軽トラ・ぼくらだけの場所
立冬|山茶始開
令和6年11月10日
富士山に冠雪を発見した。とある養蜂家のもとを訪ねているときのことだ。「雪がつきましたね」と話すと,彼は「昨日が初冠雪とニュースでやってました」と返した。メディアに気付かされるのではなく,自然の変化のありのままを自分が主体的に発見したようで,なんだか誇らしい。
仕事の関係でアメリカからミード(蜂蜜酒)の醸造家を滞在に招いた。その最中にアメリカの大統領選の開票日を迎えた。彼女はメディアが煽る大統領選の攻勢にあまりに辟易としていた。結局,大統領選挙の結果が分かった当日には,そんな話は全くしなかった。意図的に避けていたというよりかは,ただただ自然に僕らの時間を過ごしていた。軽トラの助手席に彼女を乗せながら,メディアには乗らない美しい情景をただ走った。ラジオも音楽もかけずに,心地よい風が運転席から助手席から抜けていき,南アルプスに沈んでいく夕陽が右側の頬だけを焼いていく。政治の信条やメディアの報道といったものは,今この瞬間,自分自身に集中している私たちにとって,あまりに不釣り合いであった。僕らの尺度でいうならば,深い暗闇がその夕焼け空を覆い隠してしまうことだけが問題だというのに。
-S.F.
山茶始開
ツバキハジメテヒラク
立冬・初候
思考が深まったのでコヨムを書き溜めようかとも思ったけれど,結局2つ目のレターには着手せずに筆を置いた。それでは暦で読むニュースレター・コヨムの歩幅がぎこちないものになるように感じられてはばかられた。コヨムはその時のありのままの表現の場である。
参考文献
なし
カバー写真:
2024年11月7日 養蜂。美しき道具。燻煙機。
コヨムは、暦で読むニュースレターです。
七十二候に合わせて、時候のレターを配信します。
軽トラ・ぼくらだけの場所
https://coyomu-style.studio.site/letter/tsubaki-hajimete-hiraku-2024