hey Boy Hey Girl” を聴きながら目を閉じている美咲の姿は、どこか孤独でありながらも力強い希望に満ちていた。
そして人生の後半、美咲はその名の通り、誰もが羨むような”美しい花を咲”かせることになる。
そんな美咲がふと口ずさむ曲は、母と聴いたあの懐かしいメロディ(It’s my life)かもしれない。
彼女の人生は、音楽とともに続いていく
軽やかで、温かく、そして力強く🎧
〜次回は花宮亜子の人生〜
つづく 🦉