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落し物を拾って仲良くなったおば様

親愛なるあなたへ

今朝も寒いね。
朝目覚めてから「エイヤッ」て気合いを入れないと布団から出られない日々だよ。

ねぇねぇ。
あなたはこれまで
誰かの落し物を拾ったきっかけで仲良くなった人っておる?

私おるんよね。

高校生の頃のお話。
今日はこれをあなたにお話したいな。
ちょっとだけBUMP OF CHICKENの繋がりもあるんだ。

高3かな、受験生でね、志望大に欲しい資格が一気に全部取れる京都女子を思ってた頃。
その日の朝降った雪がまだ多く新雪も残ってた。金沢の冬は寒くて雪が多かったからね。
学校前のバス停でバスを待ってた時に、1台のタクシーが止まった。そこから一人のおば様が降りてきたのね。そしたら、そのおば様の折り畳み傘がポロッと落ちてね、おば様は気づかずにそのまま歩かれていったの。
私はすぐに傘を持って追いかけて声をかける。

「すいません。この傘落とされませんでしたか?」

次の瞬間、彼女がぱぁぁって少女のような明るい笑顔になってね、私に「あら~~!この傘私のとってもお気に入りの傘なのよ~!どうもありがとう!!」てものすごい喜んでくれるの。

そしたらそのままおば様は、次バスに乗るため、私が今居るバス停を探してたらしくてね。タクシーから降りた時はバス停が目に入ってなかったみたい。

なら一緒に乗りましょうと2人でバスに乗りながらいろんなお話するのよ。
私が受験生である旨を伝えて、「京都の大学目指してるんです」と話すと、またおば様目をキラキラ輝かせて、
「あら~!いいわねぇ~!私京都大好きなのよ~!」とまたお話をしてくれるの。

彼女が人生で一番辛かった時、広隆寺の半跏思惟像を見て、その像のあまりの美しさに涙したそう。
「だから京都はとっても私にとって思い入れのある場所なのよ」って。

私彼女のお話聞きながらバスで泣いてね、
この人との出会いをここで終わらせたくないと思ったから、名前と電話番号と住所を教えてもらってメモした。
「素敵なお話をありがとうございます。いつか必ずお礼に伺わせてください」って。

私には、私の為に神様が用意してくれた出逢いだと思ったの。

そして無事京女に合格した後に、
彼女に金沢の美味しいお菓子とお手紙を添えて彼女の家に届けるの。

すぐにお礼の電話が来てね、何ヶ月も前なのに私の事も覚えててくれて、それはそれは喜んでくれてね。
一度家に遊びに来ないかって誘ってくれるの。

お家の彼女の部屋は、彼女の乙女心がある可愛い雑貨や綺麗なもので囲まれていてね、この場所が彼女にとっての日々の暮らしの安息の場なんだろうなとすぐに分かった。
ご主人は建設関係の自営業で、自宅そのものがいろんな人が出入りあったり、心休まる事がない中で、自分専用の自室を隣に作り、そこで心の安らぎを得ているのよとお話してくれた。

私が当時高3の時に、彼女は70後半くらいだったのかな。そんな年齢差も感じないくらい、話が尽きなくてね。
大学行く前に一度お家に遊びに行ったことをきっかけに、在学中は文通を(彼女も私も手紙を書くのが大好きなの)するの。
長期休みの度に、お家に呼んでくれてね、彼女がお昼やお茶をもてなしてくれて。

私のことを「梨絵ちゃん梨絵ちゃん」と可愛がってくれたの。
息子さんが2人いて、ご長男さんは確か海外の大学へ行かれて研究職として頑張っててね。既に結婚されてるんだけど、ほら、お嫁さんには気を遣うよね。
「梨絵ちゃんは娘みたい」と言ってくれて、彼女のお気に入りのデパートに連れてってくれては、仲良しの店員さんに「私ねー、娘が出来たの」ってなんともチャーミングに私を紹介してくれたりしてね。

次男さんはバーを経営されてて、そこにも2人で遊びに行ったり。彼女は「母親が一人で行くと息子は嫌がるから。でも、梨絵ちゃんが一緒なら気兼ねなく行ける」
って。

それから、彼女のお家に一泊お泊まりした事もあるよ。「梨絵ちゃんとお泊まりしてみたいの。私の夢なのよ。」と言ってくれてね。

2人でちょっといいお店のパスタ食べたり、一緒に映画館にも行ったり。私毎回すごく楽しかったなぁ。

彼女に、お気に入りのスナックも連れてってもらうのよ。

常連さんのおじ様おば様が溢れる中で、学生は私一人。
めっちゃ珍しがられてね。

スナックって皆でカラオケ歌うでしょ?!

ここで、わたし花の名歌った!!!
ここで、やっとBUMP OF CHICKENと繋がるの!!

彼女も、
周りのお客さんみんなも、
「すごくいい歌ねぇ~~~!!」ってめっちゃ感動してくれたよー!

彼女といろんなお話する中でね、彼女からいろんな大切なこと教わるの。
女友達との関係の良さ。お付き合いは、双方が同じ熱量と同じ優しさを持って初めて成り立つこと。

ご主人とのこれまでの関係。離婚しようと思ったこともあった事。仕事でワンマンなご主人に、疲れていた事。自分だけの楽しみに溢れた部屋を持てて、ようやくバランスが取れていること。

いつも彼女からは、少女のような心の可愛さと共に、どこか寂しげで繊細な所も感じていたのね。

私が彼女のお家に遊びに行くのも、ご主人的には大歓迎ではないことは、薄々私も感じていてね。

大学卒業後は、私が仕事すごく忙しくなってしまってなかなか会う頻度も少なくなってしまってね。
その後結婚引越しやらで、お手紙もとぎれとぎれになっちゃって。

年賀状のやりとりは続いてたんだけど、いつの間にか彼女の方からはもう来なくなってね。

何回か旅行のお土産にお菓子を贈ったりしてるんだけど、いつもなら必ず連絡くれるのに、それもなくなってね。
多分もう亡くなってるかもしれないんよね。

私にとってとっても大切な出逢いやったんよね。

あなたの心に残ってる出逢いも、またいつかお話聞かしてたいね。

聞いてくれてありがとう。

心より愛をこめて。

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