ヒモになりたいアラサー男の無能日記 第1話転職
新しいとは言えないが使い古されているとも言えない中途半端に使われた形跡のある革靴を見て、自分の現状をこれ以上的確に表している物はないなと思いながら靴ベラを使い足をねじ込む。
今日は奇跡的に成功した転職先への初出勤日なのである、転職先は小さい金融機関(危ないところじゃないぞ)。金融を選んだ理由は安定している、残業少なめ、休みがカレンダー通りに貰える。これだけだ。
自分で言うのもなんだが、よくこんな奴採用したなと思う。新職場の人事部の目の節穴っぷりに嘆けばいいのやら転職できた事に喜べばいいのやら複雑な心境に早くもため息が漏れ出す。
前職はITエンジニア、と言えば聞こえはいいかもしれないが、実際やってたことは鯖がエラー吐いた時に報告する。これだけ。これだけのために仮眠無しで一晩中パソコンの前に座り14時間。退屈で狂いそうになるがスマホをイジるわけにも行かなずただひたすら時が過ぎるのを待つ。
なるほど、IT業界が未経験者を大歓迎している理由が分かる。誰でも出来るだろう、それこそ入社初日の知識0の新人だろうがとりあえずぶち込んでおけば客の依頼を達成出来るのだから。そのくせエラーの修正依頼が来ると説明もなしにマニュアル渡され直しとけと言われ、ミスると何故間違えたと詰められる。そんなマニュアルだけで完璧に仕事出来るような奴が底辺IT会社にいるかよクソが。
そんな訳で前職を辞めダラダラと3ヶ月ぐらいニート生活を堪能、そろそろ貯金がやばいかと言う時に転職活動を開始。奇跡的に未経験OKの求人を出していた金融機関に滑り込んだ。日勤と夜勤が入り乱れる生活リズムボロボロで時間感覚も狂いっぱなしの前職よりいくからましだろう。
とは言え、そもそも仕事に対するやる気は一切ない、ある程度の金と休み。それ以外は何も考えていない。仕事をしたくない。ニートでいたい。そんな事を考えているとまだ新しい職場についてもいないのにため息が止まらない。
新しい職場でやっていけるだろうか?まあ無理だろうな、数ヶ月もしたら辞めたくなっているであろう事は想像に難くない。今日は転職1日目なのだ。