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『リッチランド』見ました

 この映画については、いつ頃知ったんだっけなぁ。今年に入ってからなのは覚えてるんだけど。
 実は『オッペンハイマー』を見ると決めたときに、万が一日本公開がないとなったときに備えてと言ったらあれだけど、たまたま新宿でスクリーンプレイ(戯曲っていうのかな)を見かけて衝動買いし、さらに日本で書かれたオッペンハイマーに纏わる本も買って、かなり入念に予習をしていた。藤永茂の『オッペンハイマー 愚者としての科学者』(ちくま学芸文庫)が面白かったが、他にも少ないながら読んだ。

 簡単に言うと、原爆作りの秘密計画『マンハッタン計画』は主に3つの場所で進行していた。ロスアラモス、ハンフォード、オークリッジ。そのうち、爆弾の設計をしたのがロスアラモス。広島原爆のウランを精製したのがオークリッジ、長崎原爆のプルトニウムを精製したのがハンフォード。ちなみになんだけど、上の本によると、ドイツやイギリス(ついでに日本)など、他の国で原爆を作れなかったのは、大規模な燃料精製施設を作れるほどの用地がなかったからだという。

 近場の映画館でも公開するとのことで、それを待って、いよいよ今日『リッチランド』を観に行った。この映画館は、かなり凝った作品を上映しているみたいで、今後また行くかも。

なんともレトロな感じのチケット。ひらがなだと、パチンコ屋みたいに見える

 映画『リッチランド』に映し出されている当時のハンフォード施設の馬鹿デカさは、藤永氏の本で見てわかっていても圧倒された。もちろん、当時の爆弾用原子炉を見たのも初めてで、これは今資料の形で残っていて、それこそSF映画にでも出てきそうなシロモノだった。

 この大事業を成し遂げるために、ハンフォードにもロスアラモスと同様、一つの町が作られた。それが映画のタイトルにもなっているリッチランド。この場所は、ハンフォードと合わせていくつもの原住民から奪い取ったもので、政府はそのときに、戦争が終わったら返すと原住民に約束したのだが、戦時中から燻っていたソ連への警戒と、それから始まった冷戦のために、約束は裏切られた。この辺りもロスアラモスと似ている。そして、冷戦が終わったときには、ハンフォードは人が住めるところではなくなっていた。
 冒頭のシーンを見て、福島の事故を思い出しちゃったよ。向日葵とか菜の花とかって、あの頃言ってたわ。あれって今どうなってるのかな。
 で、リッチランドには、戦時中に移住してきた人たちの子や孫、さらに新しく来た人たちが暮らしている。何故かはわからないが、有色人種の割合は極端に少ないらしい。アメリカの他の地域で暮らしてる人からすると、例えば自分の地元とは違って見えるのだろうか。ちょっと面白いなと思った。

 早いシーンからいきなり目を引くのが、キノコ雲を使ったシンボルマーク。あと、リッチランド高校の校章。校章⁉︎って言いたくなるくらいのデザインをしてます。どう見てもギャグ漫画のワンシーンだろ、あれは。それに反対する一部の教師や学生。「ダサいから」反対してるってわけでは全然ないんだけどね。それほどまでに、リッチランドの人たちは原爆を誇りに思っている。原爆を悪だと断言してる人は、映画の中には一人もいなかった気がする。

 アメリカではいつ頃公開されたんだろう。実は、『オッペンハイマー』ともちょっと関係のあるシーンが二箇所出てくる。ある超有名人が不思議な棒を振る場面と、合唱シーン。前者はなんていうか、ものすごく複雑な気持ちになった。

 この記事を書くにあたり、実は今初めて映画の公式サイトを見ているのだが、こんなに作り込まれた映画の公式サイトって、かなり珍しいのでは?これを見てるだけでも数時間潰せそう。映画の中では名前が出てこない発言者たちの名前も載ってる。実を言うとね、ファザリ氏の父親に纏わる証言はかなり意外だった。「信じる相手を間違えた」と、彼女の父は言い残して亡くなったと言う。
 この町の人たちの「誇り」って、私が思っているよりもずっと純粋なんだと。私からすると、目から鱗ってくらいびっくりした。

 そうそう、映画を見ててちょっとびっくりしたのがあるんだよね。あるシーンで、ワンカットだけ、いきなり日本のアニメのばったもんらしき品物が出てくるのだ。それ、どこで手に入れたの?っていうような。一応だけど、あれが日本語だってことくらいはわかるよね?
 変な意味で印象に残った。

(追記:記事を少し修正しました)

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