ヒモになりたいアラサー男の無能日記 第2話新職場

止まらないため息にうんざりし、さらにため息が漏れ出すという負のループに陥っていると新職場の最寄駅に辿り着く。これがピカピカの新卒だったら社会人になる不安とこれからの人生への希望でドキドキしたりワクワクしたりするのだろうか?しかし、こっちは既に底辺を経験している目が死んだアラサー男だ。ある意味で面構えが違う。

最寄り駅から新職場まで歩いて約10分、この道がこれからの人生で最もストレスの溜まる500mになる事は間違い無いだろう。ビルの隙間の薄暗い道はこれからの自分の人生の道のりそのものなのだろうか。新職場到達前に吐き気と腹痛はmaxになった。そうこうストレスを無限に生成している内に新職場が入った雑居ビルに到着する。ビルに着くと不思議とため息は止まっていた。俺の最後の社会性を宿していた部分が責めて初対面ぐらいは取り繕うとしたらしい。

新職場ではまだシャッターが上がっておらず来客用と思われるインターホンを押す。本日から働く中途の人間であると伝えると金属質のドアがのっそりと開く。ドアはなかなかの重さがあるのか開いた振動がシャッターに伝わり軋む音が静寂を保っていたフロアに広がる。中から白髪頭の高齢前期ほどと思われる男性...いや、おっさんが現れる。背は高くないが妙な威圧感と凝り固まってできたのであろうへの字型の口が社交的でない人物であると自己紹介していた。

元気よくとは行かないが無難に挨拶をして中に入る。指定された時刻に到着したが本来の始業時間はまだ先らしく職場内は閑散としている。中にいたのはさっきの白髪のおっさんと、30代後半ぐらいであろう男性だ。ジェルで固めたのであろうテカッた髪とコーヒー臭い息がいかにも意識高い系でございやすといった具合だ。どうやら自分が所属する課の課長らしい。

この時点で既に新職場を辞職し、すぐにでも帰って布団の中にくるまり二度寝をかましたくなったのは言うまでもない。数日前までクソニートやってた陰キャアラサー男にとって、天敵とも言えるような2トップのお出迎えに心はバッキバキに折られていた。

辞めますの言葉が口から飛び出て来ないよう祈りながら始業時間を待つ今日は入社初日なのだ...

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