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チェコ野球の歴史(3) メジャーリーグベースボール
米ソにおける野球の公式戦と冷戦終結
1988年のプラハ・ベースボール・ウィークにおいてチェコスロバキア代表チームは、モラビア地方のクラブチームからメンバーが選出された。そして代表チームはこの国際大会のデビュー戦で2位という快挙を成し遂げた。
そしてこの大会はまた、野球の歴史に興味深い出来事を刻んだ。
ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国(RSFSR)の代表が初めてデビューしたのだ。 また、アメリカの大学選抜であるAthlete in Action(AIA)も参加し、ソ連とアメリカが初めて激突した。政治的に大きく異なる2つの陣営のチームが公式に対戦する初めての機会であった。
サッカーやアイスホッケーでは両国の対戦は東西冷戦下でも行われていた。サッカーやアイスホッケーは身体的接触のあるスポーツであり、選手たちが感情を露わにすることが多く、感情の高まりが遥かに大きいスポーツである。
しかし、プラハ・ベースボール・ウィークのアメリカとソ連の試合では、特別なことは何も起こらなかった。ただ、野球の試合が行われただけであった。
1989年秋、ベルリンの壁が崩壊し、チェコスロバキアでも共産主義政権が終焉を迎え、国民は遂に自由を手にした。
その年の12月、米ソ両国の首脳がマルタ会談で冷戦終結の共同宣言を発表し、その後、東西ドイツは統一され、ソビエト連邦という社会主義国が消滅した。
チェコスロバキアの野球にとって、この政治的・社会的な変化は大きな転機となった。東西冷戦が終結した翌年の1990年のプラハ・ベースボール・ウィークには西ドイツやオランダなど、旧西側諸国の国々が参加した。
チェコスロバキアの選手は、初めて目にする本場アメリカ人の打球に驚愕した。外野を守っているとこれまでに見たことのないような高いフライが飛んできた。落下点に立ち、今か今かとボールが落ちてくるのを待っていた。
トーナメントの雰囲気も一層素晴らしくなった。プラハ・ベースボール・ウィークの会場には観客がグラウンドの周りを埋め尽くしていた。
この時代、日本では東京ドームが開業し、西武ライオンズが黄金時代を迎えていた。プラハにまだ野球場はなかった。
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民主化により生まれたアメリカとの交流
1990年代はチェコスロバキアにとって多くの変化をもたらした。創造的なエネルギーの噴出と新たに得た自由への純粋な熱意を否定することはできなかった。多くの人が、自分の夢にチャレンジし、それを実現させていった。チェコスロバキアでも野球の夢が大きく膨らんだ。
1992年、バルセロナオリンピックで野球が正式競技となった。チェコのスポーツ界でも野球の地位が向上し、資金面でも改善がなされたという。また、野球とソフトボールが明確に分離されたのもこの頃であった。道具や設備の不足という面では課題が残っていたものの、レベルの向上が期待できるような環境が整っていった。
この年のプラハ・ベースボール・ウィークでは、メジャーリーグベースボールが、4つのチームをプラハに送り込んだ。これらのチームは大会史上最も強力なチームであった。決勝はアメリカのチーム同士が対戦し、カリフォルニアの大学生で構成されたチームが優勝した。
アメリカの選手達にとってはエキゾチックな異国体験であった。クレジットカードが使えない国に来て、選手達はエアコンがないホテルに宿泊した。ショックを受けた選手もいたようだ。
しかし最も重要なことは、この大会の後、ジャーリーグが協力して、トーナメントを終えた選手たちがチェコ全土に散らばり二名もしくは三名のグループで各地のクラブを訪れて、野球の指導を行ってくれたのだ。
彼らは、初心者から経験者まで、さまざまなレベルで本場アメリカの野球を教えた。基本的なことから、時には高度な野球技術まで、これがメジャーリーグベースボールとの最初の素晴らしい協力の一歩となった。
東西冷戦の終結で本場アメリカの野球に触れたチェコ野球、彼らの物語はここから急激に加速していくことになる。
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(続く)