【レポート】なぜGalileoGalileiはアメリカ文学の香りを感じるのか
1、初めに
これは、文芸学科のゼミで発表した考察とちょっとした研究になります。
自分で謎を見つけてとにかく気になることを自分なりに考えて発表します。前回は、『カラータイツはいつはやるのか』というテーマでやりました。
こちらもよかったら。
2022年10月20日に発表したものになります。
そのため、GalileoGalilei活動再開の時点までの内容です。
最近発売されたボックスセットなどについては追記部分ぐらいでしか触れれなないです。でも、ボックスセットが結構私の考察の答え合わせになっているように思います。
私はいつからガリレオが好きだったのか、正直あまり覚えてないのですが、中学3年生に武道館ライブへ遠征で行きました。それぐらいの長さになってきました。
そして、この発表はGalileoGalileiを知らない人たちに向かってのものになっていますので、大前提の情報も並べますね。
さて、始めましょう。
2、【Galileo Galilei】について
北海道出身の四人組バンド。閃光ライオット※初代王者(2008年)。
2010年 SME recordよりメジャーデビュー(ボーカル尾崎雄貴は19歳、ドラム尾崎和樹は17歳時)。
2022年 10月11日に新体制で活動再開。
・メンバー
尾崎雄貴(ボーカル・ギター・シンセサイザー・プログラミング・作詞作曲)
尾崎和樹(ドラムス / ギター / パーカッション / リズムマシン / シンセサイザー / プログラミング)
岩井郁人(ギター・ベース・コーラス・シンセサイザー・プログラミング)2009年加入2012年脱退・2022年再加入
岡崎真輝(ベース)2022年加入
ボーカルとドラムスは兄弟でありここだけがずっとGalileoで、初期メンバーからどんどんとメンバーが変わっていくバンドです。
・旧メンバー
船谷創平(ギター)初期メンバー 2009年脱退
野口一雅(ピアノ・オルガンetc.)2011年~2012年
佐孝仁司(ベース・ギターetc.)初期メンバー 2016年活動終了時まで在籍
3、タイアップ
爆売れというわけではないのでGalileoを知らない方も多いと思うのですが、今までのタイアップを見ると思っている以上にいい作品のタイアップをやっています。
夏空ーアニメ『おおきく振りかぶって~夏の大会編~』OP
四つ葉さがしの旅人ー音楽番組『CDTV』10月度OP
僕から君へーベネッセ「進研ゼミ高校講座」CMソング
管制塔ー映画『管制塔』主題歌
青い栞ーアニメ・ドラマ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』
さよならフロンティアードラマ『荒川アンダー ザ ブリッジ』
明日へーアニメ『機動戦士ガンダムAGE』第1部フリット編OP
Imaginary Friendsー週刊ヤングジャンプの増刊『アオハル』第三弾テーマソング
サークルゲームー『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』
恋の寿命ーアニメ『まじっく快斗1412』
嵐のあとでー劇場アニメ『台風のノルダ』主題歌
クライマーーアニメ『ハイキュー‼︎セカンドシーズン』ED
映画『管制塔』はGalileoの楽曲から作られ、三木孝浩監督作品で、山崎賢人と橋本愛が主人公をやっているという凄さ。それぐらい期待の新星で、売れ線街道を走っていたはずなのです。
ところで「閃光ライオット」の凄さを念の為に伝えておくと
緑黄食社会(準グランプリ)
ねごと(審査員特別賞)
ぼくのりりっくのぼうよみ
などが受賞していますが、それでもグランプリではないのです。
Galileoは当初10代で初回でグランプリになるなんて少年漫画みたいな存在とも言えます。
しかし、彼らはアジカンや髭男などのような社会的に認知されているわけじゃない。(発表時、ゼミ生10人中知っているのは3名程度、それも名前を知っている程度)
そんな彼らの作品を聞くと私は「アメリカ文学っぽいんだよなぁ」と思うのです。
いつも、「アメリカっぽい」と頭のどこかで感じます。
私は文学を学んでいる側でありますが、アメリカ文学で読んだことがあるのは数冊程度です。もしかしたら2冊ぐらいかも。なのに、アメリカ文学だと感じるのです。
それはなぜなのか?
それについてこれから考えていこうと思います。
4、アメリカ文学由来の曲
まず、明らかに文学をテーマにした楽曲を見ていきましょう。
「老人と海」(PORTAL)ーヘミングウェイ『老人と海』
小説の内容:キューバに住む一人の老漁師が84日間もの不漁の後、巨大なカジキを3日間にわたる死闘の末に捕獲するが、その後にサメに襲われ、獲物を食い尽くされてしまうという話。
「フラニーの沼で」(ALARMS)ーサリンジャー『フラニーとゾーイー』
小説の内容:グラース一家の物語。
「バナナフィッシュの浜辺と黒い虹」(See More Glass)
ーサリンジャー『バナナフィッシュにうってつけの日』
Aimerをボーカルに迎えた曲
小説の内容:グラース家物語でシーモア・グラースの初登場作品。
作中のセリフ「See more glass」はアルバムタイトルにも。
「ウェンズディ」(See and The Darkness)
ーチャールズ・アダムス「アダムス・ファミリー」
この動画も外国人の映像であることから、私の感覚にいつの間にか「アメリカ」が植え付けられている可能性もある。しかし、YouTubeで聞いてるのは最近なのでこれはそこまで確かではない。
「Jonathan」(サークルゲーム)ーリチャード・バック『かもめのジョナサン』
「ボニーとクライド」(See and The Darkness)
ーアメリカの有名事件/映画『俺たちに明日はない』
1930年代前半にアメリカで銀行強盗、殺人を繰り返したボニー・パーカーとクライド・パロウのカップル。警官9人と一般市民4人を殺害し、警察隊に射殺された。禁酒法と世界恐慌下に犯行を繰り返したため英雄視された。
などなど、これだけでもわかるようにアメリカ文学と言われる小説を元にした楽曲が多くある。
ボーカルであり制作者の尾崎雄貴がサリンジャーを好きなことはとても伝わってくる。
しかし、私はこれら以外の方が「アメリカ文学」を感じることが多いのだ。
そもそも、バンド全体が纏っている空気感も全てそう感じると言える。
それは音楽の方向性によって関係があるのかもしれない。
私は音楽について詳しくないため、Wikipediaを参考に執筆する。
5、要素①ロックの系統
彼らの音楽は「インディロック」というジャンルだそうだ。
しかし、音楽社会学などを学ぶ兄に聞くと「インディロックなんてなんもいってないようなものだよ」という。
Wikipediaで日本のインディー・ロック・バンドを見ても幅の広いジャンルのバンドが存在していることから、がっつり「アメリカの音楽」というわけでもないようです。ここについては私が音楽に疎すぎるので批評ができるほどではなく、正しさはないです。
ですから、尾崎雄貴ご本人の言葉を置いて終わりにいたします。
次が最もメインとなる要素であると言えるでしょう。
6、要素②歌詞の世界観
私は、音楽性でもなくただテーマが文学だからでもなく、
「言葉」にあるのではないかと考えました。
頻出単語
トンビ
丘
教会
ジョン、サムなどの外国人の名称
カゴの中の鳥
神様
外国の地名
マイル
鯨
パーっと聞いていて、印象的なものはここら辺でした。
例えば、私が最もアメリカ文学を感じる『Freud』で見ていきましょう。
言葉を言葉通りに取ると、サムを少年たちが殺しています。
また、「鯨」という単語がとてもたくさん出てくるのです。
『くじらの骨』に『老人と海』『潮の扉』、それぞれに鯨や鯨の骨が出てきます。
これについてはまだ調べきれていないのですが、
アメリカやカナダの先住民族であるイヌイットやマカ族は、鯨とのつながりが深く、
食糧としてもたくさん食べれることからある種の信仰が生まれていたのではないかと考えます。
食べるだけじゃなく、骨で家を作ったり、皮で服を作ったりなど余すところなく活用をしていたことからも、深い関係性が生まれていてもおかしくないのではないかと感じました。
【参考ページ】
【記事執筆時の追記】
また、アメリカ文学として有名なハーマン・メルヴィルの『白鯨』もあるため、なんらかの深い思い入れが尾崎雄貴さんにあるのではないかと考えていたところ、
最新作である『4匹のくじら』にはインディアンの帽子のようなものが置かれています。マカ族はまさにインディアンなのです。まるで答え合わせかのようないい音楽とMV。
そもそも私の思うアメリカ文学って?
私は読書もそこまでしていないのに、何故「アメリカ文学」を知っているつもりになっているのでしょう?なんとなく、ぼんやりと「こういうもの」があるのです。
大きい道路があって、その通りに面して大きな庭というか緑の場所があって、ガレージがあって、それぞれの家はそれなりに離れていて、大きな家で、みたいな。
そして、その中で少年たちが自転車を走らせて。
そんな「アメリカ文学」のイメージがあるのです。でももっと内容の部分にもあるように思います。
それは、
「少年たちが暴力の支配がありつつ、大人に反抗して、冒険をする」
なのではないでしょうか。
そこで考えます。この話型を。
すると、私としてそれを初めて体験したのは、『E.T.』や『グーニーズ』などの60年代のスピルバーグ映画なのではないかと思い至ります。
『スタンド・バイ・ミー』も似たような空気で、少し年齢は上がりますが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も近い部分があり、現代では『ストレンジャーシングス』がこの話型に沿っています。
ここら辺こそが、「アメリカ文学」的なものなのではないでしょうか?
厳密には映画であり文学ではないはずなのですが、そこはぐちゃぐちゃと混ざり合わさって抽出されることはあるでしょう。
また、私が読んだ数少ないアメリカ文学である『隣の家の少女』もこの型に近く、実に残酷で苦しい作品です。私の中で『Freud』がこの小説と繋がっている気がしていることからもこの説が湧いているのでしょう。
では何故、このような言葉を使うようになったのかを考えていきます。
7、要素③育ち
尾崎雄貴らは北海道の稚内市出身でで、今も北海道に住んでいるようです。
稚内はご存知の通り、日本の最北端なのです。街並みはこのような雄大な自然に囲まれたものだそうです。
日本の地名が珍しく出ている曲である『稚内』の冒頭の歌い出しはこのような歌詞なのです。
話を聞くところによると看板や標識にロシア語が書かれているぐらい、ロシアとの関わりが深く、ロシア人訪問者が多いなど、異国情緒が常にある街であることがわかります。
日本の中でも珍しい場所であり、その日常は私たちが体験するものとは違っていることでしょう。距離が遠くて、広くて、自然に溢れていル。都会の人が描く情景と稚内の人が描く情景は違ったものになるのは当たり前です。
そして、この街の広さが「アメリカ文学」のらしさと近いのではないでしょうか?
ここで尾崎雄貴本人の言葉を見てみます。
【GalileoGalileiYouTubeチャンネル「Bee and The Whales」ライブ配信より】
この発言から、
閉鎖的な気持ち×冒険=アメリカ文学との共通点
であることが窺える。
アメリカ文学も広い街だけど小さなコミュニティの中で上下関係、支配関係があり、自由を求めて動くことが多いでしょう。
その原動力が尾崎雄貴さんらの感情と重なり、近いものを感じるのではないでしょうか。
フロンティアスピリッツと屯田兵
アメリカは開拓者によって作られ、北海道も開拓者によって発展した。
この両者は自主的で歩かないかの違いはあるが、
広大な自然と戦ったという点で同じ感情になったことはあるだろう。
その結果があることをその地元の子供達はきっと教わる。
そして、教わったものは無意識かのうちに自分の中に存在して表現に入ってくるだろう。
8、メンバーの関係性
箇条書きにすると彼らの人生と関係性はこのようなものだ。
地元の友達でバンドを組み始めた
ボーカルとドラムは兄弟
仲間の脱退と加入
大手レーベルに入るが方向性の違いで揉める
北海道札幌の一軒家で共同生活、ガレージを自らで改造しスタジオを作る
武道館ライブを持って活動を終了する
6年の時を超え、活動再開
地元の友達と兄弟で組んだバンドが、でかい大会の初の優勝を掻っ攫う。
そして、仲間はいろんなフェーズでいなくなり、新しく入ってくる。
大手レーベルで自分達が思う音楽ができないと苦しみ、揉めて辞める。
東京から帰って、北海道の一軒家で共同生活をしてスタジオを自分達で作る。
武道館で活動終了して、6年後また活動を始める。
なんて、とんでもなく物語のような人生じゃないでしょうか。
その展開こそが、アメリカ文学のようであると感じるのです。
9、まとめ
北海道民特有の閉鎖感、どこにもいけない感覚と他国との距離の近さ、開拓民であった名残などがアメリカ文学に描かれるエピソードに近く、尾崎雄貴はそこへ共感しアメリカ文学や音楽にハマったため、自分が描く世界もそういったものに近くなったのでしょう。
といったところで終わりにさせていただきます。もう少しきちんと研究したいとは思いつつ、ゼミの発表としてはこれで終わりにいたします。
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