【短編小説】亡き義父がくれた営業係320人の一等賞表彰 第1話
「もしもし、小林!園田支店の鬼沢だ。元気にしてるか?」
一番聴きたくもない声だった。用事も無いのに朝から電話だった。前支店勤務時の支店長だった。
僕
「何でしょうか?」
鬼沢
何でしょうかであれへんがな。」
紳士つらして静かに暴言を吐く人でした。
「お前が転勤して、あの宝くじ当選金預け入れの1億円全額払い出されたやないか!何故、預け入れ時に前任の中山支店長に受入を断りましょうと進言しなかったんや!」
僕
「断れるような状況ではなかったですよ。すみません。」
鬼沢
「すみませんですまへんがなあ!」
吐き捨てるように受話器を切られました。
ちぃっちゃい男だなあと感じました。不正をしたわけでもなく、数年以上前に世話になったお客様のご厚意により預けてもらったあと、誰も担当者訪問しないせいで、払い出しされたくせに、本末転倒、腹わた煮えくり返ってました。
そして、その1ヶ月後のボーナスを支店長から手渡される時の事だった。
絵入支店長
「小林君ボーナスの明細書渡すわなあ。今回、10万円カットやからなあ。」
「これは僕の査定ではないからな。前支店長の査定だからな。理解してや!鬼沢支店長はやり過ぎやなあ」
確かに僕も生活がかかってたから、やり過ぎやなあと感じました。これを見返してやるには営業係の成績で表彰されるしかないなあと心に決めました。
前支店の園田支店の反省もありました。担当エリアが住宅街なので、事業所・工場等の事業先がない為、一般の会社の売上先に相当する融資先がなく毎月数字を作る事が出来ず困ってました。なので毎日のように鬼沢支店に怒鳴られ追い込まれていました。他の若手の担当者は事業先を多く抱えており、仕事は忙しいが数字を作るのは楽勝でした。なので住宅街で預金を集めても馬鹿にされてました。
現在勤務している新庄支店も前任者が預金先しか回っておらず毎月の融資実行額も少なく苦労してたようで、後任の僕も泣かず飛ばずでした。現在の支店長も前支店の僕の成績だけを判断して、尚且つ今の店の成績が上がってない事から、だんだん風当たりを強くなって来ました。
しかしながら、現在の店舗が住宅と事業所が点在しているエリアで前の店舗よりはチャンスがあるかなと、また、鬼沢支店長へ見返したい気持ちが強く逆襲がここから始まりました。
次回に続く
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